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ぐるっと!世界の映画祭
ぐるっと! 世界の映画祭 第9回 タリン・ブラックナイト映画祭

バルト海の東側に位置するエストニア。冬は午後3時ぐらいから街は闇に包まれ始めます。そんな長い夜を楽しむために生まれたのが、首都タリンで毎年11月に開催されるタリン・ブラックナイト映画祭。2012年11月12日~28日に開催された第16回大会を、公益財団法人ユニジャパン国際事業部の筆坂健太さんがレポートします。

旧ソ連独立後にスタート

タリン・ブラックナイト映画祭
映画祭のメイン上映館はショッピングモール内にあるシネコン

2012年、エストニア映画は生誕100周年を迎えた。だが映画祭は旧ソ連から独立後の1996年にスタートしたばかり。エストニアを中心とするバルト3国(リトアニア、ラトビア)の映画人育成と、隣接する北欧映画界との交流が目的だ。近年、規模を拡大しており、第16回大会は長編266本の上映と6万7,000人の観客を動員。

タリン・ブラックナイト映画祭
国際コンペティション部門で審査員を務めた『かぞくのくに』のヤン・ヨンヒ監督

日本映画の紹介も積極的に行われており、第15回大会では塚本晋也監督『KOTOKO』が国際コンペティション部門で最高映画表現者賞を受賞。第16回大会ではヤン・ヨンヒ監督が国際コンペ部門、女優・プロデューサーの杉野希妃がバルト映画部門の審査員を務めたほか、日活映画100年の特集上映も行われた。

日本&エストニア、合作もアリ!?

タリン・ブラックナイト映画祭
アジアの合作状況を語り合うシンポジウムに参加した筆坂健太さん(写真左から2人目)

筆坂さんは、海外への日本映画の情報発信を業務としている。今回はマーケット部門で開催された、エストニアとアジアの共同製作の可能性を探るシンポジウムに登壇するため、映画祭の招待を受けた。日本では、文化庁による国際共同製作映画支援事業が平成23年度(2011)に新設されて大きな一歩を踏み出したばかり。

タリン・ブラックナイト映画祭
映画祭会場の様子

「今回もフィンランドとカザフスタンのプロデューサーから相談を受けました。しかし作品の題材が忍者で、外国人がイメージする旧態依然の『芸者・富士山・新幹線』のような日本を描こうとしているので、そこに日本企業が出資・配給するのは難しいでしょう。先方の日本に対する勉強不足を感じる一方、こちらも情報発信がまだまだ足りないなと痛感します」と筆坂さん。ただし日本よりも安価でできるため、エストニアで編集作業を行う日本映画も出てきているという。

ジャストサイズの映画祭

タリン・ブラックナイト映画祭
人でにぎわうバルト3国の企画マーケット

筆坂さんは今回、4泊5日の滞在。マーケット部門で、他国の映画祭関係者との情報交換が中心だったため、作品を観賞する時間はあまりなかったという。しかしカンヌ、トロントと映画祭を渡り歩いているとラインナップを見ただけで傾向がわかるという。

タリン・ブラックナイト映画祭
閉会式では、コーラス隊の歌声に乗って審査員一人一人が紹介された

「他の映画祭で話題になった作品が中心ですね。エストニアで外国映画を観る貴重な機会だと思いますが、日本映画も含め、もう少し若手にも注目してほしいですね」。ただし、上映会場に宿泊、観光と全て徒歩圏内にある環境の良さは称賛する。「加えて治安も良いし、スタッフをはじめ住民の英語能力が高く、どこへ行ってもストレスを感じなかった。ソ連崩壊後の、国策としての英語教育が行き届いていると感じました」。

蜂蜜にビール!?

タリン・ブラックナイト映画祭
エストニアは豚肉料理が有名。ホテルの朝ごはんのビュッフェでは、豚のにこごり(シュルトゥ、写真手前)やミートボールも

城壁に囲まれた旧市街には、当時の面影を残した建物で地元料理を味わえる場所が多数ある。豪商の館を改築した「オルデ・ハンザ」では、エストニア名物の蜂蜜ビールやトナカイジャーキーも味わえる。「わたしの口に蜂蜜ビールは合わなかったのですが(苦笑)、食事は全般においしかったですね」。

タリン・ブラックナイト映画祭
空港、ショッピングモール、街中にも寿司店が多数。市内にあるSUSHI CATは、日本アニメに感化された内装&ウエイトレス姿で楽しませてくれる

また空港のショピングモールとSUSHIレストランの多さにも驚かされる。中でもコスプレした店員とJ-POPが迎えてくれるSUSHI CATは、地元の若い人たちに人気。「日本のポップカルチャーがここまで届いているのかと衝撃的でした。忍者や芸者同様、その国にないものが受け入れられやすいということなのでしょうね」。

旧市街は世界遺産!

タリン・ブラックナイト映画祭
情緒ある中世の街並みであるタリン

日本からは欧州各地で乗り換えてタリンへ。空港から街の中心地まで車で約15分という便利さだ。映画祭では海外ゲスト用に市内観光バスツアーを無料で用意してくれ、筆坂さんも参加。巨大な砲塔のあるエストニア海運博物館やトーンペア城など歴史的建造物に酔いしれた。

タリン・ブラックナイト映画祭
歌の原。広大な敷地が広がる

「中でも、5年に1度の歌と踊りの祭典が開催される『歌の原』は圧巻でした。2万5,000人による大合唱を、約10万人の観客が見守るそうです」。次回は2014年7月の開催予定。

新たな文化発信に期待

タリン・ブラックナイト映画祭
映画祭マスコットのオオカミをモチーフにしたカラフル&手作り感あふれる映画祭グッズ

同国では2011年末に映画生誕100周年を記念して「零年における60秒の孤独」と題した一大イベントを開催。河瀬直美監督ら世界の巨匠らが60秒の短編を製作して一夜だけの競演を果たした。そのイベントや映画祭を含め、スタッフは若手が中心だ。「彼らが面白いこと、新しいことをしようとする意気込みを感じます」と筆坂さん。また映画評論家ステン-クリスティアン・サルベール氏が日本に滞在しており、彼が日本とエストニアの交流の橋渡し役となっている。

レポート・写真:筆坂健太
編集・文:中山治美

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