シネマトゥデイ

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クリント・イーストウッド監督
『ヒア アフター』
自分にとって、いいチャレンジになると思った
映画『ヒア アフター』クリント・イーストウッド監督 単独インタビュー

文・構成:シネマトゥデイ

80歳にして、コンスタントに名作を手掛けるクリント・イーストウッド監督の最新作『ヒア アフター』は、死をテーマにしたヒューマンドラマだ。死を身近に経験した者、身近な人間を亡くした者、そして、死者の声を聞く者。それぞれが死と向き合いながら、生きることの大切さを見いだしていく姿を感動的に描いた本作で、イーストウッド監督は、何を思い、何を訴えようとメガホンを取ったのか。いまだに消えない、映画制作への情熱を交え、本作について語った。

■きっかけは、スピルバーグからの電話

Q:死後の世界を扱うという、監督にとっては初挑戦のジャンルとなる本作を手掛けることになったきっかけを教えてください

(スティーヴン・)スピルバーグが電話をしてきて、僕にぜひ読んでほしい脚本があるんだと言うんだよ。ピーター・モーガンが書いたものだということ以外は、その脚本について何も知らなかった。ピーターと仕事をしたことは一度もなかったけれど、才能ある脚本家なのは知っていたから、すぐに読んでみたんだ。

Q:スピルバーグは本作の脚本に深く感銘を受けたそうですが、監督はいかがでしたか?

とても独創的なストーリーだと思ったよ。同時に、すごく挑戦的な脚本だとも感じた。特に、津波の場面とかね。大変そうだったけれど、この作品を作り上げることが、自分にとっていいチャレンジになると思ったんだ。それで、監督しようと決意した。すぐにスピルバーグに電話して、「これをやるよ!」と言ったんだ。

Q:スピルバーグ監督とは、昔から親しいのですか?

ああ、僕らはとても仲が良い友人だ。スピルバーグは、僕が監督と主演を務めた『許されざる者』の大ファンでね。彼は僕の作品が好きで、僕も彼の作品が好きという関係さ。映画『父親たちの星条旗』『硫黄島からの手紙』を一緒に作ったときは、硫黄島に行くために、彼は自分の飛行機を貸してくれたりもしたんだよ。

■自ら海に飛び込み撮影した迫力の津波シーン

Q:津波のシーンは、とても迫力のある出来でした。何か参考にした資料などはあったのですか?

2004年に太平洋で津波が起きたときに、その場に居合わせた人たちが携帯電話などで撮影した映像や写真なんかを、片っ端から見ていったんだよ。実際に人々が逃げ出そうともがいていたり、木や建物など、すべてが流されていた。とてもショックを受けたと同時に、その資料が、本物の津波とはどういったものなのかというインスピレーションも与えてくれたんだ。劇中で、津波に襲われながら、なんとか生き延びようとする人たちの壮絶なシーンは、そうやってできたんだ。

Q:津波のシーンは、できる限り実写で表現しているのですよね?

そうだよ。完全な津波を作ることは、今の技術だけではできないと思ったからね。水の脅威をコンピューター・グラフィックス(以下CG)のみで表現するのは、とても難しいんだ。例えばSF映画ならば、CGで作り出すのはたいていが空想上のものになるよね。宇宙には、ほとんどの人が行ったことはないから、好きなように作ればいい。でも、今回の津波は違う。みんながニュースを通して見たのと同じものを映像化しないといけなかったんだ。

Q:実際に、ご自身が海に入って撮影したというのは本当ですか?

実際に海に入ることで、カメラ位置などをしっかりと確認することができたんだ。僕は泳ぎが得意でね。今でも泳ぐし、若いときはとてもいいスイマーだった。まあ、どうしてもそうしないといけなかったわけじゃないし、たぶん陸の上から指示することも簡単にできたと思う。でも小さな女の子をはじめ、出演者たちは、水中で演技をするわけだからね、自分が率先して飛び込まずに、彼らを海の中で働かせるなんてことはできなかったよ。

■Eメールを送ったことがない!巨匠のテクノロジー活用術

Q:映画では、インターネットを通じた出会いが描かれます。監督もネット上でコミュニケーションをとったりするのですか?

答えはノーだね。僕はEメールを送ったことも、ましてや携帯電話でメールを打ったりしたことは一度もない。それは、僕の代わりにEメールを送ってくれる秘書がいるからなんだけど(笑)。もちろん、テクノロジーに素晴らしい部分があるのはわかっているよ。僕も自分のiPadにすべての脚本を入れてあるからね。読みたい脚本をタッチすれば、ぱっと出てきてすぐに確認することができるし、バックライト機能があるから、夜に部屋の電気を消して読むことだってできる。でも、だからといってコンピューターに支配されたくはないんだ。

Q:コンピューターに支配されている気持ちになるときがあるのですか?

僕の子どもたちを見ていると、そういう気持ちになるね。娘はずっと携帯でメールを打っているよ。一緒に夕食に出掛けたときなんかは、「携帯は切りなさい。ここに座っている間は、誰かにメールをしないでくれ」と言うんだ。周りの人たちに対して失礼だからね。しかも、どうせメールの内容なんて、意味のないことばっかりなんだから。僕はそういうものがない時代に育ったから、昔は電話でガールフレンドと話をしていたものだけど、今自分が14歳か15歳だったら、娘たちのようなアプローチをするのだろうね。

■生涯現役!興味があればいつでも挑戦

Q:100歳まで監督をしたいと宣言したそうですが、本当ですか?

そんなことは言っていないよ。ニューヨークの映画祭に出席したときに、誰かが、ポルトガルのある監督が、102歳の今も現役で映画を撮っているという話をしていたんだ。だから冗談で、「僕も同じことをするよ」って言ったんだよ。でも、それはあくまでも希望であって、もちろん真剣じゃないよ。

Q:最近は1年に1本、監督をされていますが、これからどのくらいの数の作品を撮っていきたいと思いますか?

40本くらいかな。1日につき1本とかのペースでね(笑)。 それは冗談として、僕はそれぞれのプロジェクトがやって来るたびに楽しんでいるだけだよ。実は、今も取り掛かっている企画がある。『ジェイ・エドガー(原題) / J. Edgar』という作品で、長年FBI 長官を務めたJ・エドガー・フーバーを主人公に、20年代くらいから70年代までのFBIの姿を描いたものなんだが、とても興味深い人物について扱っていて、脚本も本当に面白いんだ。でも、それを撮った後のことは考えていないよ。単なる仕事として、映画を撮ろうとは思わないからね。ただ、すごく興味をひかれる企画があれば、いつでも挑戦したいとは思っているよ。

ほほ笑みを絶やすことなく、心から「映画を作ることの楽しさ」をかみしめるように、本作の撮影秘話を語ったイーストウッド監督。映画『硫黄島からの手紙』で起用した渡辺謙が、監督業のオファーを受けていることを聞くと、「彼ならきっとできる!」とまるで自分のことのように喜ぶ姿がとても印象的だった。俳優として、演じることの楽しさを追求し続け、今も監督として映画制作にその情熱を注ぎ続けているイーストウッド監督には、100歳を超えても、映画界で活躍してもらいたい。

(C)KaoriSuzuki
(C) 2010 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

映画『ヒア アフター』は2月19日から全国公開

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