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低予算映画を成功させるテク1:「1にアイデア、2にアイデア」

みなさんは1999年に話題になった『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』というホラー映画を覚えていますか? 森の中に放置された手荷物の中から発見されたビデオテープが……という触れ込みで公開され、行方不明になった若者が実際に撮影した恐怖のドキュメンタリーという設定で大ヒットを記録した自主映画です。

『パラノーマル・アクティビティ』も『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』同様、「出演者が撮ったドキュメンタリー」という売り文句で宣伝されていますが、これは高価なプロ用フィルム・カメラや照明器具は予算がなくて使用できないので、市販ビデオカメラで手持ち撮影……というのが本当の理由。でも不屈の低予算映画の底力は、この弱みを逆手にとり「素人が撮った激生ビデオ!」と言って、アマチュアなところを売りにしてしまうところ。良いアイデアは億単位の予算よりも強いのです!

低予算映画を成功させるテク2:「ありえなさそうでありえそうな怖さ!」

映画『パラノーマル・アクティビティ』のあらすじは至ってシンプル。ヤングカップルのミカとケイティが引っ越して来た家で、真夜中に不気味な超常現象が起き始めます。おびえるケイティをよそに、現象を面白がってビデオを設置し、幽霊の撮影を試みようとするミカ。悪化していく真夜中の怪奇現象におびえたカップルはついに専門家の助けを呼ぶものの、専門外の悪霊パワーだと判断されて見放されてしまいます。夜な夜な激しさを増す超常現象は、ケイティ自身にも現れ始め、家に閉じ込められたような状態になってしまうカップル。二人の運命はいかに……!?

このいかにもどこにでも居そうなカップルが、いかにもありそうな家で、ジリジリと恐怖のどん底に落ちていく様子、つまりありえなさそうでありえそうな怖さがとにかく恐怖をあおるのです!

低予算映画を成功させるテク3:「撮影現場は撮影料のかからない一か所に絞る!」

『パラノーマル・アクティビティ』は制作費の少なさ、そしてそれに対するヒットの度合いが『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』と似ているため、頻繁に比較されています。「収入を上げるには製作にかかるコストを抑える」というのは、映画作りだけでなく成功するビジネスにおいての黄金のルールです。では、『パラノーマル・アクティビティ』をはじめ低予算ムービーは、一体どうやって製作コストを最少限に抑えているのでしょうか?

『パラノーマル・アクティビティ』に関して言えば、あらすじを読んで気づかれた方もいるかもしれませんが、この映画の舞台はほとんどが家の中となっています。外の撮影もほんの一部ありますが、それすら舞台となる家の前で行われています。さらに、実はこの映画の撮影に使用されている屋内は、すべてが『パラノーマル・アクティビティ』の監督・脚本・編集を手掛けたオーレン・ペリ氏の自宅! 『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』もほとんどが森の中で撮影されていましたが、とにかくお金のかからないロケ場所を一か所選ぶ! これが低予算映画の重要なポイントなのです。

アメリカでは撮影をするというと、ほぼすべての場所がロケ料を請求してくるばかりか、万が一損害が起きたときのために撮影保険の提示を求めてきます(この保険料がまたバカになりません……)。ロケ場所が請求してくる料金はピンキリですが、日本円にして数十万円というところも多く、これがまた公演や公道など公共の場所となると、警官をガードにつけるのが決まりだったり、はたまた発電機使用の際には消防隊員の監視も必要だったりして、お金が湯水のように出て行くわけです(この警官や消防士たちの時給がまた結構かさみ、最低勤務6時間、8時間以上の超過勤務は時間給かける1.5倍から……といろいろな規則があって頭痛のタネ)。気が付くと、すでにこの時点から予算がかさみ始めているわけです。つまり映画製作を低予算にしたい場合は、自分の家や友達の家、とにかく撮影料や保険が必要ない場所を選んで、人件費やスタッフにかかる食費も最小限に抑える! という努力が必要なわけです。

低予算映画を成功させるテク4:「撮影機材は自前、出演者も最小限にとどめる!」

『パラノーマル・アクティビティ』の出演者は、なんとたったの4人ですが、これにも大きな理由があります。インディーズ映画の撮影では給料が出なくても必ず出るのがランチで、スタッフの人数がかさむと同時にかさんでくるのがこのときのケータリング代になります。スタッフの人数が少なければ少ないほど食費が助かるために、撮影隊の人数コントロールも低予算映画を作るときには大きな留意点となります。

また、撮影に必要なカメラをはじめとする機材のレンタルとそれにかかる機材保険の費用もバカになりません。機材のレンタルには必ず撮影保険の提示が求められるため、保険への加入は避けられない事項となります。このため、機材を自分でそろえているフィルムメーカーは制作費セーブの面において非常な強みとなります。

『パラノーマル・アクティビティ』は制作費がたったの1万5000ドル(約135万円・1ドル90円計算)にも関わらず、封切後7週間目にして9743万ドル(約87億7000万円)の売り上げという冗談みたいな興行収入を記録し、現在、業界内外で話題沸騰中です。1億ドルの制作費が普通になってきているハリウッド映画業界でこの業績はまさに快挙(怪挙!?)。 『パラノーマル・アクティビティ』の制作費と収入の比率は『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の持っていた記録を塗り替えて映画界歴代トップに躍り出たのです!

低予算映画を成功させるテク5:「有名人に観てもらって気に入ってもらう!」

さて、いよいよ最終項目ですが、これが一番の難関であり、大体のフィルムメーカーはこれがないために世に出られずにいるとも言えます。それは、有名人のバックアップ!

オーレン・ペリ監督は『パラノーマル・アクティビティ』を、まず数か所の大学で恐怖の深夜ロードショーとして公開し、話題づくりをしてから映画祭に出品したのですが、その過程で作品がドリームワークスに勤務する某プロデューサーの目に留まったのです!

ドリームワークスと言えば天下のスティーヴン・スピルバーグが経営するスタジオ。映画を気に入ってくれたプロデューサーというのはスピルバーグ氏の部下というわけです。ついには『パラノーマル・アクティビティ』のDVDがスピルバーグ氏の手元にめでたく届き、映画界随一の後ろ盾を得た『パラノーマル・アクティビティ』の前途は、洋々たるものとなったのでした! ちなみに、本作を見たスピルバーグ氏の怖がり方は尋常ではなかったのだとか……(笑)。

何はともあれ、何があるかわからないこの映画業界。『パラノーマル・アクティビティ』のような状況を経験するのは宝くじに当たるようなものですが、とはいえ世のインディーズ・フィルムメーカーの皆さん、あきらめちゃいけません! 宝くじだって買い続けないと当たらないように、映画作りだって続けていないと当たらないわけですから。みなさん、ネバー・ギブアップですよ!
(取材・文 神津明美 / Addie・Akemi・Kohzu)

About Addie

高校留学以来ロサンゼルスに在住し、CMやハリウッド映画の製作助手を経て現在に至る。アカデミー賞のレポートや全米ボックスオフィス考など、Yahoo! Japan、シネマトゥデイなどの媒体で執筆中。全米映画協会(MPAA)公認のフォト・ジャーナリスト。

『スター・ウォーズ』inコンサートで、一緒に行ったボーイフレンドにイウォークの展示物の前でプロポーズされちゃいました! 我ながらオタクっす(笑)。

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