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黒沢清監督、役所広司、小西真奈美、伊原剛志
『叫』
一番怖かったのは人。
自分も含め、人はなんて無責任な生き物なんだろうと思った。
『叫』黒沢清監督、役所広司、小西真奈美、伊原剛志 単独インタビュー

取材・文:シネマトゥデイ編集部 写真:亀岡周一

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1997年に『CURE キュア』を発表して以来、カルト的な人気を国内外から集めている黒沢清監督の最新作『叫』が2月24日より公開される。本作には、黒沢監督作品への出演が7作目となる役所広司、3年半ぶりにスクリーンに復帰した葉月里緒奈、幅広い演技力でドラマ・映画で活躍している若手実力派の小西真奈美、『硫黄島からの手紙』での熱演がハリウッドでも話題を呼んだ伊原剛志と日本映画界を代表する役者陣が集結。『叫』の公開を控え、黒沢監督、役所広司、小西真奈美、伊原剛志らが一堂に会した前例のない豪華なインタビューが実現した。

■葉月里緒奈の表情から、ある感情にとらわれた人間の鬼気迫るものを感じた

Q:ホラー映画とは一味違った作品になりましたが、どのようなことを心がけて撮られましたか?

監督:特に、「ここが怖い!」と狙って撮ってはいませんでした。もちろん幽霊が出てくるシーンはなにかしら怖そうな雰囲気になるはずですが、怖いといっても、ホラーと思わず人間ドラマと思っていました。ただ、出来上がったものを観ると、葉月さんの顔は怖かったですね(笑)。必然的にある感情にとらわれた人間の鬼気迫るものを感じました。

Q:葉月さんの美しさの中にある怖さというのは、どこからくるのでしょうか?

監督:もちろん葉月さんの演技力があったからこそだとは思いますが、切羽詰まった“ある思い”を込めた人間というのは「力」がある。その力をまともにぶつけられると、やっぱり誰でもたじろぐし、なんとかしてやりたいと思いつつ、なんともならない。それがどんどん積もっていく感じが葉月さんに限らず、この映画のあちこちに漂わせることができたと思っています。

■一番怖かったのは“人”という無責任な生き物……

Q:この作品の中で、一番“怖い”と思われたところは?

役所:叫び声が、すごく怖くてドキッとしました。やはり、じわじわと迫る居心地の悪い恐怖感は監督ならではだったと思いますね。

小西:瞬間で怖いところはたくさんありましたが、観終わって怖かったのは“人”ですね。自分も含め、人は、なんて無責任な生き物なんだろうって思いました。

伊原:僕はロケ現場の雰囲気が怖かった(笑)。警察署内の寒くて冷たい空気とか、水たまりに立っている鉄の柱を見ると、夜ここに一人でいると怖いだろうなって思いました。すごく雰囲気のあるロケ現場が多かったですね。

Q:黒沢監督はどの作品でもロケハンが個性的ですが、今回はどんなこだわりがありましたか?

監督:一歩、裏道に入ると、いろいろな感情が沸き起こるような、面白い場所が結構あります。そしてそれを撮るのが、わたしのひとつの使命……と言ったら大げさですけど、僕がそのとき撮影していなければ、たぶん1年後に行くと、そこはもうきれいになってるようなところも多いので、記録としてもその場所を撮っておこうという気持ちでロケ場所は探していますね。

■とりとめのない普通の会話から、スッと現場に入る現場

Q:撮影現場は、どんな雰囲気でしたか?

役所:雰囲気は異様ですよね(笑)。監督の好きな空間というのは、異様というか廃屋とか、普通のアパートでも、生活のあとは残っているんですよね。たった今、そこから人がいなくなったような気配があるんです。どんぶりがあって、はしがあって、そこにいた人たちの物語が伝わってきて嫌な怖い感じがしますね(笑)。

小西:撮影中の現場の雰囲気はとても和やかで、空き時間は他愛もない会話をしながら楽しく過ごさせていただきました。現場に行くのが楽しかったです。

伊原:黒沢さんの作品は初めてなんですけど、すごくスピーディーで、そのシーンで何をやりたいのかという目的が良く見えているような気がしました。最近は、共演者の方が僕より年齢が若かったりすることが多いんですが、今回、役所さんと共演して、とても自由にできました。

■自分の世界がブレない、黒沢清監督の魅力

Q:脚本も監督による書き下ろしですが、黒沢清監督はどんな監督さんですか?

役所:脚本を黒沢さんが自分で書かなくて、脚本家が書いたもので撮っていれば、作品の数は倍以上あると思うんです(笑)。黒沢さんは次の物語を見い出すまでに時間はかかりますが、常に新しい実験というか挑戦を心がけてらっしゃって、自分の世界を確実に持っている。それがブレない。しかも、次はどんな世界を描くのか予測がつかないところが国内の若い人も含め、海外からの支持も圧倒的に多い理由でしょうね。監督の力強さはすごい。作家として作品を撮る監督ですよね。

監督:いやいや自分が撮りたいだけです(笑)。

小西:監督が脚本を書いているだけあって、現場でも作品の世界観がしっかりしていました。作品への思いがとてもまっすぐでいらっしゃるので、あとはそこを信じて臨むだけという状況はとってもありがたいなと思いながらやらせていただきました。

伊原:台本では、全然感じられなかったことも、実は監督の頭の中にあって、それをどうやって僕らに投げかけてくれるか、どうやって自分でそれを探していくのかという作業が楽しかったです。

■現場の雰囲気でふと出るアイデアが楽しい

Q:監督ご自身はどうでしたか?

監督:人が脚本を書いてくれたら楽だなとは思うんですけど、どうしても自分で書いてしまって……(笑)。脚本に関しては、自分でも謎だらけなんですよ(笑)。脚本を書いていて悩むと「いいや、後は現場で考えよう」って思ってしまう(笑)。現場のスタッフや俳優の方が考えてくれたり、現場の雰囲気でふとアイデアが出たりすると楽しいんです。だから自分の中では、脚本を書いて撮影して、編集も含めてだんだんとひとつの作品ができていくということです。脚本を書き終わる時点というのは、完成にも至っていない中途半端な段階ということですね。

■幽霊と生きている人間の深いドラマ

Q:これからご覧になる観客の皆さんにひと言で紹介すると、本作はどんな作品ですか?

役所:幽霊と生きている人間との本格的なドラマだから、怖かったり怖くなかったり、ときには笑っちゃうところもあると思うんですけど、怖いだけの基準じゃなく観て欲しいですね。

伊原:恋愛映画でもあるし、復しゅう映画でもあるし、その中で黒沢さんが込めた“叫び”のメッセージを感じてもらえればいいなと思います。

小西:わたしが観て感じたのは怖いというのではなく、観た後に切なくなったり、自分自身のことを振り返ってみたりする気持ちになったので、どんな方にもぜひ観に来ていただきたいと思います。

監督:ホラーという枠だけでは入りきらない様な作品になっていますので、人間のドラマや、もっともっと深い人間の存在というものを楽しんでいただければと思います。

「ホラーという枠だけでは、入りきらない」。独自のスタイルで、個性的なホラー映画を撮り続けてきた黒沢監督が、開口一番に言った言葉が印象的だった。このひと言で『叫』という作品は、これまでとは明らかにちがうジャンルの作品であることが分かるだろう。この映画が持つ特別な印象は、演じた役者たちの言葉の節々からも感じられた。「幽霊と生きている人間との深い人間ドラマ」が、ミステリーとなって描かれている本作は、鬼才・黒沢清が生み出したまったく新しいジャンルの作品だ。本作が、どういう映画なのかは、劇場に直接足を運んで考えてもらいたい。

『叫』は2月24日よりシネセゾン渋谷ほかにて公開。

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