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きっかけは赤面症!?時代劇の悪役から「エースをねらえ!」宗方コーチ!中田浩二の声優人生に迫る

声優伝説

時代劇の悪役俳優としても長いキャリアを持つ中田浩二さん
時代劇の悪役俳優としても長いキャリアを持つ中田浩二さん

 「必殺仕事人」や「暴れん坊将軍」「水戸黄門」シリーズといった時代劇の悪役俳優として30年ものキャリアを持ち、劇団櫂(かい)の主宰者、声優としては映画『シェーン』(1953)のアラン・ラッドをはじめ映画や海外ドラマ、「忍風カムイ外伝」(1969)のカムイ役、「エースをねらえ!」(1973)の宗方仁役などアニメ、テレビCMで知られる中田浩二さんが、その声優人生を語った。(取材・文:岩崎郁子)

■きっかけは赤面症!

 きっかけは赤面症だった。学業においては優秀で大阪の進学校に進んだ中田さんだが、「それまで勉強一筋で、人とちゃんと話せなかった。何とか話ができるようになりたいという思いで高校2年末の春休みに演劇部に入り、秋には講堂で芝居をやっていました」と語る。それからは「(赤面症を)克服というか、解放されたんでしょうね。学校もそれまで灰色の校舎に見えていたのがバラ色になりまして。もうこの道しかないと(笑)」と早い段階で芝居の道を進むことを決意した。そして、演劇コースのある早稲田大学に入学し、2年生のときに劇団青年座に入った。「座内の発表会を見に来ていた東北新社の方から声がかかって、西部劇の二言三言のアテレコの仕事をもらいました。(当時は)吹き替えという仕事があることを知りませんでしたが、その後、ポツポツと仕事が来るようになりました」と振り返る。

■吹き替えとは命を吹き込むこと

 声の仕事を俳優より先に経験し、その後も声優としての仕事はどんどん舞い込んできた。初レギュラーとなった米テレビドラマ「FBI」(1965~74)では大先輩の故・黒沢良さんから吹き替えのイロハを学んだという。特撮人形劇「サンダーバード」(1966~67)ではスコット・トレイシー(長男・TB1号)の声を務めたが、「それまでは俳優さんの声をあてていたのが、人形に声を入れるってどういうことか。吹き替えってセリフを入れるのでなく、命を吹き込むのだと思ったんですね。他の作品は、外国俳優さんに引っ張ってもらっているんですよ。『サンダーバード』で人形を生きているように見せるには命を吹き込むこと。僕がしゃべり、命をバトンタッチするんだと。アテレコという仕事の認識が変わった最初でしたね」というほどの転機となった。

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■「プロだ」と感じた声優は?

 声優仲間から刺激も受けていた。声優の仕事で「プロだ」と感じたのがいずれも米テレビドラマ「鬼警部アイアンサイド」(1969~75)の吹き替えで共演した、若山弦蔵さんと山東昭子さん。若山さんはある日、ディレクターから「リップノイズが入った」と録り直しを指示されると「よく聴いてみな、向こうの役者がリップノイズ立てているだろう」とピシャリ。「セリフだけでなく、リップノイズにまで……」と中田さんをうならせた。山東さんについては、「『もう1回(録る)』って言っているのを聞いたことがない。あとにも先にもあの方だけ。もう天性の勘ですよね。何でこの人はこんなにうまいんだと」と感心してみせる。

■「エースをねらえ!」宗方コーチにまつわる裏話

 中田さん自身は「忍風カムイ外伝」(カムイ役)、「エースをねらえ!」(宗方仁役)などのアニメでも活躍した。「声優の仕事の中で一番好きだったのはカムイなんですよ。毎週録って、何回テストをやっても飽きない。(原作者の)白土三平さんの原画はとにかくドラマのよう! 白土作品は文学全集だと思っているくらいです」。一方、「エースをねらえ!」に関しては「中田節と言ってもらえる僕の声優としての色が確立した作品です」と紹介。「CMの声の仕事は『宗方仁の声質で』とよく頼まれましたね」と裏話も明かした。

■ベテランが見る今の時代の声優たち

 映画だけで月に40本以上を吹き替えたこともあったという中田さん。自分自身は現場で先輩たちから技術を学んだというが、後輩たちについて聞くと、「今の時代には今の人のやり方、表現があるんだろうし、みんな器用でうまいですよ。達者だなと思いますよ」。若手に理解があるのも、76年に自ら創設した劇団櫂の代表として、若い舞台俳優を育てながら自らぶれない役者魂を持ち、それをしっかり継承している自負ゆえか。声優、俳優のほか、劇団運営、さらに声優学校、空手教室、カフェの経営など活動の幅は広がるばかり。中田さんのエネルギッシュな日々はまだまだ続きそうだ。

中田浩二プロフィール

1939年生まれ。兵庫県神戸市出身。時代劇の悪役(代官・同心)などとして数多くのテレビ作品に出演しながら、クールな低音で、映画、アニメ、テレビCM、番組ナレーションなど声の仕事も幅広く務めてきた。また、劇団櫂の主宰者であり、むさしの声優学院の代表を務め、今年2月には空手教室を設立するなど、マルチな活動を続けている。代表作には米テレビドラマ「鬼警部アイアンサイド」、アニメ「名探偵コナン」シリーズ(小田切敏郎役)、人形劇「サンダーバード」が挙げられるほか、アラン・ラッド、ジェフリー・ハンターなどの吹き替えを担当してきた。

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