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浅野忠信、永作博美
『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』
どうにもならない葛藤(かっとう)を、分かち合える
『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』浅野忠信、永作博美 単独インタビュー

取材・文:シネマトゥデイ 写真:高野広美

人気漫画家・西原理恵子の元夫で、2007年に逝去した戦場カメラマン・鴨志田穣の自伝的同名小説を、映画『絵の中のぼくの村 Village of Dreams』でベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞した東陽一監督が映像化した映画『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』。アルコール依存症と闘いながら、元妻の愛情と子どもたちの笑顔に支えられ、自分自身を取り戻すまでの男の姿を描いた本作で、西原をモデルにした妻・由紀を好演した永作博美と、自分勝手だが憎めない男・塚原を壮絶に演じた浅野忠信が、作品の魅力について語った。

■今作のような作品を求めている映画ファンはたくさんいる。(浅野)

Q:とにかく一言、いい映画でした!

浅野忠信(以下、浅野):ありがとうございます。監督もおっしゃっていましたが、テレビ局が大作映画を作るようになり、小規模な映画が少なくなってきている現代で、こういう形の映画づくりに携わることができるのは、すごく大きなチャンスだと思うんです。たとえ、娯楽大作映画の数が多くても、この作品のような映画を求めている映画ファンはたくさんいると思いますから、そこに向けて好き放題やってやろうという気持ちはありました。

Q:好き放題(笑)、素晴らしいですね!

浅野:最初に脚本を読んだとき、ものすごく面白かったんです。僕はこの役を好きなように演じたいって、心から思いました。だから実際現場でも、自由に演じることができました。

Q:永作さんが演じられた由紀は、とても強い女性でした。脚本を読んだとき、彼女にどんな印象を持ちましたか?

永作博美(以下、永作):きっと監督が西原さんにお会いして本を書いたからだと思うんですけど、最初に台本を読んだ時点で、由紀の強さは台本の言葉からあふれ出ていたんです。多くを語らず、腰のどっしり据わった彼女の強さをどう表現しようかと、緊張した覚えがあります。

■あの生き方が、彼女の決着のつけ方なんです。(永作)

Q:冒頭で、塚原が泥酔して倒れるまでの演技はすごくリアルで、観ているこちらまで恐ろしくなりました。ただ酔っ払うだけとはまた違った演じ方が必要だったと思いますが、何か心掛けたことはありましたか?

浅野:僕はお酒が弱い方なので、あまり酔っ払う機会がないんです(笑)。でも逆に自分が飲まない分、酔いつぶれた友人を介抱することが多いので、彼らを参考にはしましたね。

Q:浅野さんがお酒弱いって、意外ですね!

浅野:よく言われます(笑)。でも、実際は弱いんですよ。

Q:永作さんは、お酒は強いんですか?

永作:はい(笑)。今、浅野さんが話されたことを聞いて納得したんですけど、確かにわたし、自分が飲む方なので、酔っ払っている人をじっくり見る機会があまりないんです。浅野さんとは逆のタイプですね(笑)。

Q:あれほど大変な状態の元夫を見捨てなかった、由紀の強さはやっぱりすごいですよね!

永作:そうですね(笑)。女性だからとか、男性だからとかじゃなく、あの生き方が、彼女自身の人生への決着のつけ方なんですよね。きちんと責任を取ったなって感じました。つらさから逃げずにいたところが、すごくすてきだなって思いました。

■家族があってこそ、彼はかわいくなれた気がします。(浅野)

Q:どうしても塚原のことを放っておけない由紀の気持ちにとても共感しました。結局、好きな男を見捨てられない女性は、多い気がしませんか?

浅野:そういう女の人、確かに多いイメージですよね。ダメな男に惹(ひ)かれちゃう! みたいな(笑)。

永作:わたしもこの間、ちょうど友達とそんな話をしていたんです。よくありますよね(笑)。

浅野:男はダメになってもいいってことですね(笑)!

永作:いやいや、ダメですよ(笑)。

Q:塚原には、どこか憎めない部分がたくさんありましたね。あのキャラクターはどうやって作られたんですか?

浅野:例えば、親にお小遣いを催促するときに、すごくふてくされながら「小遣い、くれ」って言う子、いるじゃないですか。素直に「お小遣いちょうだい!」って言えばいいのに、何でそんな言い方するんだろうって思うんですけど、そういうところからヒントを得ました。

永作:そういう少年っぽいところが塚原にはありましたね。だからこそ、由紀は何か放っておけなかったんじゃないかなあ。

浅野:塚原をどこかかわいく思えるのは、放っておけないってため息をつきながら一緒にいてくれる奥さんのおかげだと思うんです。そばにいてくれる家族の中で、塚原という男はかわいくなれた気がします。

■余計なことをせずに作り上げた映画!(永作)

Q:最後に、この映画の魅力を存分に語ってください!

永作:みんなが余計なものをつけず、余計なことをせずに作り上げた映画なので、そこには普通の日常があって、とてもリアリティーのある映画になったと思います。すべてを説明しながら毎日を送るということはできなくて、やっぱり何かが物足りなかったり、言いたいことが言えなかったり、やりたいけどできない、そういう気持ちの重なりが伝わるんじゃないかな? 余計なものをそぎ落とした分、それぞれの人物の気持ちがちゃんと浮き出ていて、すてきな映画ができたとうれしく思っています。

浅野:いろんな映画があっていいと思うのですが、人生で物事が簡単に進まない瞬間や、表現できない気持ちがある中で、そこに共鳴できる映画ってあってほしいと思うんです。若いころは勢いで何とかなっていたけど、今はやっぱりどうにもならない葛藤(かっとう)があって、それを誰かと分かち合いたいと思うんです。僕はずっとこういう作品に出たかったし、日本映画界がすごく特殊な流れにある今だからこそ、このような映画に出会えてすごく幸せでした。

良質な映画に出演し続け、多くの監督から愛されている個性派俳優・浅野と永作から、映画への確固たる思いが伝わってきた。二人はインタビュー中、終始楽しそうな表情をしていたが、演技することの喜びは、真摯(しんし)に映画と向き合ってきた二人だからこそわかる快感なのだろう。本作のセリフの裏に隠されたたっぷりの愛情と、スクリーンに広がる柔らかく温かい空気をぜひ劇場で感じてもらいたい。

【永作博美】スタイリスト:井嶋和男(バランス) ヘアメイク:濱田マサル(Three Peace)
【浅野忠信】スタイリスト:北村道子 ヘアメイク:TAKU(eight peace)

(C) 2010シグロ / バップ / ビターズ・エンド

『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』は12月4日より全国公開

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