シネマトゥデイ

寺脇康文
『悲しいボーイフレンド』
俳優業は何の保証もないし、ボーナスもない自由業です!
『悲しいボーイフレンド』寺脇康文 単独インタビュー

取材・文:平野敦子 写真:尾藤能暢

テレビドラマシリーズ「相棒」で人気を不動のものにした寺脇康文が、『悲しいボーイフレンド』で映画単独初主演を果たした。今回彼はごく平凡なサラリーマンとして生きながらも、どこかに心を置き忘れてきたような大人の男を体当たりで熱演。映画は、誰もが一度は経験する、初恋によって胸が締め付けられるような感情を思い出させてくれる一本に仕上がっている。気負うことなくサラリーマンを演じたという彼に、演じた役柄や初恋の思い出について大いに語ってもらった。

■単独映画初主演の気負いはない

Q:単独映画初主演の感想を聞かせてください。

別に主演だろうが、どんな役だろうが、やはりその作品を良くしようというだけでやっていますから、あまり今回も変な気負いはなかったですね。たまたま僕の演じた岩津という男を中心に動いているだけであって、主役だからどうこうというのはあまりなかったです。

Q:普通のサラリーマンを演じる上で、気を付けたことはありますか?

普段は明日のわが身も知れず、何の保証もないし、ボーナスもない自由業ですからね(笑)。祝日祭日関係ないですから。いや、サラリーマンだからということで気を付けたことはないですね。サラリーマンをやってみようと思ったこともないですし、まずできないと思っていましたから。ちゃんと毎日何時に起きて会社に行くのは、それはそれで根気のいる仕事だけれども、そういうのは僕に向いてないと思います。

Q:主人公の岩津はどのような人間だと分析されますか?

多分彼はものすごくネクラでもないし、人生をあきらめている人間でもないんですよ。ちゃんと仕事をやって成績を上げようという気持ちもあるし、人生を楽しもうという気持ちもある。だけれどもいかんせんこう周りとの壁が高いというか。四面を壁で塞がれていて、それはワイドショーなんかでよくある「わたしが覚せい剤に手を出したのは……」(声色を替えて実演)というような感じの壁で、何となく見えているんだけれども壁がある。必死にのぞかないと見えないぐらいの壁を自分で自分の周りに作っている男というイメージですね。それで今回の映画というのは、彼が見えていなかったヒモがかかっている箱を見つけて手に取って、空けるというイメージでした。

■初恋の人との感動の再会で新事実発覚

Q:この映画では初恋の苦い思い出が語られますが、寺脇さんの初恋の思い出を聞かせていただけますか?

僕は小学校2年生のときにある方を好きになりました。3年前ぐらいにテレビで自分の故郷に行くという番組があって、それで小学校に行ったときにその人と会えたんですよ。いやぁ~、あれはすごくいい時間でしたね! 当時は周りの友だちに「おれは彼女のことが好きだ」と触れ回ったり、スカートめくりをして泣かせたりしていました。友だち何人かと学校に自転車で集合して、ラブレターを渡そうと思って団体でその子の家まで行ったこともありました。ピンポンを鳴らしても誰も出て来なかったから、手紙をポストに入れて帰ったんです。でも、その返事が来なかったんですよ。それで「あぁ、ダメだったんだ……」と思って。

Q:何年ぶりにお会いになったんですか?

20年ぶりとかそんな感じですよ。まだ残っていた小学校の校庭で会ったときに2人で話をするという時間が持てました。彼女も当時の面影を残しながら、いい感じに年を取っているなぁ……という感じで。そのときに「なぜラブレターの返事をくれなかったのか教えてくれないか?」と聞いたんですよ。彼女はピンポンが鳴っていたのは知っていたみたいなんですが、窓からのぞいたらおれがいて、ほかにも友だちがいたから出なかったらしいんですよ。ラブレターも絶対にふざけていると思って返事を書かなかったと言っていましたね(笑)。「多少はおれのこと気にしてくれていた?」と聞くと、「そりゃぁ気にしていたわよ!」という答えを聞けました。

Q:ラブレターというのがすてきですね。

僕らの世代って、女の子を誘おうと思っても電話に親が出るわけですから。「はい、もしもし」ってお父さん出てきたら「あ、失礼しました!」と慌てて切っていました(笑)。

Q:では、苦い初恋の思い出ではなかったわけですね。

苦くはないです。やはりいい思い出というか、今思っても心がきゅんとなりますよね。人を好きになるということを初めて体験したわけですからね。男の子って好きな子をいじめるじゃないですか? 好きな子にちょっかいとか出したいんですよ。スカートめくりしたときには本当に泣かれてね。学校の帰りの会でその女の子が手を挙げて「今日寺脇君にスカートめくりされました。男子はそういうことをしないでください」と言われて。先生が「本当か、寺脇?」と聞くので「はい、やりました」と答えたんですよ。そうしたらみんなの前で先生に呼ばれて「女の子のスカートをめくったんだから、お前もズボンを下ろしてパンツを見せろ」と。おれは「やったー、目立てる!」と思ってやりましたけどね(笑)。

■水泳で鍛えて引き締まった体を披露!

Q:一曲だけ青春の思い出の曲を挙げるとしたら、何の曲ですか?

やはり衝撃的だったのは、ビリー・ジョエルの「素顔のままで」という曲ですね。やっと自分のお小遣いで物が買える年になり始めたころに、直感でビリー・ジョエルのレコードを買ったんですよ。今で言う“ジャケ買い”ですよ。「お、これ良さそう!」と思って何も知らずに買ったら、それが大成功だったという思い出があります。

Q:ラブホテルで無造作に寝ているシーンが好きだったのですが、体も引き締まっていていいですよね。何か特別な運動をされているのでしょうか?

一応水泳だけはやっていますね。もちろん若いときから劇団にいますから、ダンスやアクションはやっていたし、ランニングもやっていたんですが、「相棒」の撮影に入ってからは何もしなくなっちゃったんですよ。普段はTシャツ姿とかで楽な格好をしていたんですが、あるときスーツを着てみたら「何て醜いんだろう!?」と自分の腹を見て思ったんですよ。何だかぼよ~んとしていてね(笑)。これはいかん、何かしなければと思って。水泳をやってみたらこれが自分に合っていて、今でもやめずに続いています。もし自分の体を醜いとか思っていたら、この作品やってなかったかもしれないですね。脚本を読んだ段階で「やべぇ、裸になるシーンあるよ」とか思ってね。

Q:岩津のセリフにあるんですが、寺脇さんは「逃げない、優しい、ちゃんとした大人」になれたと思われますか?

まったく思いません(笑)! そんな立派な人間にはなれていないですよ。嫌なことから目を背けたり逃げたりしていますね。岩津が死ぬまでにそういう大人になりたいと言うのは、あれは多分絶対になれないと思っているからなんですね。それを追い求めながらでも頑張ることはできるから。最後の岩津の顔にその思いを込めたんですけれどね。あれで一応自分がしてしまったことや相手へのざんげといいますか、自分の中ではざんげのような気持ちで目をつぶるんだけれども、そこでがっくりするんじゃなくて、自分はここからやれることを始めていくよということなんです。人間ってダメな部分もいっぱいあるけれど、改善しようと思ったときがスタートでいいと思うので、遅すぎるということはないと思うんですよね。

あくまでもポジティブシンキングの寺脇と話していると、こちらまでその元気をもらうことができてとても心が軽くなる。人間誰しも“逃げない、優しい、ちゃんとした大人”になろうとは思っているのだが、現実はなかなかそう易しくはない。そうやっていつの間にか大人になってしまったわれわれを、少しの間だけ青春時代にトリップさせてくれる本作では、ダメだけれどもいとおしい主人公と一緒に心の旅をするつもりで楽しんでもらいたい。

衣装:セデュクシオン ドゥ ニコル / ニコル

『悲しいボーイフレンド』は2月21日よりシネマート六本木ほかにて全国公開

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