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マイケル・ムーア
『キャピタリズム マネーは踊る』
誰も僕を止めることはできないし、黙らせることもできない
『キャピタリズム マネーは踊る』マイケル・ムーア監督 単独インタビュー

取材・文:シネマトゥデイ 写真:尾藤能暢

経済大国アメリカに対して、映画という手段を使って警鐘を鳴らし続けているアメリカ人監督、マイケル・ムーアが映画『キャピタリズム マネーは踊る』のプロモーションのため初来日を果たした。ニュースでは決して見ることができない、資本主義国家に生きるアメリカ国民の悲惨な現状、そして金持ちのみが富を増やしていくウォール街の真実を、得意のアポなし取材で赤裸々に描いたマイケル監督。自らが生まれ育ったアメリカへの思い、最も過激な反戦家マイケル・ムーアであることの苦労を語ってくれた。

■バラク・オバマは僕の人生において理想の大統領

Q:今日は朝からずいぶんお忙しいようですね!

オバマが今朝早く(日本時間12月2日朝)に、米軍についての発言をしたんだ。彼を支持してきた人間として、本当に悲しいニュースだった。ご存じのように、僕はアメリカ国内の反戦運動家の一人なのにも関わらず今東京にいるから、1時間後に東京からCNNの「ラリー・キング・ライブ」に出演する予定なんだ。僕は、反戦活動をずっと続けているから、今こそ自分の意見をきちんと話さなければならないからね。今も、ちょっとメールしていいかな(笑)? ごめんね(突如メールを始めるムーア監督)。よし! 終わった。待ってくれてありがとう。

Q:あなたが理想としているアメリカ大統領は誰ですか?

僕の人生において、最も素晴らしい大統領はバラク・オバマだ。僕が生きてきた55年間で彼が一番だ。だから、今後もそうあり続けてほしい。市民のために最善を尽くさなければならないと思っている大統領が必要だ。大統領のために、市民が最善を尽くすべきだと思っているような大統領ではなくね。

Q:今日は、彼を信じてきたあなたにとって、とても衝撃的な日だったと思いますが、まだ信じ続けるということですか?

そうだね……。今朝この話を聞いたときは、本当に悲しかったけど、でも僕はまだ彼を信じている。アメリカでは、彼が天皇陛下に深々とおじぎをしたことで、ものすごいバッシングが起こっているけど、僕が好きなところは彼のそんなところなんだ。素晴らしいことだと思う。つまりそれは、日本の国民に敬意を払った行為だと思うから、オバマ大統領が僕の国の大統領であることを大変誇りに思ったよ。それは、世界中の方々に敬意を払っている証拠だと僕は思っている。だから、僕はまだ彼を信じたいと思っているよ。

■マイケル・ムーアとして生きるのはつらい

Q:世界的に注目され、賞賛を浴びている監督ですが、マイケル・ムーアであることのつらさはどんなときに感じますか?

僕自身であることの最悪なデメリットは、僕を支持してくれている人たちと同じくらい多くの人々に、常に攻撃されていること。そして、一部の心ない人たちから、常に脅迫を受けていること。まだこうして存在していることに、自分でも驚くことがあるよ。

Q:これまで、どんな恐ろしい目に遭ってきたのでしょう? 一番恐ろしかったのはいつでしたか?

怖い思いは何度もしている。家を爆破すると脅迫されたこともあったし、街を歩いていて突然殴られたり、ナイフやパイプで襲い掛かられたり……。熱いコーヒーを投げ付けられたこともある。自分の意見を言うことは、本当に大変なことだと思うよ。

Q:もう一度生まれ変わっても、あなたはマイケル・ムーアという生き方を選びますか?

正直言って「社会の敵! パブリック・エネミー・ナンバーワン!」といった立場は決して楽しいものではない。もし、僕が人生をやり直せて、仕事を選べることになったら恐らく今の仕事は選ばないと思う。マイケル・ムーアであるということは、それだけ大変な仕事なんだよ。

■僕はアメリカ人で、アメリカを愛している

Q:アメリカ人であるからこそ、アメリカを今批判しなければいけない。それはつらいことですね。

そうだね、こんな映画を作っていても、僕はアメリカ人で、アメリカを愛している。アメリカ以外には住みたくないとさえ思っている。でもアメリカの現状は目を覆いたくなることばかりだ。ほかの文明国家に比べてアメリカだけが悪い状況だと思い、それはなぜかと常に自問自答している。日本でも殺人はあると思うけど、アメリカの比ではない。アメリカでは拳銃での殺人事件が年間約1万5,000件、さらに拳銃での自殺も約1万5,000件もある。これだけ数字の差があるのは、なぜかと常に問い続けている。愛すべき国を攻撃するのはとてもつらいけど、必要なことだからね。

Q:アメリカが抱える問題は、経済のほかにどんなことがあると思いますか?

経済は、人々の生活を脅かしているけど、やはり一番の問題は、銃問題だと思う。アメリカ人の多くは銃を所持しているよね。そんなアメリカ人によく聞いてみるんだ。「何を恐れているんだ? 恐れているものについて具体的に聞かせてくれ。誰に襲われると思うんだ?」ってね。暗い夜道を歩いているときに、突然女の人が襲い掛かってくることにおびえている人なんて一人もいない。女の人にレイプされたり暴行されたり、殺されたりすることは誰も想定しない。ということはつまり、国民の51パーセントからは、襲われる可能性はないということだ。それって結構いいんじゃない?

Q:確かにそう考えると、敵は半分だけですよね?

そうだろう? 性別の問題だ。女性は暴力を好まない。いったい、なぜなんだ? それはどうしてなんだろう? もちろん女性だって怒る。ボーイフレンドに殴り掛かりたくなることもあるだろう。だけど、赤の他人にいきなり殴り掛かろうとする女性はいないはず。女性はなぜ暴力的な傾向がないのだろうね?

Q:面白いアイデアですね。そんなことは考えたこともありませんでした!

僕のゆがんだ頭は、こんな風にできているんだよ。僕は、そういうことについていつも考えている。僕には怒りに満ちている面があるので、それを何とかユーモアで解決しようとしている。暴力で解決するのではなく、ユーモアで解決しようと努力しているんだ。

■映画は自分の意見を伝えるのに一番の方法

Q:基本的なことをうかがいますが、自分の意見を発表する上で、たくさんの方法の中から、なぜ映画という手段を選んだのでしょう?

みんなが好きなものだからね。映画という手段を選ぶことで、みんなが観てくれると思った。だから、映画というのは、自分の意見を伝えるのに一番の方法だと思ったんだ。だから、日本の映画監督に、僕の映画の日本版みたいな作品を撮ってもらわないといけない。でも、日本の映画館は入場料が一人1,800円もするみたいじゃないか! 高いよね! それじゃ、みんなに観に来てもらえないから、何とかしてもらいたいよ(笑)。

Q:最後に、アメリカの反逆児マイケル・ムーアとして生きていて、喜びを感じるのはどういうときですか?

僕は自分がやりたいことをできる、恵まれている立場にいることだね。こうして、自分の納得する映画が完成したときは、すごく喜びを感じる。僕は、誰からも指図を受けることなく、自分のやりたいようにやっている。自分の意見を発信するために、自分の作りたい映画を作っている。誰も僕を止めることはできないし、黙らせることもできない。自分の仕事をやり遂げ、自分の好きなように生きることができる。それって素晴らしいことだよ。

前日の記者会見では、楽しげな姿を見せていたマイケルだったが、朝のオバマ大統領の兵力増強という発表により、表情はすっかり暗くなっていた。午後には、CNNの看板番組である「ラリー・キング・ライブ」への出演が控えていた彼は、取材中も持ってきていたブラックベリー(携帯情報端末)で、メールをしたり、多忙な中でインタビューに答えてくれた。本人は、本作が最後の映画と語っていたが、戦争で大切な息子を亡くし、涙する親がいる限り、マイケル・ムーアの戦いは終わらないだろう。彼を孤独な戦士にしないためにも、まずは世界中の人が彼の映画を観てアクションを起こさなければ、世界は変わらない。さあ、映画館へ!!

映画『キャピタリズム マネーは踊る』は12月5日よりTOHOシネマズシャンテ、TOHOシネマズ梅田にて限定公開。2010年1月9日より全国拡大ロードショー

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