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こはたあつこのうわさの現場潜入ルポ
第82回アカデミー賞ノミネーション発表会場レポートの巻

取材・写真・文:こはたあつこ(LA)

2月2日、ビバリーヒルズの映画芸術科学アカデミーの会場で第82回アカデミー賞のノミネーション発表が行われた。さあ、例年のごとく今年も早朝の取材、目覚まし時計を午前1時半にセットしてレッツゴー!

なぜ午前の3時半集合なのーーーー!!?

うぅ、とにかく眠い! 今年の集合時間は午前3時半! ニューヨークの東海岸時間に合わせて、毎年午前5時半の発表にしているそうだけど、「じゃあ、ロスの人たちはどうなるのよー!?」とぼやいてみても仕方がない。カメラとメモ帳を持参して、暗い夜道をビバリーヒルズに向けて車を走らせる。

アカデミーの事務局に着くと、入り口はエアポート並みのセキュリティー。かばんやカメラをチェックされ1階のロビーに入る。すると、そこはまるでホテルの朝食ビュッフェのよう。世界中から集まった400以上のプレスを満足させようと、スクランブルエッグやベーコン、フルーツ、ベーグルなどがブッフェ形式に取れるようになっているのだ。これで眠気がいっぺんに覚める。世界中から集まった取材陣と朝食を取りながら、ノミネーションの予想に花を咲かせるのもこのイベントの楽しみの一つだ。

あっという間のノミネーション発表

5時になり、プレスは一斉に2階のホールへ。座席を探し、カメラの準備をすると、さあ、いよいよノミネーションの発表だ。午前5時38分きっかりにアカデミーの会長が壇上に上がり、今年のプレゼンターのアン・ハサウェイを呼び込む。フラッシュが一斉にたかれ、アンがクリーム色のスーツで登場。うーん、きれい! 陶器のような白い肌に大きな目。まるでディズニーの白雪姫をそのまま人間にしたようだ。

そして間を入れずに二人のノミネーション発表が始まる。

「第82回、まずは助演女優賞の候補者です。『NINE』のペネロペ・クルス。『マイレージ、マイライフ』のヴェラ・ファーミガ……。」

二人が次々と候補者の名前を読み上げると、背景のスクリーンに候補者たちが映し出される。わたしはカメラのビューファインダーを見ながら、スクリーンの映像が変わるたびにパシャパシャとシャッターを押す。プレゼンのスピードが速いので、ぼやぼやしている暇はない。候補者の名前を追いながら、写真を撮るという作業は結構大変だ。誰が何の部門の候補になったのか、フォローする暇もない。時たま、観客から歓声が上がるのが聞こえる。口頭で発表されるのは24部門のうち10部門なので、あれよ、あれよという間にノミネーション発表が終ってしまった。始まって、10分もたっていない。

でも、発表が終わってからが記者たちの仕事。各メディアは一斉に立ち上がり、世界中に向けてレポートし始める。機関銃のようにパソコンのキーボードを打ち始める人がいたかと思えば、いきなりマイクの前でしゃべり始めるアナウンサーもいる。また、ライトを浴びて、カメラに向かって話し始めるテレビのレポーターも。このノミネーション発表の結果は、日本では、日本人がノミネートされれば別だが、一般的にかなり関心度が低い。でも、アメリカの映画関係者にとっては、その結果でキャリアと収入が180度変わってしまうほど重大なイベントだ。だから、学生にとっての大学入試発表ぐらいに気持ちが高まる。

作品賞候補を10に増やしたことの効果?

今年は1943年以来初めて作品賞候補を5作品から10作品に増やしたが、今回はそれがプラスに出たと思う。普段は作品賞にはなかなか入りにくいとされているSF作品の映画『第9地区』やアニメ作品の映画『カールじいさんの空飛ぶ家』が入ったこと。また画期的な作品や大作に押し出されがちな小品の映画『17歳の肖像』や、アメリカの一般客には好評だった『しあわせの隠れ場所』が入ったことなどがその理由だ。また、より多くの作品がノミネートされたことで、アメリカの一般客が候補作品のどれかを観ている確率が高まる。それが3月7日に行われる授賞式のテレビ放映の視聴率アップにつながることを期待する関係者も多い。

総評&アカデミー会員の心理を分析

長編アニメ部門に映画『崖の上のポニョ』が入らなかったのは残念だが、今回は競合が強すぎた。『カールじいさんの空飛ぶ家』は作品賞にもノミネートされるほど評判が高かったし、映画『ファンタスティック・ミスター・フォックス』(原題)や映画『コララインとボタンの魔女 3D』の独特な表現法は画期的だ。また、映画『ブレンダンとケルズの秘密』の映像は絵本のように芸術的で目を見張るものがある。また映画『プリンセスと魔法のキス』もアニメの老舗ディズニーが力を入れて押している作品だ。そんな中、『ポニョ』が食い込んでいくのは難しかったと思う。

俳優部門に関しては、主演候補に入ったジェフ・ブリッジスサンドラ・ブロックや、助演候補のクリストフ・ヴァルツモニークなど、ほぼSAG賞と同じ結果となった。ただ、一人だけ意表を突いたのは、マギー・ギレンホール(本当は“ジレンホール”と読む)だ。アカデミー賞の前哨戦となるさまざまな賞で、見過ごされてきた感があるだけに、今回ノミネートは個人的にうれしかった。『Away We Go(原題)』での教授役など、最近のギレンホールの活躍は目を見張るものがある。逆に下馬評が高かったクリント・イーストウッドの映画『インビクタス/負けざる者たち』は作品賞にも監督賞にも入らなかった。イーストウッドは過去何回もノミネートされているので、「今回はほかの人にチャンスをあげよう」という会員たちの気持ちが働いたのでは。

そういう気持ちが働いたとしても無視できないくらい演技が良かったのが映画『ジュリー&ジュリア』のメリル・ストリープだ。彼女が演じた50年代の米人気料理研究家はどこまでも個性的で印象が強く、これを評価せずに誰を評価しようというほど素晴らしかった。主演女優賞はサンドラに行く気がするが、60歳のストリープは最近かなり油が乗っている。

さあ、ノミネーション結果が出た後は、米映画業界は選挙キャンペーンのごとくヒートアップする。戦いの火蓋(ひぶた)が切って落とされた今、3月7日のアカデミー賞の行方はいかに!?

エアポートのようなセキュリティー。
美味しそうな果物も。
ロビーで朝食ビュッフェを味わう私でーす!
ノミネーション会場に座るプレス
座席で待機の私。なんだか発表が待ち遠しいな。
会長とアン・ハサウェイ
次々と候補者の写真が現れる
アンと会長が読むカメラ越しのプロンプター。要するにせりふが書いてあるあんちょこ。
パソコンでニュースを発信するプレス
会長さんはコメントで大忙し
アメリカで人気の映画番組のレポーター。
映画コメンテイター同士がインタビュー
UCLAの学生もレポートを!ジャーナリズム専攻の二人。
ABCテレビ局で著名なエンタメレポーター、ジョージ・ペナキオ氏と。
すべてが終って。帰りがけにオスカー像を鏡越しにぱちり。
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