シネマトゥデイ

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私的映画宣言 セカンド・シーズン6月
鴇田崇 高山亜紀 今祥枝 中山治美 前田かおり 相馬学

執筆者の近況など

高山亜紀 鴇田崇
『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』ご一行が来日した。なかでも気になったのはジョニデでもオーランド君でも、ましてやジェフリー・ラッシュでもなくビル・ナイ。ビル・ナイが好きなのだ。この話をイギリス人にすると微妙な顔をされる。これってイギリス女性が「笹野高史、タイプ~」とか言ってるのと同じ? 田村正和が14年ぶりに銀幕に復帰したことでも話題の『ラストラブ』でマサカズ様にインタビュー。“古畑”のファンだと伝えたら「君さ、歯周病菌の名前(3rd season 第4話「古畑、歯医者へ行く」をご参照)言える?」って返され、即返答。もちろん正解を言えたわけですが、生“古畑”に大感激。シロウトのミーハーかオレは。
今祥枝 中山治美
先頃発表されたトニー賞候補。映画ファン的にはリーヴ・シュライバー、イーサン・ホーク、ビリー・クラダップ、マーサ・プリンプトンなんていう懐かしい名前も。評価が高かったのに落選したビル・ナイは残念だけど、みんな地道に舞台で頑張っているんだなぁとしみじみ。 偏愛でもちょっと書いた本「世界のミリメシを実食する」は、軍用食事からお国柄が見え るだけでなく、非常事態が起こった際に役立つ一冊。例えばあめ。戦地で糖分を補給するだけじゃなく、のどの渇きも抑えるんだって。そういえば映画『ブラッド・ダイヤモンド』ではディカプリオがミリメシ担いでダイヤモンド発掘に出掛けてた。中身が気になる。

 300 <スリーハンドレッド>
(C) 2007 Warner Bros. Entertainment Inc.
  『シン・シティ』でも知られるフランク・ミラーのグラフィック・ノベルを基に、スパルタの兵士300人がペルシアの巨大軍と戦う姿を描いたアクション超大 作。監督は『ドーン・オブ・ザ・デッド』のザック・スナイダー。屈強なスパルタの王レオニダスを『オペラ座の怪人』のジェラルド・バトラーが演じる。色彩 のバランスを操作し、独特の質感になるよう画像処理を施した斬新な映像美とともに、屈強な男たちの肉体美も見どころとなっている。

ジェラルド・バトラー
レナ・ヘディー
デイビッド・ウェナム

監督・脚本: ザック・スナイダー
   
高山亜紀   作品評価3 好き度3
観るべきは男の体のみ! というまったく新しい萌ジャンル。ちなみに体資本の戦士じゃなくて議員役のドミニク・ウェストさえ超マッチョ。空気椅子でデスクワーク? 要はスパルタ戦士VSペルシア王の対決ストーリーなのだが、スパルタ兵は全員黒パンツに黒シューズでストロングスタイルのレスラーを髣髴(ほうふつ)させる。300人の猪木。一方、ペルシア王のロドリゴ・サントス。つるっぱげでブッチャー? こっちは完全にヒールである(ただし、メークはカルーセル麻紀風。どうしてこんなに役に恵まれないのか、ロドリゴよ)。どう見てもプロレス映画。男はほとんど全編半裸のパンツ姿。なのにサービス不足と思ったのか、ジェラルド・バトラーは全裸尻姿まで披露している。充分ですから!
鴇田崇   作品評価4 好き度5
  『トロイ』や『アレキサンダー』など興行的にはスペクタクルとまではいかない古代史劇も、アメコミ感覚(まぁ今回はフランク・ミラーのグラフィック・ノベルが原作ですが……。)で処理すれば大歓迎される好例か? 100万人 VS 300人が死闘を繰り広げた史実がホントかどうかは知らないが、そこが伝説映画の醍醐味であって、意表を突いた見事な戦略で敵に立ち向かうスパルタ軍の勇姿は、そもそも実写だけでは表現しきれないワケね。男子的には首がバカバカ飛ぶ血沸き肉踊る映像に興奮するも、筋肉フェチの女子には垂涎モノ映像のオンパレード。というか全編、鍛え抜かれた腹筋だらけ。なんせ肉体が鎧(よろい)ですからな。筋肉だけ注目する見方も悪くない。
今祥枝   作品評価3 好き度2
  スパルタの屈強な男たちとペルシアの巨大軍との戦いを、壮大なスケール感で描いた本作。紀元前の物語をスタイリッシュかつ劇画的な映像世界は圧巻! これぞまさしくフランク・ミラーの世界。と、映画『シン・シティ』でしかミラーを知らないので想像する。最初っから最後まで猛々しくマチズモ全開の内容は、思いきりよく娯楽に徹していてすがすがしくさえある。しかし、体力も根性もない筆者は本作のファイト一発みたいな気合いを持て余し気味。途中で何度か息切れしてしまった。『オペラ座の怪人』が一部には大うけ、おおむね不評だったジェラルド・バトラーはアクションスターとしての面目躍如!? ロドリゴ・サントロの扱いは、ちょっとかわいそうな気も……。


 舞妓Haaaan!!!
(C) 2007 「舞妓Haaaan!!!」製作委員会
  さまざまなルールや、しきたりが満載の“舞妓”の世界を舞台に、クドカンこと宮藤官九郎がオリ ジナル脚本を手がけた人情喜劇。舞妓と野球拳をするという夢をかなえるため、人生のすべてをかける男の姿をハイテンションに描く。監督は、宮藤脚本のテレ ビドラマ「ぼくの魔法使い」の水田伸生。舞妓しか愛せない主人公を「大人計画」の阿部サダヲが熱演。あでやかな舞妓姿を見せた柴咲コウが阿部、宮藤らのパ ンク・バンド「グループ魂」に参加し、主題歌を歌っていることにも注目だ。

阿部サダヲ
堤真一
柴咲コウ

監督: 水田伸生
     

高山亜紀   作品評価3 好き度4
クドカンの脚本は阿部サダの魅力を存分に描いているし、水田監督もその世界観を完璧に伝えている。ただそのせいか、全編、ハイテンションすぎて疲れた。ローテンションなわたしは「映画観ながら仮死状態」(主題歌歌詞より)。そしてもう一つの主役・京都があまり生きてないのは残念。このくだらない映画で全編京都ロケとか(一部金沢)、京都人役は全員京都出身とかにこだわって欲しかった。女将さんは杉本彩とか、部長は岸部一徳とか、社長は上岡龍太郎とか。そしたらなんとなく、ねちっとしていて特権意識のある京都人像が分かり、阿部サダの疎外感が伝わりやすく面白くなったはず。関西弁というけど地域によって微妙に違うはずだし。ディテールにこだわらないのは京都らしくないのでは。
鴇田崇   作品評価2 好き度1
  前提として“男子なら死ぬまでに一度は舞妓さんと花街の夜をブイブイいわせたい!”みたいな空気が映画全編に流れているのだけれど、まったく興味がないので乗れねぇっす。ハイテンション俳優同士の阿部サダヲと堤真一の、半ば浮いているようにみえる掛け合いに引きずり込まれそうになるも、すぐまたハッと我に返る始末で。本筋とは“あまり関係のない”小ネタで笑わそうとするクドカンの脚本自体、もともと好きではなく、ハチャメチャな登場人物たちをハチャメチャに描き切れていない演出の仕方にも不満足。テンポは速いのにぬるま湯につかっているような妙な感覚。あと、せっかく舞妓の世界を扱ったのだから、もっと詳しい内情とか知りたかった。
今祥枝   作品評価3 好き度3
  冒頭から針が振り切れんばかりのハイテンションな演技を見せる阿部サダヲ。本作で取材をした際に、「現場では堤さんがナチュラルにテンションが高かった」と語っていたが、映画を見れば一目瞭然(いちもくりょうぜん)。阿部に勝るとも劣らない堤真一の怪演はあっぱれ! そんな二人に押されて、やや存在感が希薄だった柴咲コウはちょっと損な役回りだったかも? ともあれ、有り得ない展開にばかばかしくも切なく笑えるクドカンワールド炸裂で、文句なしに痛快なエンターテインメント。じめっとした梅雨どきの気晴らしにオススメ!

 ゾディアック
 
  アメリカ犯罪史上最も危うい連続殺人鬼と言われる“ゾディアック・キラー”を題材にした話題作。ゾディアックに関わり、人生を狂わされた4人の男たちの姿 を描く。監督は『セブン』のデビッド・フィンチャー。『ブロークバック・マウンテン』のジェイク・ギレンホールが、事件の謎を追い続ける風刺漫画家を演じ る。徹底したリサーチを基に練り上げられたサスペンスとしても、4人の男たちの生き様をリアルにつづった人間ドラマとしても楽しめる。

ジェイク・ギレンホール
ロバート・ダウニーJr

監督: デビッド・フィンチャー
     
高山亜紀   作品評価4 好き度4
未解決事件の話なのに、犯人探しに夢中になった。ゲーマーの悲しい性質だ。思えばダウニーJrの家に置いてあったあのテニスゲームこそ、わたしが買ってもらった初めてのゲームだった。これって象徴? 不思議なのはシリアルキラーって自分では殺人を止められない、でも止めて欲しいから証拠を提示するって説が有力だったはず。でもこの場合、殺人は止まっている。真犯人は死んだんじゃないか、とゲーム脳ゆえいまだ謎に挑むわたし。主人公もゲーマータイプだから家族を捨ててまで謎解きに走ったのだと思うよ。趣味で捜査……『時効警察』か。「誰にも言いませんよ」カード渡せば、真犯人も白状したかも。それから、ダウニーJrのコカインを吸い込むシーンはいつ見てもリアルで自虐的で素敵。
鴇田崇   作品評価3 好き度2
  全米中を騒がせた連続殺人事件“ゾディアック事件”も、物的証拠が決め手ってあたりがやけに現実的でして、サスペンスとして観ちゃうと食い足りないけれど、“なんだか分からないがゾディアックに引き寄せられて疲労困憊(ひろうこんぱい)する人々の話”って割り切って観ればイケる。登場人物たちが興味本位で事件に接しているように見えちまうのだが(極めつけはみんなで鑑賞『ダーティーハリー』)、それがデビッド・フィンチャー監督の狙いなら文句は言うまいて。『殺人の追憶』のように勢いで乗り切ったら、もっと映画的に仕上がったと思う。それもこれもマーク・ラファロが「刑事コロンボ」みたいなイデタチだからいけないんだ。サンフランシスコ市警なのに。
今祥枝   作品評価5 好き度5
  アメリカ全土を震撼させた連続殺人犯“ゾディアック”。デヴィッド・フィンチャーとは相性が良さそうな題材だが、映画は犯人探しの謎解きの面白さではなく、“ゾディアック事件”によって運命を狂わされた男たちにフォーカスしていて新鮮味がある。真実を知りたいという人間の本能的な欲求に従い、事件に固執して破滅していく新聞記者エイブリーや、本作の原作を執筆した風刺漫画家グレイスミスの姿は、決して他人事とは思えない哀れみを誘う。何事もほどほどに、ということか。うーん、でもやっぱり真相が気になるなぁ……。キャストはみな好演しているが、個人的にはマーク・ラファロとアンソニー・エドワーズの刑事コンビがよかった。

 ボルベール<帰郷>
 
  カンヌ映画祭で最優秀脚本賞と最優秀女優賞を受賞し、各映画賞を席巻している珠玉のヒューマンドラマ。母として、娘としてのままならない人生をたくましく 生きる女性たちの生き様を描き上げる。監督は『バッド・エデュケーション』のペドロ・アルモドバル。主演はアルモドバル監督と『オール・アバウト・マイ・ マザー』以来の顔合わせとなるペネロペ・クルス。アルモドバルらしいビビッドな色彩の中で展開する人生賛歌を堪能できる。

ペネロペ・クルス
カルメン・マウラ
ロラ・ドゥエニャス

監督・脚本: ペドロ・アルモドバル
     
高山亜紀   作品評価4 好き度4
ペネロペの胸の谷間をとらえた食器洗っている姿の上からショット。ペネロペの揺れるデカ尻(付け尻だけど)をとらえた車のトランクから荷物を出し入れしている姿のバックショット。フェチズム満載のアルモドバル最高! 彼にとって、母=おっぱい、そしてデカ尻なんだろうな。アルモドバル作品のペネロペは「生の女」を感じさせ、本当に生き生きしている。アイドル扱いのハリウッド映画なんて出なきゃいいのに。玄関まで回らず、階下から「ちょっと~」みたいに相手を呼びかけたり、度胸が座り過ぎている点において、スペイン女性と関西女性はどんなにきれいでも、その内側にはおばはんが住んでいるんだと認識。どうでもいいけど、ペネロペの娘がロナウジーニョ似ってのはどうか。
鴇田崇   作品評価5 好き度4
  ずいぶん前に「ラ・マンチャのたくましい女を演じるためにペネロペ・クルスが“つけ尻”をした映画」って情報だけを耳にしたときは、どんな内容なのか想像をたくましくしていたけれど、各方面で惜しみない賛辞を聞くスペインの巨匠ペドロ・アルモドバル監督の最新作。タイトルにもあるように監督自身にとっても原点回帰になっているからか、アルモドバル作品にしては、いつになく明快なストーリー展開が一般ウケしそう。女性に対する深い考察と描写も相変わらず徹底していて、男なのによくここまで描き切れるなぁと今回も感心しっ放し。人生って前に突き進むことは容易だけど、一度立ち止まるのは勇気がいること。アルモドバルって意外に男マエね!
今祥枝   作品評価4 好き度5
  書き手としてのアルモドバルを敬愛し、『オール・アバウト・マイ・マザー』や『トーク・トゥ・ハー』といった感動路線が苦手。そんなわたしにとって、重苦しいテーマをトリッキーで遊び心あふれる物語に仕上げた本作は、物足りなさを感じる人も多いかもしれないが、前作『バッド・エデュケーション』同様に大歓迎! なので★は大盤振る舞い。そして全編に漂うどこかうさんくさい雰囲気を後押ししている、はすっぱな感じのペネロペがこれまたナイス。ハリウッド作品で見るより断然いい。アルモドバル作品の常連カルメン・マウラのユーモラスな存在感も得難い魅力。旅情を誘うロケーションも含めて大いに楽しんだ2時間でした。


偏愛映画宣言

だれが何と言おうとこの映画を愛します宣言! 
ライターが偏愛してやまない1本をご紹介!

 アポカリプト
中山治美
 
 アラム語に挑んだ前作『パッション』に続く、メル・ギブソンの”失われた文明を再発掘しましょうプロジェクト”(!?)第2弾。今回はマヤ帝国の滅亡を全編マヤ語のセリフで構成。最近、人種差別発言付き飲酒運転で逮捕という騒動を起こし、明らかに人格的に問題アリのメルギブだが、このチャレンジ精神あふれる姿勢だけは讃えたい。それ以上に本作品の魅力は、ネイティブアメリカンの血を受け継ぐ主演のルディ・ヤングブラッドの身体能力の高さ&サッカーのロナウジーニョ激似という笑えるルックスに尽きる。映画界のロナウジューニョも、スゴイよ。マヤ帝国の屈強な傭兵たちから「人間狩り」の標的にされるや、森で育った知恵を武器に、毒矢を射り、罠を仕掛け、敵を一人二人とさばいていく。今、世界の軍用食事を調査した「世界のミリメシを実食する」シリーズを愛読し、パリ・ダカールラリーの英雄・篠塚建次郎(山口百恵の義兄ネ)ファンである筆者としては、サバイバルに強い男を心から尊敬しちゃう。さぁ、あなたも劇場で応援しよう。ロナウジーニョ、ガンバッ!と。
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