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妻夫木聡
『感染列島』
実際にパンデミックが起きても、人のために役立つ道を選びたいと思います
『感染列島』妻夫木聡 単独インタビュー

取材・文:阿部奈穂子 写真:高野広美

新型インフルエンザが、いつどこで発生するか……というニュースが連日のように新聞やテレビを騒がせている昨今、衝撃的な作品が登場した。謎のウイルスがパンデミック(感染爆発)を巻き起こした日本で、見えざる敵と人類との壮絶な戦いを描いた映画『感染列島』である。数千万人が感染し、多数の死亡者を出す中、一人でも多くの命を救うため最前線で戦う救命救急医を演じた妻夫木聡に話を聞いた。

■ロケ地・新潟で日本酒の魅力に開眼

Q:本作への出演依頼を受けたとき、どう思いましたか?

ただのパニックムービーだったらやりたくなかったんです。そこで、「この映画にはどういう意味があるのか、監督とお話ししたい」と申し上げて、瀬々敬久監督とご飯を食べに行く機会を作ってもらいました。そのとき、瀬々監督が「単に危機的な状況から打開策を見いだしていくという人間の姿を描くのではなく、人間が命とどう向き合っていくかという話にしたい」とおっしゃったのがとても心に残りまして。それに台本を読んだら、命の共存が大きなテーマになっていて。これはぜひやってみたいと思いました。

Q:パンデミックに関する予備知識みたいなものはありましたか?

特にないです。ニュースでいわれている鳥インフルエンザとか、その程度の知識しかありませんでした。

Q:撮影期間は2008年3月から5月まででしたが、これは長い方なのですか?

今の映画界の大作系では普通かもしれません。撮影期間の3分の2は新潟に滞在していました。新潟市の中心にある、今は稼動していない総合病院を使ったロケが多かったので。

Q:新潟の思い出といえば?

お酒とご飯と魚が最高にうまかったですね(笑)。食べ過ぎちゃいけない、飲み過ぎちゃいけないって、私生活を制限するのが大変でした。演技と関係ない部分で相当努力していました(笑)。

Q:お酒はよく飲まれるんですか?

ええ、お酒は好きですね。新潟ではもっぱら日本酒を飲んでいました。普段はあまり日本酒は飲まないんですが、新潟の日本酒はうまかったなあ(笑)。東京で飲んでいる日本酒と全然味が違いました。いろいろな銘柄を飲んだのですが、ちょっとずつ味が違ってそれぞれにおいしさがあるんです。すっかり日本酒の魅力に開眼してしまった感じで……。カロリーが高いから気を付けなきゃいけないんですけど(笑)。

■命を救えない医師としての絶望感

Q:ドラマ「ブラックジャックによろしく」に引き続いて、医師の役でしたが

『感染列島』では、医者の力ではどうにもならない事態が起こってしまったわけで……。未知のウイルスに対する有効な治療法がないため、本作で医者がやっていることは対症療法でしかないんですよ。人間の中で一番、人の命を助けられる存在は医者なのに、手も足も出ないという絶望感を表すことを意識して演じました。医者としてというより、人間としてという思いで演じていたように思います。

Q:あるアンケートによると、ワクチンのないウイルスが発生した場合、約2割の医者が「仕事を放棄する」と答えたそうですが、それについてどう思いますか?

それが人間なんじゃないでしょうか? でも、勇気がありますよね。匿名のアンケートでしょうが、「医者だったら助けろ」といわれるのを覚悟で「放棄する」と答えているわけですからね。ただ、医者としての知識があれば、直接医療を施す以外に違うかかわり方もできると思います。パンデミックが起こったときって、病院だけがすべてではないと思うし、何があってもおかしくない状況になるわけですから。

Q:撮影では防護服姿が多く、大変だったのでは?

確かに暑かったし、きつくて動きにくかったですね。防護服を着ると顔にあとが残るので、防護服の日は防護服のシーンしか撮れないんです。菌を防ぐためにマスクも強力にできていて、その分息もしづらかったです。でもそういうのがすべて芝居に生きてくるので……。僕たち以上に、衣装さんやメークさんは大変だったんじゃないかなぁ(笑)。

■尊敬する監督と存在感たっぷりの共演者に囲まれて

Q:共演の檀れいさん、藤竜也さんの印象について教えてください。

檀さんとは今回、初めてご一緒したのですが、女性の強さの象徴みたいな雰囲気を持っている方で、たたずんでいるだけで太い柱みたいなものを感じました。芝居に対してもまじめで、見習うところが多かったです。藤さんとも今回初共演で、フィリピンロケで行動を共にしたのですが。藤さんには今まで培ってきた圧倒的な存在感がありましたね。また、一緒にお芝居していると、僕の表に出ていない部分をどんどん引き出してくれるんです。すごく助けられまして、一緒にやっていて気持ちが良かったです。

Q:瀬々監督はいかがでしょう?

監督は本当に口下手な方なんですが、演出に関しては細かい芝居もちゃんと見ていて、「ここはもうちょっとこういう感じで」と微妙な演出をしてくれて。素晴らしく尊敬できる監督だと思います。まあ、何を言っているのかわかんないことが多いけど(笑)。そんな監督が大好きです(笑)!

Q:本作の中で妻夫木さんの好きなシーンは?

難しいですね。あえてあげるとしたら最後の辺りですかね。ネタバレになっちゃうので、どういうシーンかは言いませんが……。

■地球にとってのウイルスは人間

Q:もし、実際にパンデミックが起こったらどうしますか?

そのときになってみないとわかりませんが、人として、今回の役と同じような思いでありたいと考えています。たとえ医者ほど役には立てないとしても、何かしら人の助けになれると思うんですよね。心の持ちようで人っていくらでも強くなれるんです。そういう意味ではどんな状況でも、積極的に他人の力になりたいと思います。

Q:最後に映画をこれから観る方にメッセージをお願いします。

人間にとってウイルスは巨大なもので怖いものだけれども、地球にとってのウイルスは人間なんですね。そういう意味で人間はどうあるべきか、人間として命をどう考えるべきか、この映画を通じて考えてもらえればうれしいです。

インタビューの間、心を和ませるポッカポカの笑顔で答えてくれた妻夫木。撮影の間も常に周りへの気配りを忘れなかったと聞いている。「どんな状況でも人のためになる道を選びたい」と語った正義感あふれる言葉は印象的だった。新型インフルエンザの発生はifではなくwhenの問題と言われる今。日本で発生した場合、映画に描かれたようなパニックが身近で起きる可能性は大きい。ただやみくもに恐れるのではなく、妻夫木が言うように、本作を観て人間としてどうあるべきかをじっくり考えてはいかがだろうか。

『感染列島』は1月17日より全国東宝系にて全国公開

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