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今週のクローズアップ / グラフィックノベル界の魔法使い、アラン・ムーアを知ろう!

映画『ドーン・オブ・ザ・デッド』『300 <スリーハンドレッド> 』のザック・スナイダー監督が、3度目にとうとうやってくれた! 映画『ウォッチメン』は、これまでのグラフィックノベルの実写映画化作品の頂点に立ったといっても過言ではない作品だ。そんな傑作映画の原作を生み出したのは怪人アラン・ムーアである。
アラン・ムーアとは……

 いわゆるアメコミとは一線を画し、テーマや内容が大人向けで芸術性の高いグラフィックノベルの頂点に君臨する魔法使いアラン・ムーア。その容姿は映画『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズに登場するガンダルフそのもので、なぜ彼がキャスティングされなかったのか不思議でならない。髪の毛はボサボサで物書く人ではなく、まるで一昔前のヘヴィメタバンドのギタリストのよう。目はギョロッとしており、特殊メークをほどこされたホラー映画の出演者といわれても違和感がない。


 だが、アランのすごいところは見かけだけではないのだ。もともとは風刺漫画家だったが、コミックの原作に専念してからというもの、数々の傑作グラフィックノベルを世に送り出してきた。切り裂きジャックをテーマにした「フロム・ヘル」、第三次世界大戦を経て独裁国家となったイギリスを舞台に、テロ活動を行う謎の男Vに出会った少女の姿を描く「Vフォー・ヴェンデッタ」などは反体制的で不気味ながらも、知的なストーリーテリングと芸術的作風が高く評価されている。そのほかにも古典小説の有名キャラクターたちが集う「リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン」などで、アランは世界中に熱狂的なファンを生み出している。最近では映画『フロム・ヘル』『リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い』『Vフォー・ヴェンデッタ』など映画化された作品も多い。

 

オレ以上に謎めいた野朗だな……
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アラン・ムーアの映画化作品

 『フロム・ヘル』
 娼婦たちを次々と殺し、1888年のロンドンを震撼(しんかん)させた切り裂きジャック事件を、アランがリサーチにリサーチを加え、大胆な解釈でグラフィックノベル界に送り出した問題作。アラン原作の記念すべき映画化第1弾でありながら、映画は原作の良いところをすべて殺した、ジョニー・デップ主演の典型的スター作品となってしまった。原作にはない設定などの脚色がほどこされ、切り裂きジャックが犯行を行う際の描写などを大幅にカット。結果、アランと作画のエディ・キャンベルによって約10年もかけて完成されたグラフィックノベルは、映画業界に踏みにじられた形となった。


 『リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い』
 アラン原作の「リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン」を映画『ブレイド』のスティーヴン・ノリトン監督が映画化し、興行的にも大失敗した作品。当初は続編も予定されていたようだが、興行成績の不振でそれも立ち消えになってしまった。原作に忠実なのは登場するキャラクターたちだけで、ストーリーはほとんど別物といっていい。キャラクターにはすべて出典があり、ネモ船長やジギル博士、透明人間、ドラキュラなど一堂に会するのは画的に面白いが、単なる娯楽一辺倒になってしまい、アランならではのゴシックで残酷なテイストはどこにも見当たらない。


 『Vフォー・ヴェンデッタ』
 映画『マトリックス』のアンディ、ラリー・ウォシャウスキー監督が脚本を務め、『マトリックス』の助監督だったジェームズ・マクティーグが長編デビューを飾った作品。公開当時、独裁国家に対するテロ行為というテーマや、一発撮りで行われたナタリー・ポートマンの断髪シーンが話題となった。これまでのアラン原作映画に比べればビジュアルなども含めて合格点をあげてもいい完成度だが、映画化作品を一切認めないアランは、本作に対しても「わたしには関係ない」とコメントしている。

 

原作の方が面白い……? 『フロム・ヘル』より
JURGENVOLLMER/20THCENTURYFOX
/TheKobalCollection/WireImage.com

さ、寒い! 『リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い』
JURGENVOLLMER/20THCENTURYFOX
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ナタリー、後ろ!
Dave M. Benett / Getty Images

ピカイチ!『ウォッチメン』

 ヒーロー活動が禁止されて数年後の1980年代のアメリカを舞台に、何者かによるヒーロー殺人と刻一刻と迫る核戦争の脅威を描いた本作。アランの原作映画が次々と惨敗していく中、フランク・ミラー原作のグラフィックノベル「300」を映画化し、大成功を収めたザック監督がついにやってくれた!


 学生時代に原作を読んだことがあるからこそ、「ウォッチメン」の世界観を描くのがいかに難しいか理解していたというザック監督。だがザック監督はオリジナルストーリーで進められていた企画をストップさせ、原作に忠実に描くことを条件に監督を引き受けた。世界中に熱狂的ファンを持つ原作に対して真っ向から勝負を挑んだのである。ザック監督は原作を基に、絵コンテを描きまくり、一瞬しか映らないような小道具にも気を配ってアランと作画のデイヴ・ギボンズが作り出した世界を表現。また、原作では背景として語られていた部分を映像できっちり見せるなど“ウォッチメンワールド”をさらに進化させた。


 キャスト陣も魅力的な面々がそろった。第1の殺人の犠牲者コメディアンを演じるのはジェフリー・ディーン・モーガン。ジェフリーは現場に入った途端、スタッフたちの異常なほどのやる気に恐怖を覚えたそうだ。その殺人事件を“ヒーロー狩り”と断定し、独自に捜査するロールシャッハは映画『リトル・チルドレン』でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされたジャッキー・アール・ヘイリー。彼はロールシャッハを演じるならこの人というファン投票で1位になり、自ら監督に売り込みをかけて役をゲットした。体重を11キロ増やしてナイトオウルを演じたパトリック・ウィルソン、そして紅一点のシルクスペクターを演じたマリン・アッカーマンなど、無名ながら魅力的なキャストが作品にリアリティーを与えている。


ザック監督お得意のスローモーションで描かれるアクションシーンはもちろんのこと、キメるところはキメる狙い通りの構図はさすが。音楽もイカしており、ボブ・ディラン、サイモン&ガーファンクル、ジミ・ヘンドリックスらの楽曲が、それぞれの場面を盛り上げていく。作画を担当したデイヴは撮影現場を訪れ、スタッフたちのやる気と完ぺきなまでの世界観に感激し、セットの一部にサインを残したほどだ。これまでの映画版を認めていないアランは本作をどう見るか? ここが一番気になるところである。


 映画『ウォッチメン』は3月28日より丸の内ピカデリーほかにて全国公開







大傑作映画『ウォッチメン』より
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文・構成:シネマトゥデイ編集部

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