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アカデミー賞「多様性」を象徴 ハリウッドは変われるか?

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プレゼンターを務めたルピタ・ニョンゴ&クメイル・ナンジアニ
プレゼンターを務めたルピタ・ニョンゴ&クメイル・ナンジアニ - Aaron Poole / A.M.P.A.S.

 過去を振り返りつつ、前に進む。今年のアカデミー賞授賞式は、その両方を上手にやり遂げた。「前に進む」とは、つまり、多様性をさらに高めること。作品賞がマイノリティーたちを主人公にし、温かい目で描いた『シェイプ・オブ・ウォーター』だったのは、その意味でも非常にふさわしかったといえる。(Yuki Saruwatari/猿渡由紀)

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 今年は90周年という節目の年。ハリウッドとアカデミーの長い歴史にオマージュを捧げることは、一貫したテーマだった。そんな中、「白すぎるオスカー(人種の偏り)」「#TimesUp(反セクハラ、男女の賃金平等を含む女性の権利)」など、ハリウッドが自省すべき問題についても、良い具合に組み込まれていた。1月のゴールデン・グローブ賞のように「#TimesUp」の主催者たちが一方的に授賞式をメッセージの伝言場所として乗っ取るのではなく、このオスカー授賞式では、どこでどんなふうにこれらに触れるかについて、事前に団体と授賞式のプロデューサーらの間で話し合いがなされていたのだ。

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アシュレイ・ジャッド、アナベラ・シオラ、サルマ・ハエック
セクハラを告発した3人もプレゼンターに - アシュレイ・ジャッド、アナベラ・シオラ、サルマ・ハエック - Aaron Poole / A.M.P.A.S.

 「#MeToo」「#TimesUp」についての短いメッセージビデオの上映が行われたのも、その一つ。その映像のプレゼンターとしては、ハーヴェイ・ワインスタインからセクハラを受けたアシュレイ・ジャッドサルマ・ハエックアナベラ・シオラがそろって舞台に登場している。オープニングのモノローグでは、司会のジミー・キンメルが「男があまりにもひどいから、女性は魚と付き合い始めたんだ」と『シェイプ・オブ・ウォーター』を引き合いに出したセクハラ批判ジョークを言った。

 だが、この授賞式で訴えられたのは、もっと広い意味での多様性である。例えば、プレゼンターにはルピタ・ニョンゴ(ケニア人の両親のもとメキシコで生まれた)とクメイル・ナンジアニ(パキスタン生まれ)のペア、またティファニー・ハディッシュマーヤ・ルドルフ(共にアフリカ系アメリカ人)のペアなども登場した。ニョンゴとナンジアニは、トランプ政権のもとで強制送還の危機にさらされているドリーマーたち(子供の頃、親に連れられてアメリカに移住した不法移民の若者)に声援を送り、ハディッシュは「オスカーが黒くなりすぎたと思っていますか? 大丈夫、舞台裏にはまだ白人がたくさん控えていましたよ」と言って笑いを取った。

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 その分、受賞スピーチ中の自発的な政治的発言は少なかったが、『スリー・ビルボード』のフランシス・マクドーマンドは、さすがの発言で強烈なインパクトを与えた。彼女が最後に叫んだ「Inclusion rider」とは、映画の出演契約を結ぶに当たって、その作品に関わる人々が多様な顔ぶれであることを条件に入れるということだ。そこで言う“多様”には、性別、人種、LGBT、年齢、全てのことが含まれる。授賞式中には、ジーナ・デイヴィスが「『テルマ&ルイーズ』(1991・女性二人のロードムービー)が公開された時、これで大きく変わる、と言われたけれど、そうならなかった」と言うビデオ映像も流されたが、果たしてマクドーマンドの声は、ハリウッドを本当に動かすことになるだろうか?

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