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小泉今日子&三木聡監督
『転々』
“三木ワールド”は「今日はいい日だったなぁ~」に近い
『転々』小泉今日子&三木聡監督 単独インタビュー

取材・文: 平野敦子 写真:秋山泰彦

大人気テレビドラマ「時効警察」シリーズや、映画『図鑑に載ってない虫』などの話題作を手掛ける三木聡監督の最新作『転々』。三木監督は、笑いの中にもどこか哀愁を感じさせる良質の人間ドラマで新境地を開拓。東京の街を歩き続ける主人公の男2人を温かく見守り、“疑似家族”の大らかな母親として君臨する“麻紀子”を演じた小泉今日子と三木聡監督の2人が、もう二度とはありえないと三木監督自身が太鼓判を押す自信作について、愛情を込めて語ってくれた。

■二度と再現不可能な“三木ワールド”

Q:まずはこの作品をご覧になった感想を聞かせてください。

監督:いや~、みんな頑張ったなと(笑)。ただこれをもう1回やろうと思ってもできないな……とは強く思いましたね。どちらがいい悪いということではなく、『図鑑に載ってない虫』とかはもう一度やろうと思えばやれるという感じはあるんだけれど、『転々』に関して言えば無理だと思うんですよ。脚本は2005年に書いたんですが、もう1回脚本をゼロから書き始めたとしたら、泉さんとオダギリさんの動物園のシーンなんて書くかなと。つかみどころがなくて、ある意味自分でもちょっと怖いという感じは受けましたね。

小泉:わたしはとても気持ちのいい一日を過ごしたな……というイメージというか。「あぁ、今日はいい日だったなぁ~!」という感じに近いですね。観る方によって、すごく面白い映画だったよと言う人もいるかもしれないし、ジーンときちゃった……と言う人もいるかもしれないし、中にはワケ分かんなかったという人もいるかもしれないし。受け取る側によってそれぞれいろいろなイメージを抱かせる映画だと思うので、そういうところがとてもすてきだと思います。

Q:この作品は東京を転々と散歩する話ですが、お2人ともよく散歩はされるのでしょうか?

監督:僕はよく散歩しますね。散歩というか、仕事などでちょっと時間が空くとその仕事場の回りがどうなっているんだろうと歩いてみる“小散歩”が好きです。待ち合わせの時間に30分早く着いてしまったら、ちょっとその辺をウロウロするようなね。

小泉:わたしもよく監督と同じようなことはしますね。家の近所とかはよく歩きますし、「ん、この路地知らなかった!」と思うと必ず曲がってみます。あと行き止まりっぽいところはちょっと入って奥まで見てみるとか(笑)。映画の撮影の合間にぽっかり1、2時間空いたりすると、寝たりするよりは「じゃあちょっと近所を歩いて来よう!」となりますね。果たして散歩が好きなのか、何かが見たいのか……自分でもかよく分からないんですけど(笑)。路地に入ると猫とかもいますし、鉢植えとか洗濯物とかを見るのが楽しいですね。奇妙な置物とかを置いてある家を見ながら「え、こんなにかわいくなくていいんだ……」というような感想を心の中で言いつつチェックを入れたりしています(笑)。

■“麻紀子”を演じられるのは世界中で小泉今日子だけ!

Q:監督が今回小泉さんを起用された理由は?

監督:最初に脚本を書いたときは、まだ何もキャスティングのことは考えていなかったんですが、小泉さん演じる“麻紀子”がこういう行動をとったら腹が立つだろうなとか、面白いだろうなというイメージが膨らんだというか。僕がイメージした“麻紀子”という女性にぴたりとハマるのは小泉さんしかいなかったということですよね。この手の小ネタでほそぼそやっている映画は、やはり一番理想的な人に役をお願いするというぜいたくをしないとダメだと思います。

Q:小泉さんがこの作品のオファーを受けられたときの感想を聞かせてください。

小泉:最初に台本が届いて、読んでみたら面白くて、“麻紀子”という役をとても好きになりました。それで「この役をやってみたい、このせりふを言ってみたい!」と感じたんです。あと台本を読みながら三浦さんとオダギリさんが東京の街を歩いている姿が浮かんで、読んでいて気持ち良かったですね。

Q:ここは絶対に観てもらいたいというお気に入りのシーンはありますか?

監督:うーん、どこもですね。自分は監督ですし……(苦笑)。

小泉:どこも好きですね! いろいろと積み重ねて行ったことがステキな映画なので全部です。自分が出演しているシーンでは、三浦さんとオダギリさんが2人でジェットコースターに乗っているシーンが好きですね。わたしは“麻紀子”という人は優しいという側面もあるんだけれど、すごく無責任な人なんじゃないかと思うんですよね。人の話を聞いていても、ちゃんとそれを受け止めているのかどうかも、よく分からないぐらいの人でいいのかなと(笑)。

監督:その人に対する無責任さというのは、実は逆に人に対しての優しさというか。

小泉:“麻紀子”という女性の存在がオダギリさん演じる文哉君にとって居心地がいいといいなと思って。もし彼らが本当の家族ごっこをしていて、変に何でもやってあげようとしたら嫌だと思うんですよ。わたしも「ほら、今日子ちゃんこれ食べなさい、あれ食べなさい」とかいう人がいたら、逆にこっちが気を使ってしまうし。本気かどうか分からないぐらいの無責任感が、こういう男の子を少し居心地良くさせてあげられるんだと思いながら演じていました(笑)。

■待たされるのが嫌いな監督と小泉

Q:個人的には“麻紀子”さんが出がけに人を待たせるシーンが好きだったのですが。

監督&小泉:イライラしますよね!

監督:自分も昔母親によく待たされて、それを小泉さん演じる“麻紀子”がやると相当面白いだろうなと思って(笑)。やはり実際すごく面白いんですよね。こっちはモニターを見ながら「お待たせ、お待たせ、お待たせ」じゃねえだろうと思っているわけです。

小泉:三浦さん演じる“福原”は、自分は行かないのに怒ってるんですよ。それで“麻紀子”に一言「あなた行かないんでしょ!」とグサリと痛いところを突かれるんですよね(笑)。

Q:一緒に仕事をされて、お互いの印象は変わりましたか?

小泉:人間のおかしさとかかわいらしさとか、バカさとかいうものがちゃんと見える作品だと思うので、監督はどんな風に人を見ているんだろうという興味がありましたね。実際お会いしてみると、大人の距離感を保たれる方で、とても細かい演出もされるけれど、それと同時に大胆さも持ち合わせていて、とても楽しい現場でした。わたしは監督を“大人”だなと感じました。

監督:小泉さんはアナーキーな部分もあり、とても大人の部分や客観的な部分もあり、いい加減で……僕の予想以上にいろいろな意味で面白かったですね。僕自身が文哉と同じ印象を“麻紀子”さんに持てたな……というのがとても新鮮でした。僕が舞い上がっているというか、入り込んでやっているときにぽろりと小泉さんから客観的な一言をいってくれた感じが“麻紀子”さんに似ていると思いました。相手の考えていることが分からないと、興味を持っちゃうじゃないですか。小泉さんも何を考えているのか分からないところが魅力ですね。

いくつもの笑いの小ネタをポケットに隠し持つ三木監督と、一見キュートな印象とはまた異なる大人の顔を見せてくれた小泉の掛け合いが、なんとも心地いい雰囲気を醸し出していた。そんな2人に、オダギリジョーや三浦友和らが加わり、“三木ワールド”がさく裂している本作を、ぜひスクリーンで確かめてもらいたい!

『転々』は11月10日より渋谷アミューズCQN、テアトル新宿ほかにて全国公開

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