シネマトゥデイ

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アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督、役所広司、菊地凛子、二階堂智
『バベル』
見終わったあと、素直に誰かを愛したくなるような映画です
『バベル』アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督、役所広司、菊地凛子、二階堂智 単独インタビュー

取材・文:シネマトゥデイ 写真:秋山泰彦

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今年のオスカーは、助演女優賞にノミネートされた菊地凛子に日本中が注目した。惜しくも受賞を逃したものの、日本人としての快挙を遂げた菊地凛子が、数々の映画賞を総ナメにするほど才能を一気に開花させた映画、それがアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の『バベル』。誇りを持って日本に帰国した菊地を始め、日本を代表する俳優、役所広司、菊地と並び注目を集めている二階堂智、そして監督であるアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督に『バベル』のすべてを聞いた。

■イニャリトゥ監督のエネルギーと、映画への情熱が伝わった撮影現場

Q:役者たちの演技力を最高の状態まで引き出せたのには、何か秘密があるのですか?

イニャリトゥ:何も秘密はありません(笑)。わたしはただ、とても運がよく、才能ある俳優陣に恵まれただけだと思います。この映画の撮影で一番楽しかったのは日本でのシーンだと思います。こういった才能ある俳優陣と行う撮影はとても特別でした。皆さんとても真剣に取り組んでくれたので、彼らの才能を熟慮したり、引き出したりするのは楽しかった。とてもよい時間を過ごすことができました。

Q:イニャリトゥ監督の現場の雰囲気はいかがでしたか?

役所:彼の映画に対する情熱が現場に浸透していて、彼のエネルギーと、この映画を作る彼自身の思いがものすごく伝わってきた現場でした。

■役柄と情熱的に向き合ったことで、何かを得られるという思い

Q:キャスティングには、かなり時間をかけられたそうですね。

イニャリトゥ:今回は長い時間をかけてキャスティングをしました。このキャスティングの期間がすごくよかったんです。凛子が一緒にいた女の子たちは、ほとんどが日本人のろうあ者で、よく協力してくれました。彼女たちはこの作品に対してとても正直(純真)で、ストーリーを組み立てていくことを手伝ってくれたんです。凛子も手話の世界にすぐに引き込まれていき、すごく美しくまとまりました。彼女らは、ハッピーで、エネルギッシュで、最高でした。そのほかの男性陣とは、とにかく、ただ一緒に楽しみました。時には夜の街へ出てディスコに行ったり、キャスティングと同時に東京の夜の楽しさも知りました(笑)。キャスティングというよりも、家族や友だちを集めるような感じですね。それが一番楽しかったところです。

Q:長いオーディションの間、結果を待つまでの気持ちはいかがでしたか?

菊地:落ちることへの恐怖感は常にありました。でもどちらに転んでも意味があるという気持ちを大切にしたんです。もし落ちたとしても、今まで自分がこの役に対して情熱的に向き合ったことに関して、絶対に何かを得られるんじゃないかってこともありましたし……。あとは自分を励ます意味で、「あなたは絶対チエコ役を獲れる! 大丈夫よ!」という気持ちを常に持って、本当に前向きに向き合っていくしかなかったでんす。

■撮影現場では同志のような存在

Q:そこまで執着した、“チエコ”という役柄の魅力はなんだったのでしょうか?

菊地:もちろん、アレハンドロ監督だったので、ものすごくやりたかった! というのはあります。16歳の役であったこと、そしてろうあ者であったこと、それから彼女の抱えている問題がものすごく多かった。そんなことから、やっぱり大きな壁、ものすごく高いハードルだったんです。そういったときに、高ければ高いほどのぼってみたいという気持ちにもなり、積極的に、情熱的にオーディションにも取り組んでいけたんだと思います。

Q:役柄へはどんな気持ちで取り組まれていったのでしょうか?

二階堂:僕も凛子ちゃんと同じで、オーディションの時間がとても長かったんです。最初に台本を読ませていただいたときも、こんなチャンスをいただけるのはとてもありがたいなという気持ちになりました。不安もいっぱいでしたが、自分を「できる! できる!」と励まし続けましたね。凛子ちゃんとオーディションで会うたびに、だんだんと同志のようになりまして、現場で顔を合わせても「これは本当なのかな?」なんて言いながら撮影していたんです。僕の役は、善でも悪でもない役だと思うので、そこを大切にしながら演じました。

■映画という枠を超えて、人との出会いという宝物を手に入れることができた

Q:『バベル』に込めた思いを聞かせてください。

役所:世界各国で上映されていて、高い評価を得てきていますし、日本でこの映画がどのように受け入れられるかをとても楽しみにしています。少なくとも僕の中で、この映画は本当に価値のある映画でありますし、一映画ファンとしても、この映画はものすごく大切なんです。そんな映画に自分が参加できたことは本当にうれしく思います。いろいろな感じ方をして、素直な気持ちで観ていただきたいと思います。

菊地:アレハンドロ監督という素晴らしい監督が4つの言語で織りなしている、素晴らしい映画です。見終わったあとに、誰かを愛することを恐れなくなる、誰かを素直に愛したくなるような映画になっています。映画館で観ていただくと、まったく違うものになると思いますので、ぜひ映画館で観ていただきたいと本当に心から思います。

二階堂:この映画に出てくる人たちは、善人でも悪人でもない、普通の人たち。等身大で観られる、とても深い映画ですので、ぜひご覧になってください。

イニャリトゥ:もう『バベル』はこりごり……というのは冗談で(笑)、とても誇らしく思っています。すごく美しい形でのコミュニケーションが図れました。この『バベル』という映画は、とても価値にある映画だと思っています。映画のスケールの大きさだけではなく、この映画はわたしにたくさんのチャンスを与えてくれました。世界をまたぎ、ここに一緒にいる日本の友だち(キャスト)のようにたくさんの人と出会えたし、こうして日本に来ることもできた。映画という枠を超えた、人との出会いという宝物をこの映画を通して手に入れることができました。

監督を始め、すべてのキャストから共通して伝わってきたのは、この作品に対しての並々ならぬ情熱だった。数多くの映画に出演し、本作でも味のある名演を見せた役所広司も、女優として注目を浴びた、菊地凛子、そして二階堂智も、全員が、映画への深い愛情を抱いている。それは、役所が冒頭で話した通り、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の持つ映画への“使命感”が、人種も何もかもを超越してキャスト陣に伝わっていたのではないだろうか。4つの国が、複雑に交錯する本作で、作品に関わったすべてのスタッフたちの情熱を感じてもらいたい。

『バベル』は4月28日より日比谷スカラ座ほかにて公開。

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