シネマトゥデイ

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INTERVIEW@big apple

今回は、ソフィア・コッポラの新作『SOMEWHERE』ケヴィン・スペイシー主演の『カジノ・ジャック(原題)/Casino Jack』、そしてニューヨーク近代美術館で行われた巨匠ベルナルド・ベルドルッチのイベントについて紹介。

12月13日12月13日 芸術家肌で繊細な女性ソフィア・コッポラのとりこに!(スタンダード・ホテルにて)

映画『SOMEWHERE』

ゴシップ紙を頻繁(ひんぱん)ににぎわす映画俳優ジョニー・マルコ(スティーヴン・ドーフ)は、高級車を乗りまわしながら、毎日違った女性とホテルで暮らす優雅な日々を送っていた。そんな彼のもとへ、前妻との間にできた娘クレオ(エル・ファニング)がやって来る。やがてジョニーは、クレオとそれまで失われた時間を過ごすことによって、自分の現実を見つめ直していく。ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞作品。

ソフィア・コッポラ、スティーヴン・ドーフ

新作『SOMEWHERE』で話題のソフィア・コッポラ監督/落ち着いたオトナの魅力を醸し出すスティーヴン・ドーフ

ソフィア・コッポラ監督作『ヴァージン・スーサイズ』を観たときから、独特の演出で表現される柔らかな雰囲気が好きで、すべての監督作を観てきたが、なぜかこれまでに記者会見を除けば、ラウンドテーブル・インタビュー(5、6人の記者が参加する取材)をしたことがなかった。そして今回、ついにそのチャンスが! ハドソン川を見渡せる景色の良いホテルの一室に到着すると、そのテーブルにはいつもの顔なじみの記者たちが集まっていた。取材が始まる前に彼らと2010年のベスト10作品について談笑しているとソフィアが登場。彼女は席に着くと用意してあった紅茶を飲み、ひと呼吸をおいてからインタビューを開始した。彼女は落ち着いた口調で話すのだが、やや小声で早口のため、神経を集中させて聞きとることに。やがてゲイの記者が、スティーヴン・ドーフ演じる主人公がマッサージを受けている最中に、男性マッサージ師が目の前で突如ヌードになるシーンについて質問をすると、ソフィアは「あのシーンは、わたしの友人が実際体験した出来事だったの」と明かして笑いを誘った。その話で終わるかと思ったら、この記者が今度は「マッサージ師を演じた男性はセットで完全にヌードだったのか?」と食い下がり、さらに自分の感想まで話し出したのだ。彼はゲイを対象にした雑誌に執筆していて、時々露骨な内容の質問をすることがあり、普段もこんな調子なので、仕方がないとあきらめることに……。最後にソフィアは、「自分が母親になったことで価値観がかなり変わった」と話していた。このインタビューで、かつてスパイク・ジョーンズ監督やクエンティン・タランティーノ監督がほれてしまった理由がなんとなく理解できたほど、彼女を魅力的に感じた。

次に個性派俳優スティーヴン・ドーフ。彼は「この映画を撮影している最中に、かつて映画で共演した女優と付き合った経験が頭をよぎった」と、興味深い話をしてくれたが、女優の実名など具体的な詳細については一切明かしてくれなかった。彼の演じたジョニーが滞在していたホテルは、シャトー・マーモントという有名なホテルで、彼の泊まった部屋は、以前、作家のハンター・S・トンプソンがナイフで自らの手を少し切って、血で壁に絵を描いたことのある有名な部屋なのだと、興味深いエピソードを教えてくれた。また、映画祭のシーンでは、とある映画祭をベースにセットを用意し、記者会見のシーンではハリウッド外国人記者協会の記者たちを募って質問をさせていたらしい。スティーヴンは非常に落ち着いたイメージで、過去の作品のようなやんちゃなイメージはなかった。

12月16日12月16日 ボディーガードを従えた陽気なケヴィン・スペイシー(リージェンシー・ホテルにて)

映画『カジノ・ジャック(原題)/Casino Jack』

アメリカ議会史上最悪のスキャンダルといわれた、大物ロビイスト、ジャック・エイブラモフ(ケヴィン・スペイシー)の賄賂事件、およびカジノ関連の詐欺事件を扱ったコミカルなタッチの政治映画。2006年に詐欺罪で有罪判決を下されたジャックの個性的なキャラクターが興味深い。

ケヴィン・スペイシー、バリー・ペッパー、ジョン・ロヴィッツ

妹が大阪に住んでいるというバリー・ペッパー/批評家から『カジノ・ジャック~』での演技を絶賛され、ご満悦のジョン・ロヴィッツ

2度のアカデミー賞受賞経験のあるケヴィン・スペイシーの取材ということで、少し早めに会場に行って準備をすることに。用意されていたのは、わずか6、7人が座れるだけのテーブルだったが、気付いたらある記者が別の部屋から椅子を運び込んで座り始め、いつの間にか12人もの記者が缶詰状態でインタビューすることに……。

そして、早速部屋に入ってきたのはケヴィン。ところが、彼の後ろには女性パブリシストと屈強な体格のボディーガードが……! 「誰もあなた(ケヴィン)を襲ったり、ケンカしたりしませんよ!」と思いつつ、インタビューが開始。彼はインタビュー前日にイギリスで舞台をやっていたらしく、インタビュー当日に空港からホテルに直行して取材に応じたそうだ。まず彼は、この映画の監督ジョージ・ヒッケンルーパーが、2か月前に急死したことにショックを受けたことから話し始めた。さらにジョージは、彼の家族のほとんどが政治家であるため、ずっと政治的な作品を制作してみたいと思っていたという。また、映画の題材となったジャック・エイブラモフのスキャンダルは、根本的にコメディーの要素を持っているのでシリアスな内容ではなく、あえてコメディータッチの政治映画にしたそうだ。ケヴィンがジャックに会ったとき、ジャックはジョージ・クルーニーブラッド・ピットが自分を演じてくれると思っていたらしく、「『俺(ケヴィン)で我慢するしかないだろ』と言ってやったよ」とジョークを飛ばして笑わせてくれた。最後は、ジャックは執行猶予の期間にピザ屋で働いていたという意外なエピソードも飛び出した。

次にバリー・ペッパー。ちょうどこの映画と同じ時期に、彼の出演している別の映画『トゥルー・グリット』も公開予定だったため、二つの映画について質問することに。彼は至って真面目で真摯(しんし)な返答を繰り返し、文学的な知識も高い印象を受けた。インタビューが終わったあとに彼に呼び止められ、「君は日本の記者かい?」と問われた。実は彼の妹が大阪に住んでいるらしく、「日本にはまだ一度も行ったことがないが、今度妹に会いに日本に行きたい」とのこと。ジョン・ロヴィッツは、スタンドアップ・コメディアンだけあって、とにかく楽しい人物だった。ある批評家が彼の演技を高く評価し、オスカーに値する演技だと記事で絶賛したらしく、ジョンは取材中にiPhoneでその記事を横にいた記者に見せてから彼にその文面を声に出して読ませ、ものすごく誇らしげな顔をしていたのがおかしかった。しかし途中から、中年の女性記者が彼のファンだったのか、ジョンが話すたびに相づちを入れ、さらに感想まで述べ出して、ほぼ2人のやり取りのみで取材が続き、ほかの記者がほとんど質問できなかった。ただ僕にとっては、特にジョンに聞きたいこともないし、ケヴィンやバリーの記事を書くことになるからと思い、最後は聞き手に回って取材を終えた。

12月18日12月18日 巨匠ベルナルド・ベルトルッチのインタビューに興奮!(ニューヨーク近代美術館にて)

ベルナルド・ベルトルッチ作品のレトロスペクティブ

映画『暗殺の森』や『ラストタンゴ・イン・パリ』で世界的な注目を集め、『ラストエンペラー』で、アカデミー賞で作品賞をはじめ10部門に輝いたイタリアの巨匠ベルナルド・ベルトルッチ監督が、ニューヨークの近代美術館で2010年12月15日~2011年1月12日まで開催されるレトロスペクティブ(過去作の特集上映)のイベントだ。

ベルナルド・ベルトルッチ

ニューヨークの近代美術館で特集上映が行われた巨匠ベルトルッチ/今もなお映画制作への情熱を失わない巨匠の姿に感動

近代美術館で、巨匠ベルナルド・ベルトルッチのレトロスペクティブのイベントが行われることは知っていたが、まさか彼がニューヨークを訪れているとは思わなかった。だから、ハフィントン・ポストに執筆している友人からベルトルッチ監督が来ていることを知らされたときはとても驚いた。さらに、「もしかしたらインタビューできるかもしれないよ!」と、近代美術館のパブリシストの連絡先を知らされたときはもっと驚いた。もちろん、どうせ大きなメディアを対象に行われるのだから僕がインタビューできる可能性はないだろうと思っていたら、そのパブリシストから直接電話がかかってきて、「今からインタビューを行うから参加しないか」とのこと! 当然、尊敬する巨匠にインタビューできるのだから有頂天の気分で「イエス」の返事をした。会場に向かい、奥にあるインタビュー室に通されると、なんとわずか3人の記者しかいなかった……! ほとんどの記者が前週に仕事を終えてクリスマスシーズンに入っていたせいもあってか、記者の数が非常に少なかった。ラッキー!

そして、ついにベルトルッチが登場。ところが、彼が車イスの姿で現れたので驚いた。ここ数年、彼の新作を観ていなかった上に、インターネットで彼の姿を見ることもなかったから、背中を傷めて車イスに座った状態であることを聞かされたときは、かなりショックを受けた。そして、この巨匠を相手に最初にどんな質問をしたら良いものかと悩んでいると、どんなときでも問題なく積極的に質問するハフィントン・ポストの友人が「今はどういう作品に関わっているのか」という無難な質問から入り、徐々に『ラストエンペラー』や『ラストタンゴ・イン・パリ』などの代表作に関する質問に及んでいった。彼はそれらについて冗舌な英語でゆっくりと、笑顔で答えてくれていた。意外なことに彼はそういった代表作も含め、自分の制作した映画を観ることはないそうだ。その理由は、「あのときこうしておけば良かったという失望に耐えられないから」という。僕が『暗殺の森』のあるシーンについて質問をしたら、「そんなシーンあったかなぁ?」と困っていたのがおかしかった。さらに、彼は『リトル・ブッダ』の制作前にダライ・ラマに会い、子どもにもわかりやすい仏教映画を作りたいと話したら、「すべての人の心には小さなブッダが宿っているから、制作に関して不安になることはないよ」と言われたらしい。最後に、彼は時代が変わっても、今もなお映画制作には興奮させられると語った。まだまだ聞きたい話はたくさんあったが、貴重な体験をさせてもらった。

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