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今週のクローズアップ 『ボーン・レガシー』公開記念!進化したジェイソン・ボーンシリーズを振り返る

 「従来のスパイものとは一線を画す」として高い評価を受けたジェイソン・ボーンシリーズ3部作。9月28日より公開されるスピンオフ企画『ボーン・レガシー』の公開を前に、旧3部作から本作に至るまで、シリーズがどのような進化を遂げてきたのかをおさらい!
従来のスパイのイメージを一新するアナログ・ヒーロー 『ボーン・アイデンティティー』(2002)

 ジェイソン・ボーンシリーズが、いわゆるスパイものの中で秀でている理由の一つは、記憶をなくし、CIAから追われつつ自分探しの旅を続けるジェイソン・ボーンというキャラクター。記念すべきシリーズ第1作を手掛けたのは、『go』『スウィンガーズ』といったインディーズ映画出身のダグ・リーマン。撮影をカメラマンに任せず自らカメラを回し続ける熱の入れようだったという。通常、こういったアクション大作のカー・チェイスでは高性能の車を使用するところを、あえて小型車を使用するなど、「ストーリーに結び付いた必然性のあるアクション」を追求しているだけに、主人公ボーンも特殊な武器を持たない。ハイテク機器を駆使する「007」シリーズのジェームズ・ボンドとは対照的な、超アナログのスパイだ。日常品を用いてピンチを切り抜けるボーンの機転は本シリーズの見せ場の一つでもあるが、第1作でも、自宅を襲撃した刺客にボールペンで応戦するなど、その片りんが見られる。また、彼が世界各国を股に掛けて謎解きに奔走する設定は、原作者ロバート・ラドラムの現場取材、緻密なリサーチによるもので、ボーンが「世界を相手に一人で戦う」というスケールを際立たせている。

 シリーズ2、3作目の監督を務めたポール・グリーングラスいわく、「ボーンは堕落した世界で真実を求める道徳的な人格であるゆえに孤立していく運命にあるという、今の世相を表したキャラクター」。そんな難役を極力スタントを避け、体当たりで演じたマット・デイモンを、「抑制の利いた演技、肉体的な演技の幅、すべてをやってのける才能の持ち主であり、“銃を愛するマッチョな男”という従来の月並みなヒーロー像を彼が一掃した」と絶賛している。

 

『ボーン・アイデンティティー』より。パリのアメリカ大使館の最上階から壁伝いで下り、CIAの追っ手をかわしていくシーンでは、俊敏で無駄がないボーンの驚異的な身体能力がうかがえる
Universal Pictures/Photofest/ゲッティイメージズ

主なロケ地:パリ、チューリッヒ、イタリア、ギリシャ
殺し屋:“教授”(クライヴ・オーウェン)ほか
敵:CIA幹部コンクリン(クリス・クーパー)
ピンチ時に使用した日用品:ボールペン

アクションに革命をもたらしたゴールデン・コンビ『ボーン・スプレマシー』(2004)

 大ヒットを記録した第1作のダグ・リーマンからメガホンを受け継いだのが、プロデューサーから歴史ドラマ『ブラディ・サンデー』(日本未公開・2002年製作)の腕を買われて抜てきされた、ポール・グリーングラス。インドのゴアで恋人とひっそり暮らしていたボーンのもとへ刺客が送り込まれ、あっけなく恋人を殺されたことからボーンの復讐(ふくしゅう)劇が始まる。ドキュメンタリー畑出身の監督だけに、ポールは「観客にすべてが目の前で起こっているかのような気分を味わわせるため」徹底したリアリティーを追求。手持ちカメラの多用や、リハーサルなしの本番撮影を行うことによって、その場の勢いやインパクトを最大限に表現することに成功した。例えば、カール・アーバン演じる殺し屋が背中からボーンを狙い撃つシーンがそれ。また、ドイツ・ミュンヘン郊外にある家屋での、ボーンと元同僚の工作員との肉弾戦では格闘シーンの振付家ジェフ・イマダの指導のもと、「フィリピノ・カリ」というワザが投入され、目にも留まらぬ俊敏な動きを実現した。戦いの衝撃を表現するブラインドなど、小道具を効果的に用いているところも見逃せない。

 また、クライマックスとなるモスクワでのカー・チェイスにおいて画期的な撮影機材となったのが「ゴー・モビル」。最大出力500馬力、最大トルク500ポンド、街中でも100キロを飛ばせる驚異的な機能を持ったこの車は、操縦席取り外し可能でカメラをあらゆる角度に設置でき、小型のクレーンを取り付けられるため、車を操縦するボーンの視点で周囲を映し出せるほか、疾走する車と俳優の表情を切れ目なく映すことが可能に。その結果、スピード、スピン、衝突など、あらゆる動きの衝撃を生々しく伝えている。こういったアクション・シークエンスの立役者となったのが、ポールが敬愛してやまない、スタント・コーディネーターのダン・ブラッドリー。彼はのちに『007/慰めの報酬』『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』といった大作にも参加し、ハリウッド映画のアクション撮影手法に革命をもたらすこととなった。

 
『ボーン・スプレマシー』より。ボーンがモスクワでのカー・チェイスで使用したのは、タクシー! あくまでも高性能&ハイテクを排除しようとする監督&スタッフのこだわりがあっぱれです
Universal/Photofest/ゲッティイメージズ

主なロケ地:ゴア、ナポリ、ベルリン、モスクワ、ニューヨーク
殺し屋:キリル(カール・アーバン)ほか
敵:CIA幹部トレッドストーン計画責任者アボット(ブライアン・コックス)
ピンチ時に使用した日用品:雑誌、トースター、コード
悪役、アクション、全てのスケールがレベルアップ『ボーン・アルティメイタム』(2007)

 第2作に続いて、ポール・グリーングラスが監督を務めたジェイソン・ボーンシリーズ完結編は、脚本家トニー・ギルロイの発案による時間をさかのぼった構成、前作より増加したアクション・シークエンス、そして魅力的な悪役がポイント。徐々に記憶を取り戻しつつあるボーンが、モスクワでの贖罪(しょくざい)を経てニューヨークへ飛び、CIA内の唯一の味方であるランディ(ジョーン・アレン)に電話をする。ボーンはなぜ、わざわざニューヨークに来て200メートルも離れていない場所から彼女に電話をする必要があったのか……? 登場人物たちの思惑が絡み合い、自分の過去を暴こうとするボーンの謎解きが、いよいよ山場を迎える。今回、ボーンの前に立ちはだかるのは、CIA対テロ極秘調査局長ヴォーゼン(デヴィッド・ストラザーン)。ポールは、「(完結編を飾るのにふさわしい)ボーンとチェスで頭脳戦ができるような、冷酷かつ知的な悪役を求めていた」という。ヴォーゼンは、地球規模の通信傍受機関エシュロンをはじめCIAが持つ最先端の監視技術を駆使し、ボーンの行き先を先読みしながら捜査網を張り巡らせていく。超ハイテクのヴォーゼンVS超アナログのボーン、対照的な二人のいたちごっこのような追走劇が痛快だ。

 アクション・シークエンスが前作より大幅にスケールアップした理由の一つは、撮影を限定された空間で行っていることだろう。例えば、ボーンがトレッドストーン計画を探る記者との接触を試みるロンドンのウォータールー駅のシーンでは、わずか20人程度のスタッフによるゲリラ撮影を行った。ボーン&記者を捕獲しようとするCIAの目をくらませ、ボーンが携帯による遠隔操作で記者を導いていく鮮やかな過程には、思わずニンマリしてしまうだろう。また、タンジールではCIAが放った工作員デッシュとのバイク(ベスパ)でのチェイスも見もの。当初予定していたカー・チェイスがバイクに変更されたのは、混雑している旧市街地では交通手段の中でバイクが最も速いという、土地の事情を考慮した判断によるもの。同じく、常に道が渋滞でカー・チェイスの撮影が困難なニューヨークでは、スピードを度外視し、障害物を利用したピンボール・マシンのような画(え)を目指した。この、クライマックスからラストにかけての急停車と急発進が繰り返される、緩急自在のテンポが本作の肝でもある。記憶を取り戻したボーンがたどり着く、第1作の冒頭を踏襲したラストシーンも見事だ。

冒頭、ロンドン・ウォータールー駅でのCIA対ボーン&記者の追走劇のシーンでは、ゲリラ撮影を敢行。まさか映画の撮影だとは気付かない一般人に、記念撮影やサインを求められることもあったのだとか
Universal Studios/Photofest/ゲッティイメージズ

主なロケ地:パリ、ロンドン、マドリード、タンジール、ニューヨーク
殺し屋:パズ(エドガー・ラミレス)、デッシュ(ジョーイ・アンサー)
敵:CIA対テロ極秘調査局長ヴォーゼン(デヴィッド・ストラザーン)
ピンチ時に使用した日用品:扇風機、タオル、本(ハードカバー)

監督&主演を新たに、ボーンと似て非なるヒーローが登場「ボーン・レガシー」(2012)

 かつてジェイソン・ボーンを暗殺者に仕立て上げたCIAの極秘プロジェクト、トレッドストーン計画の先には、さらなる恐ろしいプロジェクトが進行していた……。ジェイソン・ボーンシリーズの脚本を手掛けてきたトニー・ギルロイが自らメガホンを取り、トレッドストーン計画の実態を暴こうとするボーンと同時進行で動いていた、もう一人の暗殺者の物語『ボーン・レガシー』を生み出した。トレッドストーン&ブラックブライアー計画をアップグレードさせたアウトカム計画の実態とは……? このプロジェクトによる後遺症に悩む主人公アーロン・クロスもまたCIAに命を狙われ、孤独な戦いを強いられていく。国家VS個人の戦いという旧3部作のテーマを踏襲しつつ、『フィクサー』『消されたヘッドライン』といった硬派な社会派ドラマに徹してきたギルロイらしく、ボーンより一層抑圧されたキャラクター像が魅力的だ。計画で薬物の開発に関わった研究員マルタ(レイチェル・ワイズ)との逃避行を描きつつも、極限状況が生む相棒というロマンスとは一線を画した関係が、絵空事と思わせない等身大の物語として共感を誘う。主人公アーロン役に抜てきされたのは、『ハート・ロッカー』でアカデミー賞にノミネートされて以来、『アベンジャーズ』『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』など大作がめじろ押しのジェレミー・レナー。マニラ、ニューヨーク、ソウルなど、旧3部作の中心となったヨーロッパとは雰囲気がガラリと異なる舞台でのアクション・シーンには興奮しっぱなし! ジェイソン・ボーンとは似て非なるアーロンの登場によって、これからいかなる伝説を築いていくのか、続編の制作に乞うご期待!

映画『ボーン・レガシー』は9月28日よりTOHOシネマズ 日劇ほか全国公開

 

来日時に「うちの庭には池があったり日本庭園みたいなんだ」と親日家の一面ものぞかせたジェレミー・レナー。感傷に溺れないストイックなキャラクター、アーロンをハマり役で熱演している
(C) 2012 Universal Studios. All Rights Reserved.

文・構成:シネマトゥデイ編集部 石井百合子

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