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松たか子&阿部サダヲ
『夢売るふたり』
意外な組み合わせに本人たちもびっくり!
映画『夢売るふたり』松たか子&阿部サダヲ 単独インタビュー

取材・文:シネマトゥデイ編集部・森田真帆 写真:秋山泰彦

映画『ゆれる』や『ディア・ドクター』などで高い評価を受ける監督・西川美和が、男と女の性(さが)を赤裸々に描いた新作『夢売るふたり』。松たか子と阿部サダヲが、火事で全てを失い、結婚詐欺を繰り返すことになる夫婦・里子と貫也にふんする。どの作品でも人間の本性を生々しくあぶり出してきた西川監督演出のもと、演技派で知られる二人がどのような夫婦像をつくり出すのか映画ファンの期待も高まる中、松と阿部が撮影の様子そして共演の感想を語った。

■阿部がバラした、松の「苦手なコト」とは?

Q:松さんと阿部さんが夫婦役、という設定からファンはワクワクしてしまうと思うのですが、共演が決まったときの感想を聞かせてください。

松たか子(以下、松):阿部さんのことは、すてきな先輩の役者さんだと思っていたので、すごくうれしかったです。頑張っていれば舞台でご一緒することがあるかもしれないとは思っていたのですが、まさか映画で、しかも夫婦役というのは思いも寄らなかったです。

阿部サダヲ(以下、阿部):え? 先輩なのかなあ?(笑) 松さんってちょっと遠い存在だったんですよね。お兄さんの市川染五郎さんとは何度か舞台で共演させていただいたことがあったので、僕も舞台でチャンスがあればと思っていました。映画で共演というのはとても意外でしたね。

Q:役者としてはお互いどのような印象を持っていたのでしょうか?

松:阿部さんはどんな役柄でもすいすいと器用に表現できる方なのかなって思っていました。

阿部:松さんはなんだかストイックな印象があって、共演するの怖いなって思っていました(笑)。だって松さん、映画『告白』の中島哲也監督の演出について「すごくゾクゾクして、楽しい現場でした」って言っていたんですよ。あと、入りの時間の2時間前に現場に入るとか、撮影前にものすごいトレーニングをするとかいううわさも聞いていましたし。

松:そこまでしませんよ(笑)!

Q:その印象は現場で変わりましたか?

松:阿部さんが役柄に対して苦悩されている姿を見て、役に入るためのプロセスをきちんと持つ役者さんだってことを知りました。ひらめきや直観力があると同時に、じっくりと役づくりの道のりを嫌がらずに進む方なので素晴らしいです。

阿部:ここまで褒められると、うれしくてボーッとしちゃいますね。松さんは、実際はすごく優しくて、素晴らしい女優さんです。本当に完璧な方なんですが、意外なことに自転車に乗れなかったんですよ(笑)。この映画、自転車に乗るシーンが結構あるんですが、衣装合わせのときに「松さん、午後から自転車練習です」って言われていて。そんなところが、逆に人間っぽくて親しみを覚えました。

■西川監督は、脚本も絵コンテも全てが個性的

Q:里子と貫也が営んでいる小料理屋のシーンは、お二人の息がぴったりでした。夫婦としての空気感はどのように作り出していったのですか?

阿部:撮影の前に、調理を先生のところで一緒に習う時間があったんです。二人でずっとネギを切ったりしてね。そんな時間を過ごすうちに、松さんとの夫婦としての空気感をつかめていった気がします。

松:最初のころは結構いっぱいいっぱいだったのですが、監督が「大丈夫!」って言ってくださったので少しずつ自信をつけていくことができたという感じです。

Q:火事によって二人の人生は一変してしまいます。結婚詐欺を計画するまでの心情はどのようにとらえて演じられたのでしょう?

松:最初に監督と話して「里子は貫也のことがすごく好きで、愛情が冷めていくわけではない」ということを確認したんです。そう考えたら里子の行動も、愛しているが故のものにしていくことができました。貫也のことが好きで、彼と一緒にいるためについてきた行動がたまたま結婚詐欺だった、という感じで。

阿部:そもそも貫也が自分の弱さに負けた行動を取ったことが原因なんですよね。彼がお金を握って里子のところに走っていくシーンは嫌だなあって思って……。監督は人間の嫌な部分を出していくのがうまいんです。

Q:西川監督はどのような演出をされるんですか?

松:監督の絵コンテをちょっとのぞき見したら、里子は時々目がつり上がっていて白目になるんです(笑)。

阿部:絵コンテの僕は、猫みたいに描かれているんですよ。しかも、どんどん猫化が激しくなって、最後は鼻の下に線まで入って「これもう猫じゃん!」って(笑)。あと、台本も個性的でした。貫也がほかの女性と二人で電車の中にいるところを里子が少し離れた席からじっと見ているというシーンなんて、台本には「里子の目が三角になっている」って書いてあったんですよ(笑)。でも実際に出来上がった本編を観るとちゃんと三角に見えるからすごいなあって感心しました。

松:実はわたし、そのシーンについてすっかり勘違いをしていて、その里子は貫也が見た幻だと思っていたんです(笑)。そうしたら、本当に里子が電車に乗っているんだってわかってびっくりしたのを覚えています。

阿部:でもそれわかる! 台本ですごく説明されているわけでもないんです。だから自分が考えていたのと全然違っていたってことが結構あって、そこがまた面白かったりするんですよね。

■観客の反応が今から楽しみ!

Q:完成した作品を観ていかがでしたか? 初めて見るシーンもたくさんあったと思いますが?

阿部:僕が結婚詐欺を働いている間の里子の表情は見えていなかったので、映画になって初めて見て、すごく切なくなりましたね。自転車で出掛ける僕を里子が追いかけてくるシーンがあるんですが、あの表情を見たときに「ごめんね……」って心の底から思いました。

松:貫也が他の女性たちといるときはわたしはほとんど現場にいなかったので、やっぱり台本読んだだけではわからない、こんなふうになっていたのかという新鮮な驚きはたくさんありました。貫也がボコボコに殴られるシーンなんて、ボコボコにされた顔の写真は見せてもらっていたんですけど、実際どこまで殴られていたかは知らなかったので(笑)。

阿部:あそこは本当に何発か入っていて、「僕が謝らなかったら、監督もやめないんじゃないかな」って不安になりました。情けなくてダメなくらいがちょうどいいと思って必死に「ごめんなさい!」って謝りましたよ。ラスト近くは結構壮絶で……松さんも階段から転げ落ちていましたもんね。

松:そう! 鉄の階段をわたしが転げ落ちるシーンがあるんですが、阿部さん、その撮影を見ながら笑っていたんですよ!「ドリフみたい」という、最大の褒め言葉をいただきました(笑)。

Q:これから映画を観る人に、ご自身の役柄のどんなところを見てもらいたいですか?

松:里子って自分の行動を心からは楽しんでいないんです。彼女は人をだませるような器じゃないし、天才的な詐欺師でもない。結局は、普通の女性だったんだなって思うので。この映画を観た方々が里子に共感するのかしないのか、反応がすごく楽しみです。

阿部:今までダメな男は何度か演じてきたんですが、本当にここまでの役は初めてです。僕は演技の中にどこかいい人を入れたくなっちゃうタイプなんですけど、今回はそれが一切できなかった。人間の嫌な部分をここまで引き出すのは西川監督にしかできないことだと思うので、そこを楽しみにしてほしいですね。

現在流れている予告編を見て、二人は「ざまあ見ろ!」とほくそ笑んでいたそうだ。そう、予告編でも里子と貫也は観客をだましている。楽しみながら里子を演じた松と、嫌悪感でいっぱいになりながら貫也を演じた阿部。対照的な二人が夫婦を演じたときの化学反応は超強烈!「この映画って観たあと、3日間くらいずっと語れるよね」と彼らが口をそろえて言う通り、生々しい男と女の性(さが)を観た後は、その感情を誰かと共有したくなってしまうはず。鑑賞後の「語り」を存分に楽しんでもらいたい!

【松たか子】ヘアメイク:華子(HAPP'S) スタイリング:梅山弘子(KiKi inc.)
【阿部サダヲ】ヘアメイク:中山知美 スタイリング:チヨ

映画『夢売るふたり』は9月8日より新宿ピカデリーほか全国公開

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