シネマトゥデイ

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トム・クルーズが、日本のサムライ魂に魅了されて製作した映画『ラスト サムライ』が、世界に先駆けて、日本でプレミア公開された。渡辺謙、真田広之ら、日本の実力派俳優を迎えた本作は、ハリウッドの視点ではなく、日米の視点がうまく組み合わさった歴史大作。ジャパンプレミアを前に、来日したトム・クルーズとエドワード・ズウィック監督、日本キャストたちの記者会見が行われた。


ズウィック監督(以下EZ):僕のキャリアと人生の中で、今が最も素晴しい瞬間。この作品に3年を費やし、いよいよ完成を迎えた。今朝のジャパン・タイムズに、アメリカが日本についてどれほど無関心かという記事があったが、僕はずっと、その無関心を何とかしたいと思ってきたんだ。『ラスト サムライ』は、日本とアメリカ、2つの文化の融合だと思う。


トム(以下TC):飛行機から降りたばかりで、まだ頭がぼっとしているよ(笑)。最初にエドとこの話をしたときから、この映画を日本の皆さんに見てもらうのを楽しみにしていた。僕は、日本の文化や歴史に敬意を持っている。僕たち製作者が、この映画で表したかったことを理解してもらい、味わってもらえたらうれしいよ。


渡辺(以下WK):外の仕事をやらせてもらうと、思ったよりも日本って小さいんだな、と感じます。日本が海外でどんな風に感じられているのを知り、何とかそれを、きちんと知ってもらいたい気持ちでがんばってきました。今日は、それを日本で見てもらう特別な日になったと思います。


TC:この映画を内輪の人に見せたとき、日本の俳優たちは芸術性とパワーを持ち、本当に素晴しいという賞賛が上がったんだ。この映画に参加できて、僕はなんてラッキーだと感じたよ。


真田(以下SH):今、トムが言ったことはそのままお返ししたい。彼らの理解と、日本文化への尊敬の念は、セットの中で常に感じてきたことで、一緒に仕事ができたことを誇りに思います。トムはもともとサムライ・スピリットを持っていたから、この役を引き受けたのだと思います。それは、撮影を通して立証されました。タイトルは『ラスト サムライ』ですが、彼は、アメリカのファースト・サムライです!


小雪(以下K):撮影に入る前は、うれしさよりも不安のほうが大きかったです。時代劇も、ハリウッド映画も初めてだし、着物もあまり着たことがありませんでした。まずは、その時代に生きることを念頭に置きました。このキャストとスタッフに恵まれてお仕事できたことを誇りに思い、人生の中で宝物にしたいと思います。


Q:今回、トムがもっとも感銘を受けたサムライ・スピリットとは?


TC:ひとつを選ぶのはもったいないね。日本の俳優たちと一緒に仕事をした経験から言えば、彼らの芸術性や俳優としての能力、プロ意識、情熱、寛大さ…(渡辺を見て笑いだす)、それからユーモアも必要だよな!とにかく、いろいろな面で感銘を受けたよ。


Q:トムは劇中で重い甲冑を身に着けていますが、着こなすためにトレーニングをしましたか?


TC:撮影を始めた当初、(立ち上がって、前屈)こんなことさえできなかったんだ。1年前から、25ポンドの筋肉をつけ、体の重心を下に降ろすよう訓練した。お尻を下げ、重心を下げて足を広げることで、甲冑の重みを支えるんだ。ケン(渡辺)とヒロ(真田)が勇気付けてくれたよ。1日に数回甲冑を着て、様になるようにした。撮影は10時間ぶっ続けという状態だったから、ウォームアップやストレッチをしたよ。怪我はしたくないし、相手に怪我をさせたくなかったからね。ヒロは剣のコントロールが素晴しくて、打っても怪我をさせないコントロールとバランスがある。数センチのところで止めるんだから、ものすごい信頼が必要だ。ケンとのシーンでは、危ないところもあったよ。僕の頭上をケンの刀が横切るとき、僕が失敗しちゃったんだ。撮影は続行したけど、終わったあとで、大丈夫?いや、僕が間違えた、って2人で慌てたよ(笑)。


Q:この作品の基本的なメッセージはどんなところにあるのですか? 反戦主義や反帝国主義について、何かメッセージが含まれていますか?


EZ:アメリカと日本が共通に誤解していることがある。この2国の関係は60年ほど前に始まったと思われているが、実は150年以上前から関係が始まっていたんだ。当時、イギリスが香港を統治し、アメリカがフィリピンを侵略して、日本も帝国主義を意識していた時代。世界中で、同じときに同じような変革が起こっていたことを見せたかった。それから、哲学的なメッセージとしては、武士道精神は世界中で理解できること、西洋から来た人間が、その精神に影響を受けることがとても面白いと思った。異なる文化において、共通した男の感情が表れていると思うよ。


TC:脚本をもらい、武士道を知ったとき、僕はその中に男として信じるべき心情があると感じた。思いやりや忠誠、義務、勇気の定義。その勇気は盲目的ではなく、学んで身につくものだ。この映画を見る人が、別の文化に対して目を開くきっかけとなればいいと思う。僕は日本の歴史やアメリカの南北戦争、インディアン抗争について学んだが、その結果、歴史は繰り返すことを感じた。サムライは、あの時代のアーティストであり哲学者。「サムライは主君に仕える」と言うセリフはとても印象的だったし、改めて、日本の伝統や日本の国民性に敬意を持ったよ。この映画により、世界を新しい目で見ることができると思う。


Q:ヒロインのたかが、主人公・オールグレンについて「獣のような臭い」と言いますが、2人は最初から惹かれあっていたのでは?


TC:女性は獣みたいな男が好きなんじゃない(笑)?


K:最初からそういう気持ちではないですね。獣の臭いと言うのは独特なセリフですが、たかは日本の武家で育ち、戦いで夫を殺されたという複雑な状況の中、自分のやるべきことを果たすという葛藤がありました。たかとしては、屈辱的な意味を含めて言っています。


EZ:小雪は、素晴しい勘で微妙な演技をしてくれた。たかをどう表現したらいいのか、よくわかっていたよ。真田さんや渡辺さんも、僕よりもずっと演技を理解していて、僕が監督というより、生徒のような気持ちになったこともある。この映画がお互いの理解をテーマにしているなら、僕たちは撮影中、本当に様々なことを学びあったと思う。


Q:トムは武士道について様々な資料や文献を読んだそう。具体的に、どのようなものを読み、それがどんな風に演技に反映しましたか?


TC:新渡戸稲造さんの「武士道」は何度も参考にして、切腹や武士の掟について学んだ。歴史を正確に頭に描き、それらを肉体的、精神的に反映させたんだ。でも、果たして僕らが本当に理解しているのか、日本の俳優たちがどう思うのかすごく気になった。彼らは、僕らのリサーチが正しいと言ってくれて、そこへさらに積み上げてくれた。撮影期間中は、毎日新しいことを吸収していたよ。特に、長谷川将軍が切腹をするシーンはとても力強く、美しい。僕は現場にはいなかったけど、その場面を見て、自分がそこにいたかのような気持ちになった。アメリカの観客はサムライのことは知っているけど、刀を持った戦士という先入観がある。勝本や氏尾の姿は、サムライがいかにエレガントで、いかに哲学を持っているかを現している。血生臭いシーンもあるけれど、それ以上に、サムライが本当にどういう人たちなのか、きっちり見せているんだ。


WK:映画の撮影で、サムライ精神は誇りや謙虚さや仁義ではなくて、もしかすると、今、僕らが生きている中で日常的に使われるべき精神なのでは? と感じました。それは、正直である、嘘をつかない、人を敬い、若い者を助けるということ。撮影にはたくさんのエキストラが参加し、汗と涙を流しながら、気持ち悪くなるくらい走り回ってがんばった。それに対して敬意を示す気持ちが、一日一日、僕らのなかにサムライ精神を埋め込んでいたように思います。


SH:サムライは、戦士としてだけでなく、精神や文化を持ちます。監督も望んで、動と静のコントラスト、2面性を打ち出してくれた。彼らは本当によく勉強していて、僕らも日本で時代劇を作る以上に勉強させられ、お互いに勉強合戦をしていたようです。若い世代の人が、自分たちの文化の素晴しさを再発見し受け継いでくれたら、それが大きなテーマだと思います。


EZ:僕らが生きている現代は、技術が発展し変革している、まさに映画の中と同じような変化の時代。それはアメリカでもヨーロッパでも日本でも起こっていること。そこで、この映画が問いかけるのは、このような変革の時代に、いかに人間性を保ちつづけるか、ということなんだ。


取材・文  竹内詠味子
11月20日(木) グランドハイアット東京ボールルームにて

 

 

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