シネマトゥデイ

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トニー・ギルロイ監督&ティルダ・スウィントン
『フィクサー』
このキャリア・ウーマンは常に仮面をつけている
常に汗をかいて、顔立ちに合わない化粧をしているの
『フィクサー』トニー・ギルロイ監督&ティルダ・スウィントン インタビュー

文・構成:シネマトゥデイ

新人監督の作品が、2008年のアカデミー賞でいきなり7部門にノミネートされ、話題となった映画『フィクサー』。ジョージ・クルーニーが主演・製作総指揮を手掛けた本作は、大手法律事務所の暗部に鋭く切り込む社会派ドラマだ。監督と脚本を手掛けた映画『ボーン・アイデンティティー』などで知られるベテラン脚本家トニー・ギルロイと、本作で主人公に敵対する上司を演じ、見事アカデミー賞助演女優賞を初受賞したティルダ・スウィントンに話を聞いた。

■不安定さが最大の魅力

Q:最初から最後まで常に砂を口に含んだような、ジャリッとした感覚が残りました。これは作り手が意図したものでしょうか。

トニー・ギルロィ監督(以下監督):面白い印象だね。この映画ではみんなオフバランスで、キャラクターの誰一人として、地に足をつけていないんだ。すべてが推移しているというか、常に動いていて、それがこの映画の温度でもある。だから観る人は潜在的に落ち着かない感じがするんじゃないかな。

ティルダ・スウィントン(以下ティルダ):例えばね、わたしが何か見ていても、それって真実ではないのではと考えてしまうの。人生で足が全部地についているときでも常に何か、足元のカーペットの端がめくり上がっているような何かが、いつも起こっているのよ。舞台の見えない延長部分という感じね。

Q:つまり水面下では常に何かが起こっていると?

ティルダ:今われわれが平穏な状態でこうしてインタビューを受けていても、心の中では密かに家に残してきた子どものことを考えていたりするの。常に字幕が下にあるのよ、カーペットの下とかどこかにね(笑)。でもそれを見ることはできないわ。平穏な状態を見るだけね。何が起こっているかはわからないのよ。

監督:わからないけれど、映画ではいろいろな要素を使って不安を喚起することができる。不安感によって独特の空気をこの映画に与えていると思うよ。

■映画は自由であるべき

Q:監督が脚本を書いて映画化するのと、脚本家が監督をするのとでは違いますよね。その違いを自覚されていますか?

監督:各シーンが緻密(ちみつ)に構成されているとき、その演技のつながりにときどき監督すら混乱してしまうことがある。でも僕の場合、そのちょっとした意図がどこからくるのか正確にわかるから、混乱することはないね。そういう点では脚本家出身で良かったかな(笑)。ただ脚本家出身の監督は、時に脚本を守り過ぎると思う。そこは問題だね。でも僕は脚本を変更することを決していとわないし、変化することに対して何の心配もない。映画は自由であるべきだと思うから。そんなことよりシーンがどう機能するかが何よりも大事なんだよ。

ティルダ:トニーは真の映画人よ。彼にとって脚本は、正しい場所にたどり着くためのただの痕跡に過ぎないの。

■役柄と顔立ちが起こす化学反応

Q:あなたの独特の顔立ちをキャスティングの理由として挙げる監督は少なくありません。そのことについてどう思われますか?

ティルダ:肉体のマテリアルはキャスティングにとって重要だということは認識しているわ。わたしがどんな風に見えるか、わたしをどんな風に見せることができるか。それは重要な課題よ。でもルックスがキャスティングのポイントになったとしても、わたしのルックスのどこが必要とされたかというポイントは作品によって異なるはず。だから俳優にとっては、役柄に全力投球することしかできないのよ。だからわたしは自分の顔立ちがどんな化学反応を起こすのかを、仕事の一部として楽しんでいるわ。だってそれって、役柄の後ろに隠れているものを見つけだす探偵の仕事のようで面白いじゃない。

Q:今回の役は天使でも中性的でもなく現代の女性ですが、それでもやはりルックスは重要なポイントだったのでは?

ティルダ:もちろんすごく重要よ。だってこのキャリア・ウーマンは常に仮面をつけているんですもの。常に汗をかいていて、体にフィットしていない服を着て、顔立ちに合わない化粧をしているの。この外見の様子から、実際の彼女と職場での彼女との誤差がわかるわ。彼女はオフィスという戦場で軍服を着た兵士なのよ。

■ラストがすべてを物語る

Q:ラストを単純なハッピーエンドにしなかったところに、監督が描きたかったことへの妥協なき姿勢が見られますが、同時にその前に山場を持ってくることで、ある種のエンターテインメント的な見せ場を作って観客を楽しませることも忘れていません。その辺のバランスはやはり必須だと?

監督:まぁ脚本家だから、その辺はちゃんと計算しているよ(笑)。主人公のマイケルは表面的には敵を倒したけれど、同時に内面的には敗北しているんだ。ハッピーエンドにはできなかった。彼は大きな代償を支払うべきだからね。今回僕がやろうとしたのは、今指摘された2つのことを矛盾なく両立させること。それがこの映画を撮る意味だった。

念願の監督デビューということもあり、終始ナーバスだったトニー監督を、ティルダが常に気遣い、励ます姿が印象的であった。どうやらティルダはかなりのアネゴ肌のようだ。そして知的で、言葉の選び方が文学的。しかしときどき話が飛んだり、説明不足だったりでわかりにくいところもあるのだが、本人は無意識のようで、とにかく一気に話す。一方トニー監督は作品通りかなりきまじめな人物。うまく言えなかったと思うと、何度も言葉を変えては同じことを言い直す。一見表現の仕方は対照的な2人だが、お互いの話に納得しては深くうなずく様子から、共通する感覚や強い信頼感が見てとれた。

(C) 2007 Clayton Productions, LLC

『フィクサー』は4月12日よりみゆき座ほかにて全国公開

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