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八嶋智人&佐藤江梨子
『秋深き』
全体の空気感が僕たちを自然に受け入れてくれた感じがした。
『秋深き』八嶋智人&佐藤江梨子 単独インタビュー

取材・文:福住佐知子 写真:高野広美

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「夫婦善哉」で知られる昭和の文豪・織田作之助の短編を基に、暴力やセックスを題材に描くことに定評のある映画『死霊の罠』『ハサミ男』の池田敏春監督が、関西を舞台に日本一の純情夫婦のはかない結婚生活を味わい深い作品に描きあげた。映画『秋深き』で初主演となる、いちずに愛を貫く不器用な男を演じた八嶋智人と、大らかな母性で男の愛を受け止める女性を演じた佐藤江梨子に、映画に込めた思いと自らの愛について語ってもらった。

■劇中のイチャイチャは不思議な感じ

Q:本作に出演が決まった感想から聞かせてください。

八嶋:最初は、大丈夫なのかい? 主演が僕なんかでいいのかい? と思いましたね。でも台本を読んだとき、すごく切なくてかわいらしい話で、そして僕の相手役が佐藤江梨子さんだと知って、「ヤッタア~!」って思いました(笑)。撮影に入ってから、江梨子ちゃんは僕の前でずっと一代でいてくれて、僕がそこにいても大丈夫なんだと思わせてくれたので、僕はずっと寺ちゃんという男でいることができました。

佐藤:台本をいただいたとき、本当に感動しました。脚本が素晴らしかったので、この作品に出られるのだったらどんな役でもと思えたくらい、すてきだと思いました。一代の役で出演が決まって、うれしかったですね。相手役が八嶋さんと聞いて、「ヤッタア~!」って(笑)。

Q:夫婦を演じられた中で、本当に夫婦のようだと実感した場面はありましたか?

八嶋:僕が一代に夢中になって、プロポーズして……。という風に撮影していったので、自然とそうなりましたね。二人が生國魂神社で結婚式を挙げる場面も、ずうっと違和感なくお互いが思い合っているという状況にいられたので、僕は自然と夫婦になったつもりなんですけど……。

佐藤:結婚式をやるのって生まれて初めてだったので、すごく感動しました。

八嶋:撮影の合い間に、二人で縁結びのお守りを買ったんですよ。

佐藤:縁結び(のお守り)が欲しいと思ったんですが、対の物しか売っていなくて、相手がいないのでやめようかと思ったら、八嶋さんが一緒に買おうと言ってくれたんです。うれしくて泣いちゃいました。

八嶋:涙を流している江梨子ちゃんを見て、逆にこれで映画がうまく行くと実感しました。自分が結婚していることも、撮影している間はまったく考えてなかったですし(笑)。

Q:寺ちゃんが一代の胸を触るシーンが何度か出てきましたが、感想をお聞きしてもよろしいですか(笑)?

八嶋:ハッハッハッ、感想ですか……? ファンの方には申し訳ないですが、本当はもっと過激な内容の映画だったんですよ。でも池田監督が「初めて純愛ものを撮るので、そういう部分はやめたい。かわいくイチャイチャしてくれよ」と言われたんですね。中には「お前たちに任す」と言われたシーンもあって、観ていて恥ずかしいですが、そのときは江梨子ちゃんはリアルに一代だったし、僕は寺ちゃんになってイチャイチャできたというか……。でも、もし僕が江梨子ちゃんのファンだったら、「おい! そこのメガネ、何やってんだ。まったく!」って言いますね(笑)。胸を触る場面は、物語の中でとっても重要で、すごく切なくて悲しい部分で、本当にいとしいという気持ちに支配されているんですよ。だからむしろイチャイチャする場面の方が、男性ファンにとって申し訳ないと思うんです。

佐藤:普段は、イチャイチャする人もいないので、不思議な感じでした……。

八嶋:撮影がタイトで長時間ずっとやっていたから、女優さんのお肌にはきつい状況でしたが、そのイチャイチャの状況は肌に良かったようですね(笑)。

佐藤:そうですね。良かったですね(笑)。

■アドリブでガソリンも飲んだ!

Q:病気になった一代のことが心配で、お百度参りをするシーンがありましたね?

八嶋:あのときは必死でしたから、生國魂神社というところでリアルにお参りしました。ほとんどを大阪の街でロケしましたが、全体の空気感が僕たちを自然に受け入れてくれた感じがしましたね。

Q:一代は病気になってからは雰囲気がずいぶん変わりましたが、苦労された点はありますか?

佐藤:本当の病院で撮影したんですよ。だから消毒のニオイとかがしていて、自然と役に入ることができました。

八嶋:何かやせたよね、やっぱり。

佐藤:普通に食べてはいたんですけど、顔とかはやせましたね。

八嶋:スッと、役に入る力が強いのかって思いましたね。

佐藤:もともと顔の色があんまり良くないのかもしれないですが、撮影が終わった後、周りのみんなからは顔色が良くなったねって言われました(笑)。

Q:お二人の日常の会話がとても自然でしたが、アドリブもあったのでしょうか?

八嶋:合い間のつなぎなんかがより自然になるように二人でいつもコミュニケーションを取っていて、思わず出たアドリブもありますね。寺ちゃんが(一代の病気をどうにか治そうと)バカみたいになっているところは、本番中全然カットがかからなくて(笑)。僕がガソリンを飲むシーンは、ほぼアドリブですからね!

佐藤:そういえば、ずうっとやっていましたね(笑)。

八嶋:ハハハハ……。

■相手への思いやりの気持ちが一番大切

Q:心が弱っているときに、異性からかけてもらった言葉で印象に残っていることはありますか?

八嶋:ある番組で、初めて英語でジョージ・ルーカスにインタビューすることになったとき、英語ができる妻に厳しい特訓を受けたんです。その成果もあってか、当日うまくいって「うまくいったよ、ありがとう!」って電話したんです。そしたら「できると思ってた」ってメールが返ってきて……。すごく緊張していたので、ちょっとホロッときてしまったんです(笑)。ちゃんと信頼してくれてるんだってことがわかって、すごくうれしかったですね。

佐藤:わたしは普段すごく地味にしているんですが、体が大きいこともあってどうしても目立ってしまうんですね。やだなあ~っていつも思っていて、自分を小さく見せようと思いながら生活しているんですけれど、周りにいる友だちはいろんなところに誘ってくれたり、おっかなビックリな生活をしているこんなわたしをいつも子どもを見るような感じで接してくれているので、そんなときは助けられているって、すごくうれしく思いますね。

Q:お二人が思う理想の夫婦像を教えてください。

八嶋:相手のことを、自然にずっと思いやれるということだと思います。夫婦ってもともとは他人同士なので、本当に相手のことを思いやれないと、一緒に一生の時間を費やしていくって難しいと思うんです。二人の間に共通の価値観をドンドン増やして、育てていくっていうのが理想の夫婦じゃないかって思います。

佐藤:いろんな愛の形や恋の形があっていいと思うのですが、お互いを思い合えたら素晴らしいですね。相手への思いやりの気持ちが一番大切だと思います。

■若い世代の人にも観てもらいたい作品

Q:心に残っている場面を教えてください。

八嶋:もちろん、僕にとっては全部なんですが……。シーンとしては園田競馬場のレースで、1番と4番(一代の名前に引っ掛けた番号)の馬が勝利する場面ではCGを使う予定だったのですが、実際に1番と4番が本当に来たんです。神様からこの映画に対するプレゼントかって思ったし、終盤で一代を抱きしめるシーンでは「僕はものすごく一代のことを愛している、愛してきた」って本当に強く思っていましたね……。

佐藤:重要な場面で、一代が寺ちゃんに何かを言おうとしているシーンがあるんですけど、そのときは自分自身も意識がもうろうとしていて、泣いちゃいけないのに涙が出てきてしまって。寺ちゃんが涙をふいてくれたのもそうですが、意識がもうろうとしているので、みけんにシワが寄っているのを寺ちゃんがさりげなく引っ張って伸ばしてくれているのを観て、かわいいシーンだって思いました(笑)。

Q:最後にこの映画の見どころをお願いします。

八嶋:地味な映画なんですが、僕はとてもチャーミングな映画ができたって思っています。悲しいことを一面だけでとらえない、そんな関西の懐の深い文化を知ってほしい。たくさんの人に観てほしい映画です。

佐藤:ぜひ、若い世代の方にも観ていただきたいですね。わたしは泣きました……。

濃いピンクのカーディガンがよく似合う八嶋は、普段は明るくいつも周りを笑わせているが、この日は作品についてまじめに語ってくれた。控えめな佐藤は「ちゃんとした夫婦役は初めて」と語り、演じたときの心情を素直に話してくれた。二人の熱演で、人生の切なさや、ひたむきな愛の強さや日々の営みの尊さを描いた、胸が熱くなる作品が出来上がった。お互いを思いやる気持ちが大切だということを教えてくれた、二人のほほえましい日本一の純情夫婦ぶりをスクリーンで観てほしい。

『秋深き』は11月8日よりシネマスクエアとうきゅうほかにて全国公開

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