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船越英一郎、深田恭子
『ウルルの森の物語』
優しさと厳しさ、自然には両側面ある
『ウルルの森の物語』船越英一郎&深田恭子単独インタビュー

取材・文:鴇田崇 写真:高野広美

2007年の大ヒット作『マリと子犬の物語』のスタッフとキャストが再び顔を合わせ、親子で安心して観ることができる実写映画のコンセプトで誕生した『ウルルの森の物語』。雄大な北海道の自然を背景に、オオカミの赤ちゃんと幼い兄妹の心温まるきずなを描いた感動作に出演した船越英一郎と深田恭子に、愛くるしいオオカミのウルルとの共演、身近なエコ活動など、さまざまな話を聞いた。

■小さな体に大きな心を持ったウルルとの楽しい撮影!

Q:2年前の『マリと子犬の物語』の大好評を受けて今回の作品が生まれたそうですが、どのような感動の声が届いていたのですか?

船越:一番多かったのは、勇気や希望を与えてくれたということでしょうね。人は自分のためではなく、愛する人のためなら本当に大きな力を発揮するということをメッセージとして感じていただいた。そういう声が圧倒的に多かったと思いますね。

深田:わたしも『マリと子犬の物語』を観て感動した一人です。自分でわんちゃんを飼って、初めて一緒に観た映画が『マリと子犬の物語』でした。『マリと子犬の物語』はとても悲しいお話だったので、泣いてしまいました。今回そのチームに入れていただいて、とてもうれしいです。

Q:深田さんは動物たちとの共演が、今回が初めてだったそうですね。

深田:動物ものに興味がなかったわけではないですが、撮影はもっと大変だと思っていました。でも、まったくそんなことはなかったです。

船越:ウルルは頭が良かったですからね。小さい体に大きな心を持っているやつで、撮影で困ったことなんかなかったですね。

Q:ウルルはウルフドッグという犬種の子犬だそうですね。

船越:ドッグトレーナーの宮(忠臣)さんは大ベテランで、『南極物語』『ハチ公物語』『クイール』、もちろん『マリと子犬の物語』もそうですが、犬が出てくるほぼすべての日本映画にドッグトレーナーとして携わってきた人です。日本を代表するドッグトレーナーの宮さんですら、ウルフドッグは初めてだったそうです。オオカミは警戒心が強くて神経質。宮さんのポリシーは動物にストレスを与えないことで、伸び伸びとやらせることができるかどうかを心配されていましたが、ウルルは本当にいい子で、あっという間に僕らに懐いてくれましたね。

■梅雨の北海道が与えてくれた、意外な恩恵とは?

Q:また、今回は兄妹役を演じられたわけですが、共演の感想はいかがですか?

船越:こんなに老けた兄貴で申し訳ない(笑)! この映画は本当にきれいな映画で、無垢(むく)な心や無垢(むく)な自然などが一つのテーマになっていると思いますが、恭子さん自体が大人の汚れを持っていない女性なので、彼女のイノセントな魅力が、この映画でとても大きな役割を果たしてくれたと思いますね。今まで父娘として共演したことはありましたが、それが突然妹になるということで、僕も何とか若返りを図ろうとして苦心しましたが、撮影をしているうちに外見のアンチエイジングなどいらないということを彼女に教えてもらったような気がしました。きちんと兄妹を演じたと思いますが、親子にしか見えなかったらスイマセン(笑)!

深田:船越さんは本物の獣医さんみたいでしたし、とにかく何でも知っている人(笑)。現場でいろいろなことを教えていただきながら、毎日楽しませていただきました。それと、船越さんはいいお父さんのイメージが強いので、ダメなお父さんを演じている姿が不思議な感じがしました(笑)。

船越:僕が演じた大慈は、ダメダメなお父さんですからね(笑)。獣医としては頼りがいがありますし、自分の生き方をロマンチックに貫いているような男に見えますが、わがまま(笑)。大人の男としては未成熟で、父親としては稚拙な感じ。ただ、別れて暮らしていた子どもたちと一生懸命に向き合おうとするので、父親の成長物語としても観ることができます。僕としては演じがいのある楽しい役でした。自分にもそういうところが多々ございますので、重ね合わせていました(笑)。

Q:船越さんがいる撮影現場は確かに楽しそうですね。

深田:子どもたちはクイズを出してとか、怖い話をしてとか、いろいろな要望を出すものじゃないですか(笑)。船越さんはそういうことにすべて応えちゃう(笑)。テントの中で懐中電灯を持ちながら怖い話をしたり、いろいろなナゾナゾがどんどん出てきたり、北海道のおいしい食べ物の情報を教えてくださったり。天気が悪い間もとにかく楽しく過ごすことができました。

船越:とにかく天気が悪かった(笑)。北海道は梅雨がないって言いますよね。皆で安心しきっていましたが、今年の北海道は梅雨しかなかった(笑)。毎日雨に泣かされましたが、自然は優しいだけじゃなく厳しいもの。今回は北海道の自然にきちんと向き合ったので、鍛えられました。でも家族の話なので、皆とご飯を食べたり、コミュニケーションを図ったりして、演じる僕たちはきずなを作らないといけなかった。そんな時間があるかなと思っていたら、ヒマだらけで、きずなはどんどん深くなる一方でした。今思えば、自然が与えてくれた恩恵だったのかもしれません。

■サスペンスでもアニメキャラでもない、普通の人の役が一番難しい

Q:深田さんは人生初のショートカットで、ボーイッシュなカメラマンを演じました。記憶に新しいドロンジョ様とはまったく違う正反対の役柄ですよね?

深田:今回、ナチュラルに普通のお芝居をすることが一番難しいと思いました。自分がウルルと、より接するような役柄ならまだしも、事態を冷静に見守る役割でしたので、役に入りすぎるのもいけなかったんです。そういう面ではいろいろと考えることが多かったですね。

Q:また、本作はサスペンスとも違う作風ですが、船越さんにとって何か工夫されたことは?

船越:僕はドロンジョ様を演じたことがないので(笑)、そういう意味では大体普通の人を演じていますけど、僕も日常を切り取っていく演技を見せるということが、実は一番難しいと思います。演技をしていることをわからせてはいけないので、お客様には自然に感じていただかないと感動は届かない。そこが難しいですね。テクニックでどうにかなるものでもないと思います。

深田:いろいろなキャラクターを演じるお仕事をしていると、何が普通なのかよくわからなくなってしまうので(笑)、日々いろいろな物事をよく見るように心掛けています。普通にしていて伝わらなかったら、わたしが間違っているということなので、そこは考えています。

船越:およそ俳優は自分が演じる役柄の振り幅が大きければ大きいほど、やりがいを感じるものですので、そういう役柄を演じられること、そういう状況にあるということは幸せなことですね。

■妻がエコロジスト? 身近なエコ活動を伝授!

Q:北海道ロケで大自然の環境に直接触れて、改めて感じたことはありますか?

船越:この映画のセリフとして直接劇中に出てきますが、われわれ人間にできることは自然を尊んで慈しむことしかないということでしょうか。僕たちは自然の恩恵を被って生きているので、自然からもらわないものは何一つないわけです。食べ物、太陽、それこそ木々がなければ風も吹かない。そういうことをついつい忘れがちですよね。人間はふそんな生き物なので、自分たちが一番だと思っているけど、それではダメだということがこの映画のエッセンスとしてあると思います。

深田:今回の撮影では自然が破壊されていると直接感じるような場所には行っていないので、そういう現場を見てはいませんが、この映画を観たらこれほどきれいな場所がまだ日本には残っているので、皆さんにも自然を大切にしていこうと思っていただけたらうれしいです。

Q:日常的に実践できる身近なエコ活動をされていますか?

船越:僕の家内はエコロジストなものですから、山ほどありますよ。化学洗剤を使わないとか、掃除はお酢や重曹でとか、自然に優しいものを使っていますね。僕が実践しているのは、歯磨きをリビングでするということ。洗面所で磨くと水を出しっ放しにしてしまいますが、リビングでやれば大丈夫! 後は電気をこまめに消すなど、細かいですが意外に大事ですよね。

深田:わたしは近いところへ移動する際はなるべくタクシーなどを使わずに、自転車によく乗っています。ロードレース用の自転車を持っているので、自転車の移動は多いほうだと思います。

船越:アクティブじゃん!

Q:セットなどの屋内の撮影とは違って、大自然の中でのロケ撮影は気持ちの高ぶりが違いそうですね。

深田:ロケだと逆にその場の雰囲気に流されちゃいそうなので、ロケだからこそ自分のプランをしっかりと持つようにしています。その場の空気に流されてしまうような気がして、今回も出来上がりを観るまで不安でした。スタジオだと考える時間がありますが、ロケはこの天気で今行きます! みたいなことがあるので、いつでもいい状態にしておかないといけないんです。

船越:スタジオだと俳優がメインになるけど、ロケーションに出れば、メインが自然であったり、動物であったりしますね。僕たちはいつでもアイドリング状態でいて、日が出た! 行くぞ! となったら、フルスロットルで行く(笑)。そういう緊張感の中に自分を常に置いておかないといけない。自然は厳しいと言いましたが、優しさと厳しさ、自然には両側面ありますね。

Q:船越さんの動物シリーズですが、第3弾があるとしたら、どんな物語がいいですか?

船越:ここまで来たら次は『E.T.』ですかね(笑)! ただ、今回の『ウルルの森の物語』もそうですが、単純な動物映画というよりも動物と家族のきずなを描いている映画なので、子どもたちと一緒に安心して観られる映画が、お正月に毎年必ずあるということになればいいと思います。『ウルルの森の物語』のようなすてきな映画が、毎年作られたらいいと思いました。そこに自分がいられたら、俳優としてこれ以上の幸せはないと思います。

仕事中心で私生活に無頓着な兄と、兄の二人の子どもの母親代わりとして優しく接する妹を演じた船越と深田。幼い子どもたちがオオカミの赤ちゃんと出会い、成長する姿を見守る役を通じて人間にとって自然がいかに大切かを再認識したと口をそろえる。家族のきずなや環境問題が叫ばれて久しいが、本作を観て、込められたテーマを今一度深く感じ取ってみてはいかがだろうか。

(C) 2009 「ウルルの森の物語」製作委員会

映画『ウルルの森の物語』は12月19日より全国東宝系にて全国公開

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