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大沢たかお、俳優としての流儀「一番危うい方法を選ぶ」

大沢たかお
大沢たかお

 「いまのやり方は結構危険なんですよね」と苦笑いを浮かべた俳優・大沢たかお。50代を迎えた現在、どんどんリスクや負担をかける芝居へとシフトしていく自分に危機感を抱いているという。

【動画】映画『AI崩壊』特報

 主演を務める最新作『AI崩壊』(1月31日公開)で大沢が演じるのは、人々の生活を支える医療AI“のぞみ”の開発者・桐生浩介。人類に役立つ発明が評価され、英雄のように慕われていたが、AIが暴走をはじめたことで、一瞬にしてテロリストの扱いを受け、日本中から追われるという役柄だ。

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 劇中、桐生は追っ手から身を守るために奔走するが、その姿は、おおよそヒーロー然とした主役とは言い難い泥臭さが漂う。近未来サスペンスというジャンルに属するが、そこには徹底的にリアリティーを追求。なるべくCGは使わず日本全国でロケを行い、大沢自身も体を張って、追われている臨場感にこだわった。大沢は「普通にやったら絶対ダメだと思った」とつぶやくと「ある程度自分の感情を含めて、尋常じゃないところまで持っていかないと乗り越えられる作品じゃない」と覚悟を決めた。

(C) 2019映画「AI崩壊」製作委員会

 こうした大沢の自身への追い込み方は、本作の持つチャレンジスピリットに共感した部分が大きかった。「いまの日本において、ここまで規模の大きな作品には大体はベストセラーの小説や漫画などの原作がある。それをせず、完全オリジナルで挑むというのがなによりも魅力的でした。現場も鬼気迫る感じがあったし、それぞれが普通のことをやっていたら絶対に勝てない強敵だと思った」

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 「強敵」という言葉の真意を問うと「僕らの仕事のゴールはお客さんに喜んでもらうこと」と俳優業の定義を述べる。続けて「2030年という10年後の世界ですが、AIをテーマにした近未来サスペンス作品というと、お客さんは、これまでにあるハリウッド映画の日本版みたいな想像をすると思うんです。まずその既成概念を壊し、日本人にしかできないサイエンスフィクションにしなければいけない。アメコミのヒーローではなく、そこら辺にいる男が、AIが崩壊してしまった脅威にボロボロになりながらも抗う姿が大切なんです」と説明する。

 そのために大沢は徹底的に既成概念を取っ払った。「主役だとスマートに、格好良くと思いがちですが、まずそこを覆さないといけない。約2か月半の撮影のなか、正しいかどうかわかりませんが、大げさに言えば毎カット毎シーンで『こうだろうな』と思いつくことを疑ってかかりました。これまでやってきたことは全く通用しない。だってこんな規模での近未来ものは過去になかったから。いままでと同じでは絶対ダメだったんです」

 こうした作業は「とても恐怖だった」と大沢は心情を吐露する。それは「映画の主人公として正解かどうかわからなかった」から。

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 しかし、このような役へのアプローチ方法は大沢の俳優としての流儀に共通するという。「僕は芝居をするとき、常に一番危ういチョイスを選択するようにする癖があるんです」と語る。台本を読んだとき、すぐ頭に浮かぶ演技プランやキャラクターイメージがあるという。こうしたイメージをまず排除する。

 「自分が簡単に思いつくことは、ほかの人でも考えることなんです。それを王道でやることの素晴らしさもあると思います。でも僕はエンターテインメントってサプライズだと思っているので、そこに驚きがないと感動しないという考えなんです。そのサプライズは、ストーリーやロケーションの場合もあります。でも物語のなかに生きている人間に驚きがないと、お客さんは楽しめないと思う」と持論を展開する。

 大沢と言えば、昨年俳優人生25年を迎えた。「安定」という思いが心に浮かばないのか、という質問に「こういうやり方って中毒性があるので危険ですよね」と笑う。そうとわかっていても「どうしても危険やきついことを選んでしまう。一つには自分を厳しい方に持っていくことによって湧き出る表現というものがあるからなんだと思う。『キングダム』で演じた王騎将軍もそう。やっぱり中庸では面白くないですよね」と理由を説明する。

 「監督がOKを出してくれても、なかなかすっきりしない」と撮影後はいつも不安になるという大沢。それでも「お客さんに喜んでもらう」というゴールに向かって日々戦いを挑む姿は、ただただ格好いい。(取材・文・撮影:磯部正和)

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