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日本で作った「チェブラーシカ」をロシアで上映!-シネマトゥデイが現地取材

 ロシアの国民的人気のパペットアニメーション「チェブラーシカ」を日本人監督が27年ぶりにオリジナルのキャラクターをそっくりそのまま踏襲しつつも、まったく新しいストーリーでニュー・キャラクターも織り混ぜながら新作を作ってしまいました。さてさてそんなニュー『チェブラーシカ』を引っさげて本国ロシアに殴りこみ……ではなくプレミア上映のため、はるばるロシアの大地に日本語版声優の大橋のぞみちゃんや中村誠監督が上陸しました。シネマトゥデイはそんなロシア取材に同行させていただけることに! ロシアの人の映画への反応やロシアのチェブラーシカ事情をレポートします。
チェブラーシカはドラえもん、ミッキーマウスと同じ

 ロシアで言えば日本のドラえもん、世界で言えばミッキーマウスというぐらい「チェブラーシカ」はロシアで国民的な人気を誇る大人気キャラクターです。1969年に「ワニのゲーナ」が製作されたのが第一弾でその後、3作品制作されていますがいままでロシアで制作されたチェブラーシカの物語はこの4本のみ。それでも40年にわたって国民に愛されて続けているキャラクターなのです。

 ロシアで制作された『チェブラーシカ学校へ行く』から実に27年ぶりに日本の中村誠監督が日本でまったくのゼロから作り上げた映画『チェブラーシカ』は、サーカスの少女マーシャと奇術師のおじいさんという新たなキャラクターを中心に、オリジナルストーリーが展開します。この映画の公開は12月18日ですが、やはりロシアの人気キャラクターを日本で作らせていただいたことに敬意を払い、日本よりも1か月以上も早く一般のロシアの人にお披露目することになりました。

 ロシアのメドベージェフ大統領が北方領土を訪問してしまったことで日本とロシアのとの関係が緊迫している中、日本の配給会社と中村誠監督、そして日本語吹き替え版を担当している大橋のぞみちゃんは11月13日モスクワに上陸しました。


(C) 2010 Cheburashka Movie Partners / Cheburashka Project

 
ロシアの街で見たチェブラーシカ

 ロシアといえば皆が毛皮の帽子をかぶって、もこもこのコートを着ているイメージ。それでも寒すぎるのでウォッカで体を暖めて……という極寒の地のイメージがありましたが、実はロシアは今異常気象で、もう11月だというのにそんなに寒くないのです。11月13日のモスクワの気温は10度、そして16日に帰国したときの日本の気温が8度だったので日本の方が寒かったというオチがつきました。

 今年のロシアは夏も異常に暑かったらしく、40度以上を記録し、馴れていない海水浴をして溺死した人々が1,000人を超えたとか。と、そんなことはどうでもいいのですが、ロシア上陸を果たして一番気になったのは、果たしてチェブラーシカは本当に国民的人気キャラなのか? ということです。まず、おみやげもの屋さんをのぞくと確実に、チェブラーシカはいます。特にマトリョーシカといってお人形の中からお人形が出てくる木工細工のロシアの民芸品があるのですが、チェブラーシカのマトリョーシカは人気があるようでした。あとチェ・ゲバラの「チェ」とチェブラーシカの「チェ」をかけたチェ・ゲバラの風ぼうをしたチェブラーシカのTシャツなども、モスクワのおみやげ屋さん街で見かけました。また、チェブラーシカ博物館を兼ねた幼稚園には手作りのチェブラーシカから、いったい出どころはどこなのか疑いたくなるような怪しいチェブラーシカのお人形まで、さまざまなチェブラーシカを見ることができ、やはり国民に愛されているキャラクターなのだとじわじわと感じることができました。


あやしいチェブラーシカその1!
もはや違うキャラ?-幼稚園を兼ねたチェブラーシカ博物館にて

あやしいチェブラーシカその2!
幼稚園にサプライズで現れるチェブラーシカ!(実は陽気な園長先生が中に入っています)子どもたちに大人気です!

 
日本製『チェブラーシカ』ついにロシアで上映!

 そして、ロシアでのプレミア上映は「35mm」という映画館で上映されました。日本で言えばシネマライズのように、劇場がポリシーを持って上映作品を選ぶような映画館だそうです。中村監督や大橋のぞみちゃんが上映前に舞台あいさつをしたのですが、日本人に対して「北方領土はわれらのもの」などと言う人は一人もなく、やはり、文化と政治は完全に別のものだということを皆さんは十分理解していらっしゃるようでした。ヘンなこと考えてスミマセン!

 前売り券は完売で場内は満員。実はロシアでは前売り券を買うという習慣がないためこれは異例中の異例の出来事のようです。客層は子どもが多いのかと思いきや若いカップルから中年、老人まで実に幅の広いことに驚かされました。ここでシネマトゥデイモスクワ特派員はロシアの観客に紛れ込んでそのナマの反応を観察することに! 実はこの映画館、ロシアでは割と大きな映画館でキャパシティが500人あるのです。そして満席。ちょうど席の中央より少し前に座ると左側に白髪の老人の方、右側に10代前半と思われる女の子となんと都合のいいサンプルに囲まれました。話ができすぎですが、この白髪の老人と若い女の子は、年齢的にも新『チェブラーシカ』で、メインキャラクターとなる奇術師のおじいさんとサーカスの少女マーシャに重なるのです。シネマトゥデイ特派員は一度『チェブラーシカ』は日本で鑑賞済みなので、ここでは観客のウォッチングに専念することにしました。

 まず、小さな女の子はマーシャが出てくると身を前に乗り出します。多分マーシャはかわいい女の子なので、あこがれと一緒に自分と同じ年ごろなので感情移入したのでしょう。また、隣の白髪の老人は、チェブラーシカがゆかいなことをしたり、誰かがうまいことを言ったりすると手をたたいて喜んでいるのです。隣の女の子とは喜ぶポイントが違うのが興味深かったです。上映が終わった後、会場が拍手に包まれたのは言うまでもありません。500人の人がこの作品を気に入ってくれているのだなということは肌で感じました。シネマトゥデイ特派員も日本人として感無量でした。


会場を待つ観客の方々。意外に年齢層が高いことに驚きます

劇場の500席は満席!チケットは完売でした
 
チェブの周りの熱い人たち

 上映が終わってから記者会見が執り行われたのですが、チェブラーシカに対するクリエイターやロシアの文化マスコミの熱い思いをここで思い知ることになりました。会見は1時間と言われていたのですが、ふたを開けてみれば、なんと白熱し結果2時間半もの時間を費やしました。途中からは質疑応答というよりは意見やポリシーのぶつけ合いのようになっていたのが面白かったです。

 日本の記者会見なら、まず脱線してしまった時点ですぐに戻るし、何より時間を過ぎれば会場から追い出されます。大橋のぞみちゃんは最初の30分くらい出席して、スタッフが後は帰った方がいいと言っていたのでこうなることを予測していたのでしょうか。

 しかし、ここの席で、日本人なので控えめにはしていますが一番熱かったのは、この『チェブラーシカ』のプロデュースをした日本の会社フロンティアワークスさんのスタッフ方だと思います。美術監督のアルダーシンさんが言うには、「この27年間(前作のチェブが作られてから)いろいろな人がチェブをリメイクしようと試みたが誰も成功しなかった。そしてとうとうそれを日本人が成し遂げた」と語り、今回の新しい『チェブラーシカ』が完成するには人並み外れた努力が必要だったことを語っていました。我慢強い日本人だからこそなせる業だったのかもしれません。


大橋のぞみちゃんと中村監督がロシアマスコミの前で堂々会見!

ロシア版チェブラーシカの声優さんラリーサ・プロフマンも舞台あいさつに駆けつけてくれました
 
ユニークな中村監督

 最後に中村誠監督のお人柄がとても面白かったので紹介させてください。中村監督はアヌシー国際アニメーションフェステバルにノミネートされた「チェブラーシカあれれ?」では監修を手がけたり、そのほかに数え切れないほどのアニメーションの脚本や演出をなさっている方です。「アニメ監督」というと「オレさま」な感じの方も多いのですが、中村監督はものごしがやわらかく、他人への思いやりに満ちている方でした。だからこそチェブラーシカの気持ちが理解できるのですね。

 実はシネマトゥデイ特派員はロシア出発前に、うっかりパスポートの期限が切れていてあわててパスポートを作るハメになったのですが、中村監督もあわててパスポートを作っている仲間でした。その理由がパスポートを犬に噛まれてしまったからだそうなんです。実際にそのパスポートをパスポートセンターに持っていったら、しっかり歯型がついているパスポートを前に、窓口の方に受け入れ先の国でこのパスポートで入国許可が出るかは保証できないと言われあわてて作られたそうです。ユニークでしょ? ちなみに中村監督はワンちゃんを7匹飼っているそうです。

 そんな監督なのですが実はミドル級のアマチュアボクサーでグレイシー柔術もなさっているそうで。監督がおだやかなのはそういう相手と対峙して命を狙われるような場を体験しているからこそ、たいていのことはおだやかにすごせるのだそうです。格闘技にそんな効果があったとは知りませんでした。


劇中で使用したチェブラーシカのパペットを手袋をして丁寧に扱う中村監督にロシアマスコミは好評価でした
 
大成功! ロシアプレミア

 なにはともあれ、ロシアでの『チェブラーシカ』プレミア上映は大成功でした。チェブラーシカというキャラクターが本当にロシアのみなさんに愛されているということも肌で感じました。また、話は別なのですがロシアの人たちは日本の文化に憧れをもって見つめてくれているということもわかりました。いくら政治がこじれても、「文化に国境はない」これは真実でしょう。著作権のことなど難しい問題はありますが、そのあたりを丁寧にクリアしていく根気と熱意があれば、世界はすばらしい交流ができると確信できた すてきな取材でした。


大橋のぞみちゃんのかわいらしさは世界共通!赤の広場で撮影中にロシア人々が笑顔でのぞみちゃんに熱いまなざしを向けていました
 
文・構成:シネマトゥデイ編集部
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