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「ウルトラマンブレーザー」田口清隆監督が解き明かす最終回秘話 今までにない結末、全25話が「壮大な実験」

今明かされる「ウルトラマンブレーザー」最終回の裏話!
今明かされる「ウルトラマンブレーザー」最終回の裏話! - (c)円谷プロ

 先頃、ついに最終回を迎えた特撮ドラマ「ウルトラマンブレーザー」。続々と登場する新怪獣に、対立から相互理解を描いた結末と、数多くの話題を振り巻いた。その余韻も覚めやらぬ中、来たる2月23日には劇場映画『ウルトラマンブレーザー THE MOVIE 大怪獣首都激突』が公開される。テレビシリーズのメイン監督(&シリーズ構成/小柳啓伍と共同)を務め、映画でもメガホンを取った田口清隆がインタビュー応じ、最終回の裏話を語りながら、テレビシリーズを総括した。(以下、最終話のネタバレを含みます)

【動画】『ウルトラマンブレーザー THE MOVIE 大怪獣首都激突』予告編

「俺も行く」敢えてウルトラマンブレーザーに話させた理由

「ウルトラマンブレーザー」第25話でのヒルマ ゲント隊長 - (c)円谷プロ

 「俺が行く」ーー、これはウルトラマンブレーザーに変身する主人公ヒルマ ゲント(蕨野友也)の口癖であり、劇中でも、このセリフと共に危険を顧みずにゲントが誰よりも先に行動する姿が度々描かれた。ある意味、ゲントのキャラクターを象徴したセリフと言えるが、最終回(第25話「地球を抱くものたち」)では、地球の言語を理解しないはずのブレーザーがゲントに対して「俺も行く」と言葉を発し、両者の間で初めて言葉と言葉によるコミュニケーションが成立。視聴者に深い感動を与えた。

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 「『俺が行く』は、ポスタービジュアルにも書いてあるセリフで、普通なら最終回だからこそ、主人公のゲントが言いそうじゃないですか。それを敢えて、ブレーザーに言わせたのは、特殊部隊出身で、頭がキレて単独で抜群の行動力を持つゲントが、チームをまとめ上げていく中、人間関係を構築して、みんなで戦うようになった、ということです」と田口監督は解説する。それは企画当初からの規定事項で、ここに向けて積み上げてきた話であるという。

 また、現行のニュージェネレーションウルトラマンは、各話に巧妙な伏線が敷かれ、全体を通して壮大な物語が構築される辺りも視聴後の満足感に繋がっているが、本作ではいわゆる縦軸を盛り込みながら、1話完結の読み切り形式にも拘ってきた。それこそ、最終3部作直前の第22話「ソンポヒーロー」(監督:中川和博)は、SKaRDを脇に置き、怪獣災害保険のサラリーマンの奮闘を描いたゲスト回であった。

 「初代の『ウルトラマン』は、どの話から観ても大丈夫なように作られているんですよね。1本1本が独立したSF短編であり、そういう作り方が自分としては理想なんですけど、とはいえ縦軸も必要になります。そこで脳裏に浮かんだのが『X-ファイル』です。主人公のFBI捜査官・モルダーの妹がUFOにアブダクション(誘拐)された設定があるのですが、基本は1話完結で、時々妹に関するエピソードが出てくる。だから、あの作品もどこから観ても楽しめるんです」

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SKaRD&ウルトラマンブレーザーを追い詰めた宇宙爆弾怪獣ヴァラロン - (c)円谷プロ

 一方で、「V99」のワードが浮上した第14話から、いわゆる縦軸が動き出すが、「正直、縦軸と言われるものに関しては、あまりややこしくしたくなかったんです。地球が何者かの脅威に晒される中、それを隠ぺいしている偉い人たちの話を裏に敷きつつ、主人公であるゲントと、行方不明のお父さんを探すアオベ エミ(搗宮姫奈)。その二つを中心に、時々伏線をチラつかせ、最終回でギュッと回収する作りにしました」と田口監督。その分、「ウルトラマンブレーザー」では人間ドラマに重きが置かれた。

 「今回、ヴィランと言われている宇宙人を敢えてなくし、あくまで人間関係のドラマに特化しました。SKaRDの隊員たちは、人間同士のいざこざや、自分の居場所を守ろうと固執する人間がいる中、常に板挟みの状況に置かれていて、それは現実の社会でもあることだし、回を追う毎に彼らに感情移入するような物語を作りたいと思いました。そういう意味では、僕が本来思う縦軸というのは、SKaRDの関係性が出来上がっていく過程にあります」

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かつてないヒロインの立ち位置

地球を守り続けるSKaRDメンバー - (c)円谷プロ

 設定面に目を向けると、防衛隊がひた隠しにしてきたV99とは、1999年に地球防衛隊が撃ち落とした宇宙船に搭乗していた知的生命体であることが判明。「ファースト・ウェイブ」(※第1話のサブタイトルでもある)から始まる、バザンガ、ゲバルガ、そしてヴァラロンといった宇宙怪獣は、地球を脅威と認識し、新天地に向かおうとするV99が送り込んでいたという真相が浮かんでくる。そこに切り込んでいったのがエミで、さらに本来、戦う意思のなかったV99との「対話」を通じて、戦いを回避させるに至り、かつてないヒロインの立ち位置を見せた。

 「SKaRDを特殊部隊にしたのは、メインライターの小柳さんが、もともと特殊部隊がお好きで、エミとゲントを特殊部隊出身にして、エミを情報担当に決めました。ウルトラマンの主人公はクライマックスでは変身するから、最終的にどうしても不在になるんです。そうなると話を転がすのは隊員たちで、情報部のエミが、お父さんを探す過程で事件の真相に迫り、参謀長のハルノ レツ(加藤雅也)についても、視聴者は当初、悪人なのか善人なのか分からないで観ていたと思うけど、実はエミのお父さんの親友で、エミをSKaRDに入隊させて、好きにやらせていたことが段々と分かってくるという流れです」

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 それと同時にSKaRDについても、きちんとロジックに基づいて設定されていたことが分かって来る。「SKaRDを特殊部隊にしたわけですが、要は5~6人で地球防衛の任務を果たせるわけがない。僕個人としては、とにかくそこにリアリティーを持たせたかった。SKaRDは地球防衛隊の一部隊でしかなく、怪獣に対しての攻撃は基本、防衛隊が行う。初代『ウルトラマン』を観ても先に防衛隊が登場していますしね。SKaRDはあくまで、その中で怪獣を調査&分析し、最短で弱点を探して撃退する任務を担う特殊部隊という位置付けです。それでもこの人数って少ないんですけど、V99のテクノロジーが取り入れられたアースガロンの運用も含めた、いわゆる実験部隊だったわけで、そこは何とかハードSFの枠組みとしてハマるかなと思いました」

大きな争いを起こしているのは「現場ではなく会議室」

第25話で描かれたヴァラロンとの最終決戦 - (c)円谷プロ

 そのクライマックスの重要な舞台となるのが、地球防衛隊の中央指揮所である。この中央指揮所については、SKaRDの上部組織となる地球防衛隊日本支部の司令官・源川稔が登場した第10話にまで遡るが、この時点で誰が最終回の大舞台になると予想したであろうか。

 「撮影自体は現場の都合で毎回違う場所で撮っていたんですけどね。昔偉い人が『事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きているんだ』なんて言ってましたが、大きな争いを起こしているのは現場ではなく、会議室なんですよね。だから、そこをクリアする過程を描かなくちゃダメだと思ったんです。決定権を握る人たちがしっかりしてなくて、現場が『何だよこれ!』みたいなことは、実社会で誰もが経験していたり、感じていることだろうし、その極限が今世界の各地で起きていることなんです」

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 そして、田口監督曰く「『なんでそんなことするの?』という最悪の状況」を作り出した黒幕が、寺田農演じるドバシ ユウであることが第25話で明かされた。「現実では様々なしがらみや歴史的背景も絡んできたりするけど、それを分かりやすく、寺田農さん(演じるドバシ)に全て背負ってもらい、撃たなくてもいい相手を撃ってしまったばかりに争いが起きてしまった、という展開にしました。そうしたことはどこでも起こり得ることだと思うんです。たとえば『あの時、ついキツイ言い方をしてしまったせいで、こんな大喧嘩になってしまってもう謝れない』とか。よりミニマムに考えたら子供にだってあることはないでしょうか。結局のところ対立とは、そうした行き違いにあると思うんです。あとは、意地を張り通すのか、『ごめんなさい』と謝るのか、相手の考えを受け入れるのか。それで展開、結末は大きく変わるわけですよね」

壮大な実験だった「ウルトラマンブレーザー」

ブレーザーが見せる、舞いのようなポーズを披露する田口監督

 ウルトラマンシリーズの最終回と言えば、ウルトラマンと人間が一丸となって強大な敵に立ち向かう展開が、王道のフォーマットだが、先に述べたように対話を通じて解決を見るという、過去に例を見ない結末に至った。そうしたテーマは、今まさにこの現代だからこそ描くべきタイミングであったと、田口監督は考える。

 「コロナ禍が収束しつつある中、世界のあちこちで争いが勃発し、人類はどうしてもこうも賢くなれないんだろうって。そんな世の中で、地球に飛来した侵略宇宙人と戦うだけの勧善懲悪な話を作っても仕方がない気がしてしまって。そこで小柳さんと僕が頭を捻って導き出したのが、あの結末だったんです」

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 最終回を迎えた今、田口監督は「ウルトラマンブレーザー」における新たな試みの数々を「壮大な実験だった」と振り返る。「今回、ウルトラマンはしゃべらないし、V99も従来の敵宇宙人みたいに地球の言語で脅迫するわけでもないので、いったい何が目的なのかよく分からないんですよね。そういう設定を貫き通したことは、ウルトラマンシリーズ史上、かつてなかったと思うんです。それはかなり難しい挑戦だったけど、一回直球でやってみてもいいんじゃないかと。侵略の意思すらハッキリしない中、とにかく争いだけは回避したいと誰もが願っている。そうした事態に直面した際に人類にはいったい何が必要になるか? それを全25話かけて描いてみたわけですが、それこそが壮大な実験でしたね」(取材・文:トヨタトモヒサ)

『ウルトラマンブレーザー THE MOVIE 大怪獣首都激突』は2月23日全国公開

【最新予告篇】『ウルトラマンブレーザー THE MOVIE 大怪獣首都激突』2024年2月23日(金・祝)全国ロードショー! » 動画の詳細
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