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Netflixが挑む!より良い作品づくりのための労働環境づくり

小沢禎二、浅田智穂、並木道子
小沢禎二、浅田智穂、並木道子

 動画配信サービスNetflixの特別イベント「Netflix Studio Day」が都内で行われ、Netflixが日本の撮影現場で実施している労働環境づくり、そして今後の課題についての対談が実施された。

並木道子が監督のNetflixシリーズ「金魚妻」【写真】

 本イベントは、Netflixが制作の裏側を見せるというもの。そのなかの対談企画「より良い作品づくりに向けた制作環境の整備について」では、Netflixプロダクション部門の日本統括ディレクター・小沢禎二、身体的接触のあるシーンでスタッフと役者の仲介者となるインティマシー・コーディネーターの浅田智穂、Netflixシリーズ「金魚妻」監督の並木道子(フジテレビジョン)が登壇し、そして、MCとして小島慶子がリモートで参加した。

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 Netflixでは、日本の映画で初めてインティマシー・コーディネーターを導入。ハラスメント対策としてのリスペクト・トレーニングを実施。さらに長時間労働を見直すなどして日本の撮影現場の整備に力を入れている。アメリカで働いていた経験のある小沢は、現地の撮影に参加した経験を振り返り「アメリカの撮影現場は笑顔がすごいんです。皆さん楽しそうに仕事をされています。日本だと、顔色を伺いながら仕事をするということが結構多くて。日本でももっと笑顔が生まれてほしい。そのためには労働時間、労働環境が良くならないといけない」と持論を述べた。

 日本に2人しかいないインティマシー・コーディネーターの一人である浅田は、「私が考えるいい撮影現場というのは、風通しがいい現場。キャスト・スタッフ関係なく自分の意見や声を上げられる撮影現場だと思います。どうしても撮影現場ではパワーバランスがありますので、立場上、言えないこと、言いづらいことが出てきてしまう可能性があります。そこが改善されて、気持ちを伝えられることがより必要」と力を込めていた。

 第一線で活躍する並木は「私たちディレクター、プロデューサーは、自分たちがそんなつもりでなくても、ジャッジする立場になる以上、周りのスタッフが忖度して本音で話せないということも起こり得る。なので、なるべくみんなが本音で言いやすい空気を撮影現場で作りたい」と心がけて撮影に挑んでいるという。

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 しかし、一方で苦労もあるという。「心身ともに良いコンディションで撮影に挑みたいと思っているので、日々それを意識しながら撮影しているのですが、一方で、労働時間を守って、かつ作品のクオリティーを保とうとすると、どうしても撮影期間が長くなってしまったり、スタッフの人数を増やさなければならなくなるという制作の予算面での問題があります」

 また、今後の課題についても人材育成がカギになると言及。「これからのエンタメ業界全体にとって必要なのは、若い人材の確保。人材の育成まで含めて、労働環境を整えることで、より良くなっていくとは思いますので、その辺りをどうやって乗り越えていくのか」

 「楽しいことを目指してエンタメ業界に来たのに、どうしてこんなにつらいのだろう、とつらい面ばかり見えてしまう。どうにか面白がってもらえるように、上に立つ我々は意識しながら撮影現場をつくっていかなければならないと思いますし、若い方は短い労働時間でどんどん吸収しようと積極性を持っていただきたいです」

 日本統括ディレクター・小沢も並木に同意を表し「我々もそのことをずっと考えています。若い方が入ってきてもすぐ辞めてしまうんです。なぜ辞めてしまうかと考えると、労働環境が悪い、自分の時間をつくれないとか、ちょっとしたパワハラに遭ってしまうとかあると、どうしても続かないですよね」現状を明かすと、インティマシー・コーディネーターの浅田は、こうした環境が作られることについて「気持ちと生活に余裕がないと、どうしてもハラスメントが起きやすい環境に陥ってしまうと思います」と分析する。

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 小沢はNetflixの労働環境について「そういった長時間労働をやってはいけないと思っています。Netflixだからもっとお金くださいよ、みたいに思われたりすることも事実です。でも、そういうことではなく皆さんには多くのお金を払えないですが、時間をお返しすることはできます。24時間撮影とかそういうことではなくて、1日ある程度の時間が終わったら撮影を終わりにしますので、人生を楽しんでくださいと」

 また、長時間労働を強いられる撮影現場については「我々がやっていることって仕事じゃないですか。長時間労働者には“人生”になってしまってますよね」と苦言を呈した。

 現在Netflixは、環境改善のために、インティマシー・コーディネーターの導入、リスペクト・トレーニングを実施しているが、海外がやっていることをただそのまま日本に持ってくるだけではないという。「日本に合うものにしていくという作業は、すごく時間がかかります。インティマシー・コーディネーターの知見を溜め、リスペクト・トレーニングはどんどんやりながら向上させていく。こういうことを続けることで、現場で働く皆さんが安心してもっと仕事に取り組める。逆にいま安心して仕事ができていないんじゃないか、と捉えられがちかもしれませんが、全体的な環境が良くなることで、作品が良くなると思うんです」(小沢)

 「作品が良くなることで、Netflixは皆さんに喜んでいただける作品をお届けできる。我々1社だけがこういうことをやっていても、大きな山は動かない。社会全体もそうですが、業界全体を巻き込んで変えていくということには、政府の皆さんの応援、お力添えをいただければと我々は常々思っています」(小沢)と一つの会社や業界という枠を超え社会や政治が動くことの重要性を訴えていた。(編集部・梅山富美子)

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