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役所広司&宮崎あおい
『わが母の記』
息の合った親子役を経て、次回は恋人役で共演希望!?
『わが母の記』役所広司&宮崎あおい 単独インタビュー

取材・文:轟夕起夫 撮影:吉岡希鼓斗

原作は、昭和の文豪・井上靖が自らの人生、家族との実話を基につづった自伝的小説。それを『クライマーズ・ハイ』の原田眞人監督が映画化した『わが母の記』。感動と称賛の声はまず、海の向こうから上がり始めた。第35回モントリオール世界映画祭で審査員特別グランプリに輝き、第16回釜山国際映画祭のクロージング作品となり、その後も各国の映画祭へ。いよいよ日本での公開を前にして、本作で親子を演じた役所広司と宮崎あおいが、『EUREKA ユリイカ』以来、約12年ぶりにがっぷり手合わせをした感想や、作品の奥深い魅力について語った。

■京都ではニアミスだった二人

Q:本作は、栄えあるモントリオール世界映画祭の審査員特別グランプリに輝きましたが、その知らせはお二人にどのように伝わったのでしょうか。

役所広司(以下、役所):この映画のあと、原田(眞人)監督と京都で、同じく井上靖さん原作のテレビドラマ「初秋」の撮影をやっていたんです。で、監督が近くのお寺で樹木(希林)さんから受賞の報を受けて、僕も電話を代わっていただきました。

宮崎あおい(以下、宮崎 ※「崎」は正式には旧字。「大」が「立」になります):わたしもそのときちょうど京都にいて、知りました。

役所:えっ!? あおいちゃんはなんで京都にいたの?

宮崎:映画の撮影です。それが終わって、実は「初秋」の現場も見学に行きました。役所さんとはお会いしていないんですが、監督にはごあいさつをして、役所さんと岩松了さんの共演シーンを、スタッフの皆さんとモニターで見ていました。

役所:なんだ、声を掛けてくれれば良かったのに(笑)。

■スリリングだった名優・樹木希林との共演

Q:「初秋」は、中部日本放送(CBC)開局60周年記念のスペシャルドラマで井上靖の「凍れる樹」が原作。こちらは同著者による「わが母の記~花の下・月の光・雪の面~」の映画化でした。

役所:井上先生の生涯が投影されている、僕の演じた小説家の伊上洪作は、母親に対し「自分は捨てられた」と言い続け、ずっとひねくれていたんです。でも小説を書き続けたエネルギーは「いつか認めてもらいたい」「褒めてもらいたい」という、そういう秘めた気持ちがエネルギーになっていたんだと思うんですよね。だから、その母が記憶を失っていくのはとても切なかった。

宮崎:わたしは、母親役の樹木希林さんが息子の過去……伊上洪作が子どものころに残した「あるもの」を思い出し、役所さんの前で披歴してゆくシーンに胸が熱くなりました。リハーサルのときからスタッフ間で「素晴らしいお芝居」と評判になっていて、撮影当日、モニターで見ることもできたんですけど、完成作までグっと我慢をして。待って良かったです。あの親子のやりとりには本当に感動しました!

Q:圧倒的な存在感で迫ってくる樹木さんを目の前にし、お二人はどのように感じられましたか?

役所:スリルがあって面白かったです。樹木さんはありきたりな役づくりをされる方ではないので、テストからライブみたいな応酬になるんですよね。二人で書斎で話すシーンは、樹木さん、どんどんセリフを言ってきた。台本上では僕のセリフが挟まっていても構わずに。それは、記憶が薄れていく役だから、少々会話が飛んでも成立するわけですよ。無手勝流なようでいて計算されており、的確なアプローチなんです。

宮崎:わたしの場合は、短いシーンでは一対一で向かい合うところもありましたけど、そこまで二人だけというのはなかったんですよね。割とどなたかほかにいて、みんなで話しているシチュエーションが多かったんです。もし役所さんみたいな長いシーンがあったらものすごく緊張しただろうなあ……と、今のお話をうかがっただけで思います。

■監督から参考に薦められた映画とは?

Q:この映画は3代にわたる物語で、宮崎さんがふんした琴子は伊上家3姉妹の末っ子。父親に言いたいことを言い、時折反抗もし、でもやっぱりちゃんと愛されたいと思っている。この複雑なキャラクターをどう咀嚼(そしゃく)し、演じたのでしょうか?

宮崎:台本を一読した時点で、彼女の気持ちがよくわかったんですよね。愛しながらも、父親に対して反発してしまうところも含め、すべてがふに落ちました。現場ではセーラー服の時代から始まったんですが、おさげで前髪をつけた格好をすると、やっぱり中学生の気持ちに戻れる。一家と共に1960年代を生き、だんだんと大人になっていく琴子に近づくには衣装さん、ヘアメイクさんをはじめスタッフの方々の助けがあってこそでした。

役所:一家にああいう文豪で、しかも居丈高(いたけだか)な父親がいると、子どもは大変でしょうね。実際、井上先生もそんな時期があったそうです。琴子みたいな娘が出てきても不思議ではない環境だったといえるかもしれないですよね。

Q:事前に、原田監督から参考として薦められた映画はありましたか?

役所:小津安二郎監督の諸作ですね。『彼岸花』『浮草』『秋刀魚の味』など。あと、イングマール・ベルイマン監督のものも。『野いちご』『冬の光』や『サラバンド』……井上靖さんの世界とこれらの名作がどうつながっていくのか、とても楽しみでした。

宮崎:ベルイマン監督の『鏡の中にある如く』が印象的でしたね。小説家の父親を持つ娘の物語でもあって、完成作を観たときに監督がやりたかったこと、描きたかったことが改めてわかりました。

■二人の本格的な共演は『EUREKA ユリイカ』以来!

Q:役所さんは前々から「原田組」の重要な一員ですが、宮崎さんは今回初参加だったんですよね。

宮崎:そうです。クランクイン前に「原田組は大変」と聞いていて、実際現場では「振り向くときには先に顔を動かし、後から目で追って」と細かい演出があったり、長いシーンでも何度も何度もリテイクを重ねるので、集中力を途切らせないように頑張りました。結果的に、とてもすてきな日本映画が出来上がって良かっです。でも、「原田組」は精神的に強くないと乗り切れないなとも感じました。

役所:あおいちゃんは精神力、強いでしょ。

宮崎:そんなこと、ないですよ(笑)。

Q:お二人は2009年公開の『劔岳 点の記』でも顔を合わされていますが、本格的な共演となるのは『EUREKA ユリイカ』以来、12年ぶりです。そのころから考えると、今、どんなお気持ちですか?

宮崎:今回は親子役でしたが、役所さんの隣に立って様になる大人の女性になりたいなと思いました。できれば恋人役が務まるぐらいの、役所さんに見合う色気がある人になりたいなあと思います。

役所:クランクアップしたときに「次は、恋人役ですね」って言ってくれたよね、うれしかったです(笑)。

宮崎:ぜひ、これからもよろしくお願いします!

インタビュー中、宮崎あおいがふと「頭からケツまで長いシーン」と発言すると、すかさず役所広司が「女の子が“ケツ”なんて言っちゃいけません」とほほ笑みながらたしなめた。「じゃあ、なんて言ったらいいんですか?」と戯れ合うように乗じる宮崎。それは映画の役柄同様、父性と娘心を感じさせる一幕だった。『わが母の記』は、この日本が誇る俳優二人の「研ぎ澄まされた芝居のやりとり」が存分に観られる映画なのである。

【役所広司】
スタイリスト:安野ともこ
ヘアメイク:田中マリ子(ベレッツア スタジオ)
【宮崎あおい】
スタイリスト:藤井牧子
ヘアメイク:中野明海

(C) 2012「わが母の記」製作委員会

映画『わが母の記』は4月28日より全国公開

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