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小泉今日子、西原理恵子
『毎日かあさん』
いろいろあった夫婦の感じが自然に出せたような気がします
映画『毎日かあさん』小泉今日子、西原理恵子 単独インタビュー

取材・文:斉藤由紀子 写真:高野広美

漫画家・西原理恵子が実体験を基に描き、笑って泣ける作品として絶大な支持を集める人気漫画「毎日かあさん」が、小泉今日子と永瀬正敏の共演で実写映画化された。本作は、働きながら2人の子どもを育てる漫画家サイバラと、元戦場カメラマンでアルコール依存症の夫カモシダとのエピソードを中心に、一風変わった家族の日常をハートフルに紡いだ物語。主人公のサイバラを演じた小泉と原作者の西原が、カモシダを演じた永瀬との裏話や、作品への思いを語った。

■西原さんの作品が大好き(小泉)

Q:原作漫画の面白さと感動が、存分に伝わってくる映画化作品でした。

小泉:ありがとうございます。わたしは西原さんの作品が大好きだったので、今回のお話を聞いたときはすごくうれしかったです。ただ、うれしいと思うと同時に少しだけ疑問も感じてしまったんですよね。ここ数年、西原さんの原作がどんどん映画化されていて、「西原さん祭り」だったので(笑)。

西原:今みたいに不景気だと、わたしの漫画のような低予算で映画化できる作品に需要が回ってくるんですよ(笑)。

小泉:もちろん、西原さんファンのわたしたちにとっては喜ばしいことなのですが、「毎日かあさん」まで生身の人間が演じなくてもいいのではないかと思ってしまって……。まあ、原作が大好きだったからこそ、そう感じたんでしょうけどね。でも、小林(聖太郎)監督と初めてお会いしたときに、「子育てで神経質になってしまうお母さんもいらっしゃるから、西原さんのようなパワフルなお母さんの話を映画にして、皆さんに元気なっていただきたいんです」とおっしゃったので、「それならやりましょう!」ということになったんです。

西原:でも、まさか小泉さんがわたしを演じてくれるなんて思ってもいなかったから、最初はびっくりしました。周りからは「おまえが指名したんだろう!」って言われるんですけど、そんなわけないですから!

Q:西原さんは、小泉さんのことを「たたき上げ臭がする」と表現されていましたが?

西原:小泉さんって、普通のアイドルとはちょっと違っていたじゃないですか。自分自身の意思が感じられたというか、作られたアイドルのような気がしなかった。だから、同性からも支持があったんですよね。それを「たたき上げ臭」と表現するのがふさわしいのかどうかはわかりませんけど……。

小泉:でも、その「たたき上げ」という言い方、すごくよくわかります(笑)。

■別れた女房の前だと、男はみんな小さくなる(西原)

Q:小泉さんは永瀬さんとの共演について、撮影前に「いろいろあったわたしたちだからこそできることがある」とおっしゃっていましたが、実際に撮影していかがでしたか?

小泉:何もかもが、この映画のためになって良かったという感じがします。わたしたちの場合、役者同士の信頼関係やコミュニケーションはゼロから始めなくてもできていたわけですし、映画で演じた西原さんご夫婦の距離感と、自分たちの距離感が重なったりもしましたしね。本当に、わたしと永瀬くんだったからこそ、いろいろあった夫婦の感じが自然に出せたような気がします。

Q:西原さんも撮影現場を見学に行かれたそうですね。

西原:はい。わたしがスタジオにお邪魔したとき、離婚したカモシダが家に戻ってきたシーンを撮影していたんですけど、永瀬さんは小泉さんの前で怒られた犬のような顔をしていました。うれしいのに居心地が悪くて、みんなと離れたところで尻尾を振っている犬みたいな感じというか……。だいたい、別れた女房の前だと男はみんな小さくなるものなんですよ。

小泉:そうですよねー!

西原:「あんた、昔もそうだったよね!」とか、「あの時のこと覚えてる?」とか言われちゃったりして、本当に小さくなっちゃう。永瀬さんもこんな顔(情けない表情)をしていました(笑)。

小泉:今回、監督もわたしに怒られていたから、きっとそんな顔になっていたと思います(笑)。

西原:そうなんだ!

小泉:不思議なんですけど、お母さん役で子どもたちを叱っていたりすると、実際もそういう感覚になっちゃうんですよね。「監督、悩んでないでハッキリして!」みたいな。

西原:またね、監督が気弱そうで叱りやすそうな方なんですよ(笑)。

小泉:そう、すごく才能があっていい人なんですけどね。

■永瀬くんっていい役者だなと改めて感じた(小泉)

Q:永瀬さんの演じたカモシダが、お写真で拝見した実際の鴨志田さん(故・鴨志田穣)とそっくりで驚きました。

西原:最後の方になるにつれ、どんどんそっくりになっていきましたよね。まるで鴨志田本人が乗り移っているように見えてしまって、平常心ではいられなくなりました。ちょっとしたしぐさから表情まで、永瀬さんが知っているはずがないのに不思議なくらい似ていて……。きっと、そう見えてしまうだけの迫力があったんでしょうね。記憶って塗り替えができるから、わたしの中にある鴨志田の記憶を塗り替えてしまうような演じ方をしていらしたんだと思います。

小泉:彼も原作が大好きで、この役をやるのにとても意欲的だったんです。撮影の前に鴨志田さんについていろいろ調べていましたし、鴨志田さんのお墓にもごあいさつに行ったんですって。

西原:そうらしいですね。お墓の前で鴨志田と2人きりになって、台本のセリフを全部読み上げたとおっしゃっていました。

小泉:撮影が始まってからも、ガンに侵されていく役のために12キロも減量してがんばっていました。わたしも間近で見ていて、永瀬くんってすごいな、いい役者だなと改めて感じました。彼に比べたら、わたしはまだまだ修行が足りないと思ってしまいました。

■「もう全部持っている」とは、自分を戒める言葉(西原)

Q:カモシダから欲しいものを聞かれたとき、「もう全部持っている」と断言するサイバラがかっこよかったです。

西原:人間って欲が深いから、どんなにお金やモノがあっても、もっともっと欲しくなっちゃうんですよ。わたしだってもっと稼ぎたいと思ってしまいますし(笑)。だから、「もう全部持っている」というのは、そんな自分を戒める意味の言葉でもあるんです。

小泉:わたしは早くから仕事をしていて、ずっと自分自身でお金を稼いできたから、誰かに欲しいものをおねだりして買ってもらったという記憶はないんです。「欲しいものがあったら自分で仕事をして自分で買う!」というのが正直な気持ちなんですよね。その方が気持ちがいいというか。

西原:まったく同感です!……でも、やっぱり男は欲しいかも。コンビニで何かを選ぶように、男も簡単に手に入ったら楽なのにね。

小泉:そうですね! 返品なんかも自由にできたらすごくありがたいですよね。

西原:そうそう、この男はダメだから新しいのに取り替えよう、とか。

Q:お二人は同じにおいがします。小泉さんも、映画で西原さんを演じてシンパシーを感じたのではないですか?

小泉:わたし自身は、西原さんのように結婚して子どもを育てるという選択をしなかったけど、ちゃんと仕事をして生きてきたという意味では、共感できるところがたくさんありました。「わたしのやっていることは、世界中の全部の女がやっていることで、毎日はそれだけで楽しいよ」という映画のコピーがありますけど、この作品を観た女性の方にもすごく共感してもらえると思います。

息の合ったトークを繰り広げた小泉と西原には、確かに共通するにおいがある。それは、サブカルチャーの担い手であるクリエイター同士の空気感かもしれないし、自分自身の力で未来を切り開いてきた女性としての輝きなのかもしれない。まさに絶妙としか言いようのないキャストによって誕生した映画『毎日かあさん』は、思いっきり笑えてラストは号泣必至という西原ワールドそのものだ。本編はもちろん、エンドロールの演出も素晴らしいので、絶対に見逃さないでほしい。

(C) 2011 映画「毎日かあさん」製作委員会

映画『毎日かあさん』は2月5日全国公開

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