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ミムラ
『落語娘』
言いたくないのに「ばか師匠」なんて言って、胸が痛かったです
『落語娘』ミムラ 単独インタビュー

取材・文:福住佐知子 写真:秋山泰彦

新鋭作家・永田俊也の同名小説「落語娘」を映画『桜の園』『12人の優しい日本人』などの傑作を生み出してきた中原俊監督が映画化。落語に青春を賭け、ひたむきに突き進んでいく一人の娘と業界の異端児と呼ばれた破天荒な師匠の物語を描いた『落語娘』で、ヒロイン香須美を演じたミムラに、映画と落語への思いを語ってもらった。

■落語の世界に飛び込んだ感想

Q:落語家を演じるというのは大変なことだと思うのですが、出演の決め手になったのは?

台本が面白かったんです。わたしは落語をあまり知らなかったんですが、よくわかる描写と落語の世界の師弟関係など、人間関係がすごく面白く描かれていて、その独特の世界観に惹(ひ)かれて、ぜひやってみたいと思いました。

Q:落語についてどんなイメージを持っていましたか?

撮影前にいただいた資料を読んだり、けいこをつけたりしていただいたのですが、難しそうだけど面白そうだというのが第一印象でした。そして演じながらも終わりが見えなくて、ずっと走りっぱなしの現場だったという記憶があります。

Q:出来上がった作品を観て、どんな感想を持ちましたか?

自分のところはいつも冷静には観られないんです(笑)。撮影現場の密度がそのまま現れていたと思います。とても思い出深い作品になりました。とにかく三々亭平佐師匠(津川雅彦)がとてもキュートです。

■人間くさいヒロイン像に共感

Q:ヒロイン香須美のどんなところに魅力を感じましたか?

演じながら感じたことなんですが、香須美の面白いところはうまくいってない現状に結構腐っていたり、イライラしているところもあって、「まったく~」って言ったりするんです。いわば人間くさいんですね(笑)。落語に対する愛情と平佐師匠に認めてもらいたいという気持ちもあって、すごくひたむきに頑張っている……。そんなところがとても情熱的で面白いと思いました。

Q:ご自身との共通点はありますか?

何事にもはっきりしているところと、早口なところが似ているって言われます(笑)。わたしも一生懸命になり過ぎて視野が狭くなった経験があるので、香須美の気持ちは手に取るようにわかりました。

Q:役作りのための準備期間はどれくらいで、どんなことをしたのですか?

1か月位しか準備期間がなくて、いつもならキャラクターの内面性だったり,生い立ちだったりを監督に相談したりするのですが、今回は何よりも落語を何とかせねばという思いでした。けいこをつけていただいた師匠(柳家喬太郎)がお忙しい方で、5回しかできなかったんですね。間、間で練習していくことが重要になっていくので、とにかく家で手が空いていれば聞く、読むということをズーっとやっていましたね(笑)。芸のプロの方を演じる場合は、それを本業にしてらっしゃる方やそれを愛してらっしゃるファンの方々に失礼にならないようにと思っていて、撮影中もずっと緊張感が続いた状態でした。

■津川雅彦演じる最高にかっこいいお師匠様

Q:公園で子どもたちの前で落語を練習する姿が楽しそうでした。

あれは楽しかったです(笑)。素で笑ってしまったというか、本当に楽しくて、うれしくて笑ってしまったシーンです(笑)。テストの段階からエキストラの方が笑ってくださって、落語をやっていてうれしいと思ったシーンなんです。物語中盤のあのシーンがきっかけで心構えも変わっていきました。

Q:平佐師匠を演じた津川さんと共演された感想はいかがでしたか?

こちらに構えさせないで普通に接してくださって、フワッとした感じでお話してくださる方です。あと、いつも教訓が含まれている深いお話をしてくださるので、すごい方だと思っていました。今回師弟関係をやらせていただいて、絡みのシーンも多くて毎日現場に行くのが楽しみでしょうがなかったです。津川さんのお話は一言、一言にパワーと教訓が入っていて、それが自然と体に浸透していくんですね。不思議な空気感を持った、素晴らしい方です。今はマキノ(雅彦)監督としても活躍されていますが、監督としてのふかんの目線と役者として同じ目線でも見てくださるので、そのあたりの解釈も素晴らしくて、中原監督が津川さんと相談しているときは、監督が二人で話しているようでした。そばにいるだけで本当に楽しかったです。

Q:男性として平佐師匠のような人をどう思いますか?

津川さんが演じられているからだと思いますが、あれだけアウトローな感じなのに品のよさが欠けないですし、ウイットに富んでいてキュートですし、かっこよかったです。津川さんのように自分の持っている魅力をどの役柄にも当てはめてオールマイティーで使えるというのはすごいって……。見ていてドンドン好きになっていっちゃうんですね。言いたくないのに映画では「ばか師匠」って言わなきゃいけなかったので、胸が痛かったです(笑)。

■落語の世界を垣間見て

Q:落語の世界は男性社会、女性として苦労したことはありましたか?

落語はもともと男性がやっていたので、男性がやると面白いけどそれを女性がやるとちっとも面白くないという落語もあります。落語は女性がとても女性らしく描いてあるので男性がやるとちょうどいいのですが、女性がやるとちょっとイヤミになったり、濃過ぎたりするんですね。

Q:日本人にとって落語とは?

わたしの中では、近所に遊びに行って一流の芸能を見せてもらうという不思議なバランス感覚の存在で、ほかにないエンターテインメントだと思いました。皆さまにもぜひ、寄席に出かけていただきたいですね。

Q:最後に作品の見どころとメッセージをお願いします。

香須美は一生懸命になり過ぎていてバランスの悪いところもありますが、ひたむきに何かに取り組んでいる人間の魅力をすごく持っている女性です。対極にある平佐師匠は破天荒でありながら、キュートで、上品で、粋が服を着て歩いているような人物。大人から子どもまで、いろんな方に足を運んで観ていただきたいです。

どんなに虐げられても、自分の夢に向かってまい進していく香須美を元気いっぱいに演じたミムラは、一つ一つの質問に明るく笑顔で答えてくれた。その笑顔は見ているだけで人を幸せにさせるような不思議なパワーに満ちていた。さらに、「少しでも多くの情報をお伝えしたいから」と早口で話す姿に好感が持てた。そんな彼女が初めて挑んだ3つの落語と太鼓のシーンなど見どころ満載の本作を、ぜひじっくりと堪能してほしい。

『落語娘』は8月23日よりシネスイッチ銀座、シネリーブル池袋、新宿ミラノ3ほかにて全国公開

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