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今週のクローズアップ /映像の魔術師、デヴィッド・フィンチャー監督

デヴィッド・フィンチャー監督最新作映画『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』はブラッド・ピットとの3度目のタッグを組んだ寓話(ぐうわ)的感動ストーリーだ。それまでのフィンチャー監督とは違った一面を見せる快心作『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』を紹介するとともに、フィンチャー監督の押さえておきたい作品をクローズアップ!
『エイリアン3』 ~すごく苦労したデビュー作!~

 シリーズ毎に期待の新鋭監督が起用される映画『エイリアン』シリーズ。映画『エイリアン2』のジェームズ・キャメロン監督からバトンタッチされたのは、本作が映画デビュー作となったフィンチャー監督。しかしフィンチャー監督へのバトンタッチは、レニー・ハーリン、ヴィンセント・ウォードという二人の監督を挟んでのことだった。


 混乱した製作状況の中に放り込まれた形となってしまったフィンチャー監督。脚本家もころころ変わり、製作のウォルター・ヒルまでがストーリーに手を出すなど、手放しで映画監督デビューを喜べる状況とはいえなかったようだ。シリーズファンの間でも評判は悪く、製作時の混乱がそのまま画面に現れたなど言われ放題の作品となってしまった。DVDで『エイリアン3 完全版』もリリースされているが、フィンチャー監督はこのバージョンの製作には関与していないという。


 踏んだりけったりの作品ではあるが、目も当てられない駄作というわけではない。前2作との差別化を図った宗教色強いダークなトーンやフィンチャー監督の代名詞ともいえる映像マジックなど、後々の活躍を期待させる原石的なものを見て取ることができる。ただし、この作品の評価がフィンチャー監督の才能を映画業界でさく裂させる時期を遅らせたのは間違いないだろう。

 

まったく! あの映画は思い出したくもない
デヴィッド・フィンチャー監督
Photo:Nobuhiro Hosoki

『セブン』 ~してやったりな一発逆転作!~

 本作は『エイリアン3』で苦汁をなめたフィンチャー監督が放った監督作映画第2弾であり、映画『羊たちの沈黙』に次いで1990年代を代表する傑作サイコサスペンスとなった作品。この2つの作品の登場で、サイコサスペンス系映画というジャンルが確立されたといっても過言ではない。


 本作は、デヴィッド・ミルズ刑事(ブラッド・ピット)とウィリアム・サマセット部長刑事(モーガン・フリーマン)がキリスト教の7つの大罪になぞらえた連続猟奇事件に挑むサイコサスペンス。しかしノワール調の映像と雨による閉塞感や、猟奇的でリアルな殺人描写、脚本家アンドリュー・ケヴィン・ウォーカーによるスリリングなストーリー展開は、ホラー映画さながらの恐怖感にあふれている。


 それまでB級ホラーのシナリオライターだったウォーカーは、某レコードショップでバイトしながら、本作のストーリーを2週間で生み出したそうだ。その後は映画『スリーピー・ホロウ』『8mm』などハリウッドスターを起用した作品のシナリオを執筆し、本作および、フィンチャー監督の映画『パニックルーム』にカメオ出演している。なお、本作はフィンチャー監督とブラピコンビの記念すべき第1作でもある。

 

わたしの存在感にも注目だ! モーガン・フリーマン

『ファイト・クラブ』 ~カルト作、ここに誕生!~

 ブラピ、エドワード・ノートンヘレナ・ボナム=カーター、ロックンローラーのミート・ローフなど、クセモノ俳優が一堂に会した世紀末的問題作である。ぶっ飛び小説家のチャック・パラニュークによる原作小説を、暴力とサブリミナル効果やさまざまな映像トリックを駆使して作り上げ、フィンチャー監督が特異な映像作家としてのポジションを確立した作品だ。


 ジャック(エドワード)と謎の男、タイラー(ブラピ)が起こした地下組織ファイト・クラブを軸に、徐々に世界崩壊へのカウントダウンが刻まれていく不条理ドラマの本作。ジャックが住んでいるマンションについて説明するシークエンスや、ジャックのオフィスのシーンで挿入されるタイラーのサブリミナルでの登場など、暴力的でアナーキーなストーリーに比例するかのように、フィンチャー監督の演出は挑戦的である。


 公開当時は賛否両論というよりも、批判的な意見が多数を占めていたが、時が経つにつれて再評価されていく作品であることは間違いないだろう。公開当時、本物ではないかと話題になったサブリミナルで挿入される全裸ブラピのチ○コは、もちろん作られたニセモノだ。

殴って、殴って、殴る! エドワード・ノートン
Bryan Bedder / Getty Images

『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』 ~若返るブラピの姿に字幕追えず!~

 フィンチャー監督とブラピのコンビ作第3弾は、映画『フォレスト・ガンプ/一期一会』の姉妹作品とも取れる、壮大な寓話的感動ストーリーだ。前作の映画『ゾディアック』でそれまでの売りだった映像トリックやとっぴな映像演出を封印したフィンチャー監督が、続いて正攻法の演出家としての力量を発揮した一本となっている。


 本作は、老人のような容姿で生まれ、時間と逆行するかのように若返っていくベンジャミン(ブラピ)とデイジー(ケイト・ブランシェット)の愛と、ベンジャミンがめぐる数奇な人生を描いていく。映画『華麗なるギャツビー』などの映画化で知られる小説家F・スコット・フィッツジェラルドの短編小説を『フォレスト・ガンプ/一期一会』でアカデミー賞脚色賞を受賞した名脚本家エリック・ロスが脚色。まるでベンジャミンをもう一人のガンプととらえ、ストーリーを編み出していったような雰囲気が作品全体を包みこんでいるのが面白い。第二次大戦、アポロ計画、ビートルズなどの歴史背景はもとより、ベンジャミンにかかわる人物一人一人のエピソードがとても充実しており、時にはベンジャミンが狂言回し的役割を担うなど、個性的な登場人物たちを織り交ぜながら、重層構造の物語を展開していく。


 本作の見どころともいえる、老人のブラピと若いブラピをスクリーンに登場させたのは、特殊メークアップアーティストのグレッグ・キャノムと視覚効果監修のエリック・バーバ。老人のブラピ、おじさんのブラピ、激若のブラピと、ストーリーが進むに連れて若返るブラピの姿は衝撃的だ。特に激若のブラピが登場すると、あまりの若返りぶりに字幕を追うのを忘れ、画面にクギ付けになること必至!


 なお、本作は第81回アカデミー賞で作品賞を含む13部門にノミネート。これは映画『タイタニック』の14部門ノミネートに次ぐ記録。11部門受賞した『タイタニック』に『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』はどう挑むのか……。『エイリアン』シリーズで明暗を分けた監督二人のバトルともいえる!?

『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』より
(C) 2008 Paramount Pictures Corporation and Warner Bros. Entertainment All Rights Reserved

文・構成:シネマトゥデイ編集部

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