ベネチア金獅子賞『あのこと』公開決定 中絶禁止の仏60年代、望まぬ妊娠をした大学生の12週間
第78回ベネチア国際映画祭にて最高賞である金獅子賞を受賞した『Happening』（英題）の邦題が『あのこと』に決定し、12月2日よりBunkamuraル・シネマほかにて全国順次公開されることが明らかになった。
映画化もされた「シンプルな情熱」の原作者としても知られるアニー・エルノーの自伝的小説「事件」をもとにした本作。舞台は1960年代、法律で中絶が禁止され、処罰されていたフランス。大切な試験を前に臨まぬ妊娠が発覚した大学生のアンヌは、自らが願う未来をつかむために、たった一人で戦う 12 週間が描かれる。全編アンヌの目線で描かれ、臨場感たっぷりな映画体験が見どころとなる。
主演を務めるのは、子役時代に『ヴィオレッタ』で娘役を怪演し、セザール賞を受賞したアナマリア・ヴァルトロメイ。監督のオードレイ・ディヴァンは本作が監督2作目で、脚本家として『ナチス第三の男』『フレンチ・コネクション －史上最強の麻薬戦争－』などでキャリアを積んできた。共演には『沈黙の女／ロウフィールド館の惨劇』などのサンドリーヌ・ボネールなどが名を連ねる。
あわせて公開された予告編は、前途有望なアンヌの妊娠が発覚し、狼狽するシーンから始まる。「違法行為になる」と医者から突き放される様子や、「妊娠したら、大学を辞め働くしかない」「刑務所に入りたいの？」と話す友人の会話が、当時のアンヌを取り巻く社会を物語っている。迫りくるタイムリミットの中で焦燥し、どんどん孤立し追い詰められていく様が危機迫るアンヌ。没入感のある映像で描かれる本作への期待を高める仕上がりとなっている。
本作は、『パラサイト 半地下の家族』などのポン・ジュノ監督が審査員長を務めた2021年のベネチア国際映画祭での最高賞受賞を皮切りに、世界の映画賞を受賞している。（編集部・大内啓輔）
