シネマトゥデイ

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ヒュー・ジャックマン
『オーストラリア』
人はみんなそれぞれ違うから面白いんだ
『オーストラリア』ヒュー・ジャックマン 単独インタビュー

取材・文:シネマトゥデイ 写真:秋山泰彦

バズ・ラーマン監督、ニコール・キッドマン、そしてヒュー・ジャックマンというオーストラリア出身の3人が、オーストラリアの歴史を描いた映画『オーストラリア』を完成させた。オーストラリアの壮大な自然を舞台にした本作で、タフで自由気ままなカウボーイを演じたヒューが、作品が描くテーマの一つであるアボリジニーへの偏見、さらには人種差別問題の解決策について語った。

■撮影初日に失神!? ハードな現場の舞台裏

Q:撮影はいかがでしたか?

8か月間にわたる長い撮影だったけど、とても楽しかったよ。普段オーストラリアに住んでいる地元の人だって行けないような、例えば広大な大地のど真ん中とか、素晴らしい場所で撮影したんだ。とてもいい機会をもらえたと思っているよ。

Q:撮影中、暑さで失神してしまったそうですね。

そう、失神したんだよ。あれはクールな体験じゃなかったなあ(笑)。僕の役の衣装が、すごく厚着だったんだ。夏冬兼用のジャケットを羽織っていたんだけど、そのジャケットがすごく分厚くてさ。それを着て馬にまたがって、初日の1カット目の撮影が始まるのを待機していたんだ。いつでも撮影を始められる状態で、牛たちがポジションに着くのを待っていたんだけど、なかなか言うことを聞いてくれなくてね。永遠に続くかと思うほどの待ち時間だった(笑)。

Q:馬にまたがったまま、待っていたんですか?

そう、馬にまたがったまま! スタッフに「あと何分?」と尋ねたら「あと5分」と言われてね。「そっか、もうすぐだ」と自分に言い聞かせたんだけど、30分待っても始まらないから、また「あと何分?」と尋ねたんだ。そしたらまた「あと5分!」と言われてね。それからさらに30分ぐらい時間が経過したときに、何だか背中に変な感触がしてきてね。あんまりフラフラするもんだから、「落ちる、落ちるよ!」と訴えたんだけど、「大丈夫だよ。姿勢を保って」と言われてさ。でもとうとう本当にふらついて、落ちそうになった瞬間に近くにいた男性が支えてくれたんだ。気温は50度くらいあったんだよ。真っ昼間だったしね。だからあまりいい撮影の始まりではなかったけれど、何とか頑張ったよ。

■ニコールはサソリのような女性?

Q:撮影中にサソリが出たと聞いたんですが……

僕も人からサソリが出たらしいと聞いたんだけど、全然知らないんだよね。で、ニコールが僕を救ってくれたとかいう話でしょ? でもそれ、ガセネタだと思うよ! だって、その現場にいたと言われている僕自身が、サソリを見てないんだよ(笑)!? サソリのようなニコール、っていうのを聞き間違えちゃったのかな!? なんてね、うそうそ(笑)!

Q:あなたが演じたのは“ドローヴァー”(牛追い)の男であって、本当の名前がないですよね? 本当の名前は何だったんですか?

教えてあげられるけど、あえて教えないでおくよ! 実は僕の役名をアシュレイ(ニコール)に名乗るシーンを撮影したんだけれど、そのシーンはカットされてしまったんだ。だからあえて不明ということにしておくよ。当てられたらちゃんと答えてあげるけど、当てられるまで待っていたら、このインタビュー時間は名前を当てるだけで終わっちゃうからね(笑)。

■ハリウッドのいいところは差別がないところ

Q:ハリウッドの俳優とオーストラリアの俳優との違いを感じたことはありますか?

ハリウッドにもオーストラリア出身の役者や、世界各国出身の人たちがたくさんいるからね。みんなすごく歓迎してくれるんだ。だからこの人は超ハリウッド! みたいな感覚はあまりないかも。逆に典型的なハリウッド俳優と思う人は、例えば誰?

Q:トム・クルーズとか?

トム? そう。じゃあオーストラリアの俳優である僕とハリウッドの俳優であるトムの違いと言えば、トムはいつの時代でも誰もが認める永遠のスターって感じで、僕はそれよりちょっと格下の俳優ってぐらいかな!?

Q:そんなことはないですよ!

ありがとう(笑)。でも面白いことに、違いを感じたり、人種の差別がなかったりするところがハリウッドなのさ。同じオーストラリア人の俳優でも、ラッセル・クロウ、ケイト・ブランシェット、ニコールにしたってみんな個性がバラバラでしょ? まあオーストラリア俳優とハリウッド俳優の唯一の違いを挙げるならば、僕らはハリウッド俳優の半分のギャラで仕事を受けるってことぐらいかな(笑)。

■アボリジニーの少年からの感動的な手紙

Q:この映画では、アボリジニーに対する差別が描かれていましたが、そういう差別はいまだに色濃く残っているのでしょうか?

あると思う。昔ほどではないけれど、差別問題というのは今でもやっぱりある。実際、つい1年前に、ようやくオーストラリア政府がアボリジニーに対して今まで行ってきた仕打ちを謝罪したばかりなんだ。それがたった1年前なんだよ。彼らの傷が癒されるには、まだまだその辺の改革がこれからも必要だと思うね。でもこの作品は、確実に差別を受けているアボリジニーたちの思いを世界中に伝えることに役立ったと思う。

Q:実際に、この映画がオーストラリアの人々に何らかの影響を与えたことを実感することはありましたか?

とてもうれしいことが一つあったんだよ。この映画が公開された後、12歳のアボリジニーの少年から一通の手紙をもらったんだ。彼は学校の先生に連れられて、授業でクラスのみんなと一緒にこの映画を観に行ったんだって。その手紙にはね、その映画を観た翌日、彼は生れて初めて自分がアボリジニーであることを誇りに思いながら、胸を張って登校することができたと書いてあったんだ。それってすごく素晴らしいことだと思ったよ。

■差別をなくすためにしていること

Q:あなたが司会を務めたアカデミー賞で、ショーン・ペンが同性愛者への差別をなくすようスピーチをしましたね。とても感動しましたが、あなた自身、差別をなくすには何が一番大切だと思いますか?

僕は、どうして人種差別があるのか、本当に理解できない。でも、きっと自分たちの考えにすがって、ほかの人種や文化についてわかり合おうとしなかったり、認めることができなかったりする人たちの考えから差別が生じるんだろうね。僕は、人はそれぞれみんな違うから面白いんだと思うんだ。自分の方があの人より素晴らしいとかって誰が決めるんだ? いろいろなことをさまざまな文化や、違う人種の人々からお互いを学べば、自然と人種の差なんてなくなるし、感じなくなると思う。結局みんな同じ人間なんだと理解できるようになるはず。すべて一つから始まり、そこから分裂して独自に発達していっただけなんだから。

Q:素晴らしい考え方ですね。

僕の子どもは二人ともミックスなんだ。だからよく8歳の息子に言うんだけど、肌の色が人と違うというのは、目の色が違うことと何ら違わないんだよって。目の色の違いだったら何も差別もなく受け入れるのに、肌の色となると人々が大騒ぎするんだよね。僕ら親の世代が、そういう教育を子どもたちにきちんとしていけば、差別はいつかなくなるんじゃないかな。

Q:アカデミー賞の司会や、この映画の出演。引っ張りだこのあなたですが、今後の予定を聞かせてください。

わからない! 次に挑戦するのは、う?ん、アニメとか(笑)? 次の仕事は今のところ本当にまだ何も決めていないよ。今は少しゆっくりしたいな。本当にここ数年は忙しかったからね。だから今は、いろいろな角度から自分の今後について考えてみようと思っているよ。今はとにかく明日からスキーに行くことを楽しみにしているんだ。日本の北の方に行くんだけど、ずっとやってみたかったことなんだ。まずはスキー旅行を楽しんでから今後のことを考えるよ。

スクリーンで見るよりも、ずっとチャーミングなヒューはスタッフの誰に対しても心配りを忘れない、とてもすてきな男性だ。スタッフ一人一人の名前を覚えるという彼は、周りの人たちからも愛されていることが手に取るように感じられた。本作ではタフガイを演じていた彼だが、実際はとても明るくおだやかな人物。人に優しくナイスガイな一面が、ハリウッドで愛されている理由の一つに違いない。アカデミー賞では、過去最高の司会ぶりを見せてくれたヒューのこれからに期待したい!

『オーストラリア』はTOHOシネマズ スカラ座ほかにて全国公開中

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