シネマトゥデイ

宮藤官九郎監督、坂井真紀、仲村トオル
『中学生円山』
妄想は夢! どこまでも飛んでいっていいんだよ
『中学生円山』宮藤官九郎監督、坂井真紀、仲村トオル 単独インタビュー

取材・文:小島弥央 写真:吉岡希鼓斗

毎日、妄想に明け暮れる中学2年生の克也が、同じ団地に越してきた謎のシングルファーザーと出会ったことで成長していく『中学生円山』。宮藤官九郎監督にとって、『少年メリケンサック』以来、4年ぶりの監督作品となった本作で、大好きな韓流ドラマのスターが突然目の前に現れ、のめり込んでいく克也の母を演じた坂井真紀と、食後のフルーツだけを生きがいにしている克也の父を演じた仲村トオルが、宮藤監督と作品の裏側について語り尽くした。

■なかなか理解してもらえなかった3作目!

Q:なぜ団地を舞台に、中学生を主人公にした映画を作ろうと思われたのですか?

宮藤官九郎監督(以下、監督):映画を3本撮りたかったんです。2本では映画監督と言ってはいけないような気がしていて、それだけ3本目が大事だったんです。そこで、自分のカラーを出せるものはないかなと思ったときに、ふと団地の中にシングルファーザーのおじさんを見つけて、中学生がそれを「子連れ狼」だと思い込むという話を思い付いたんです。そこから広げていって、そういえば、僕も中学生のときは妄想するのが好きだったし、それと同時に性的な芽生えがあって、自分だけが頭のおかしいことを考えているんじゃないかともんもんとしていたことを思い出して、そういう映画を作ってみようと思ったんです。でも、元が股間をなめる話なので(笑)。

Q:よく映画にできましたよね(笑)。

監督:そうなんですよ。「こんな壮大な話なんだ」と説明しても、いろいろな人に聞き返されたので、「台本を作ってみたらわかってもらえるかな?」と思って台本を書いてみたんですけど、それでも「わからない」と言われて(笑)。それで時間がかかっちゃったんですよね。「よく映画にしていいって言われたね」とそういう褒め方をされます。複雑な気持ちになりますけど(笑)。映画を観て「わからない」とはまだ言われていないので、自分が思い描いていたのは、間違いではなかったんだなと思っています。

Q:坂井さんと仲村さんを、克也の両親としてキャスティングした理由は何だったんですか?

監督:バランスを考えたときにピタッときたんだと思います。旦那さんにも子どもにも、生活にも何の不満もないのに、たまたま自分が好きだった韓流ドラマの役者さんが家に訪ねてきたものだから、それが崩れかけるというお母さんのエピソードを盛り込もうと思っていて、大真面目に描くこともできたんですけど、そうじゃないなと思ったんですよね。それで、坂井さんがいいなと。重たくならないんだけれども、女としての現役感がある感じが(笑)。それで、何の不満もないお父さんは、(克也の空想の中で)キャプテンフルーツになるという設定にしていたので、どちらもトオルさんがやったら不思議な感じがするだろうなと思ったんです(笑)。

■仲村トオルこん身のキャプテンフルーツ!

Q:お二人は、オファーを受けて率直にどう思われましたか?

坂井真紀(以下、坂井):わたしは宮藤さんの作品がとても好きなので、まずとてもうれしかったです。台本を読ませていただいて、爆笑しながら泣いちゃいました。冒頭の「家族が宇宙人だったら……」とか、「外国人だったら……」という妄想に、「わかる。わかる」って、すごく共感して。わたし、こういうのに弱いんです(笑)。これってすごく深いんですよ。「自分って何者なんだろう?」というところまで行き着くんですから。だから泣いちゃうんです。

監督:冒頭も冒頭じゃないですか。まだ始まって1分もたっていない(笑)。

仲村トオル(以下、仲村):僕は本を読んですごく面白かったのでやってみたいと思ったんですけど、キャプテンフルーツの衣装が変なのだったらイヤだなと。それで、「キャプテンフルーツの衣装はどんなものですか?」と、その一点だけ聞いてもらいました(笑)。

監督:それって、受け取り方によっては、キャプテンフルーツをすごくやりたがっていたようにも聞こえますよ(笑)。

仲村:演劇雑誌で、松田龍平くんがとんでもないロボットの衣装を着せられているのを見て(宮藤が手掛けた「大パルコ人 メカロックオペラR2C2 ~サイボーグなのでバンド辞めます!~」にて)、「これだったらできない……」と思ったんです(笑)。そうしたら、もろにバットマンの写真を送ってきてくださったので、これなら大丈夫だと。……ま、全然違いましたけどね(笑)。

Q:キャプテンフルーツのアクションシーンでは何を意識されたのでしょうか?

監督:いろいろ観たんですけど、ワイヤーアクション的なものは、もう見慣れてしまったなと思ったんですよね。それで、ワイヤーアクションは、ゴミを捨てるときに高く飛ぶとか、そういう使い方にしました。キャプテンフルーツのアクションに関しては、伝統的でオーソドックスなものにしました。

仲村:とにかく撮った日が暑くて、「暑いな。動きにくいな。でも、今日中に撮り終えないとな」と。「カーディガン!」と言って、カーディガンを取り出すシーンがあるんですけど、あれなんて本になかったですからね(笑)。その場で監督から「『カーディガン!』ってジャンプして。そうしたら、カーディガンが出てきます。それを坂井さんに掛けて、『見せすぎだ』と言って」と言われて、もう言われるがまま何のちゅうちょもなくやっていました(笑)。

監督:クランクアップの日だったので、特に迷いがなかったですね。僕が何を言っても「はい」と言ってやられていましたよね。

仲村:全編、迷いなくやっていたつもりなんですけどね(笑)。

■お父さんのモデルは、宮藤監督の父親だった!

Q:お二人とも「一見まともだけど、どこか変」というキャラクターを演じていますが、監督からお二人への演出はどのようなものでしたか?

監督:お母さんに関しては、段階を追ってちょっとずつタガを外して、相手を誘惑していくのが大事だったんですよ。自分の気持ちをわかってほしいんだけど、いきなり冷蔵庫は倒さない(笑)。ちょっとでも長引かせたくて、楽しんでいるんです。そして、まだ旦那さんと恋愛していた頃のことを思い出してくる。という話をしましたね。

坂井:洋服も、昔のものを引っ張り出してきた感じとか(笑)。かわいいんです。

監督:お父さんに関しては、最後まで何も気付かない。ただ息子が裸で踊っている姿を見ただけで、お父さんの中では最初から最後まで何も起こっていないんですよ。その感じを出したくて、毎日、果物を買って帰ってきて、そこだけは厳しく「食べないのか、食べなさい」と言う(笑)。うちの父親がまさにそうだったんです。

Q:ということは、お父さんのモデルは宮藤監督のお父さんだと?

監督:そうですね。うちの父親は、家族団らんをすごく大事にする人で、家族全員でご飯を食べた後に、NHKの「連想ゲーム」を見ながら果物を食べて、答えを当てるというのが絶対だったんです。どんなにグレても「こっちこい」と言われたら「わかったよ」と悪態つきながらテレビの前に行って。大事な男性チームですからね、僕も(笑)。そういう父親ですから、息子が大きく踏み外したときは、あまりのことに何も言えないんじゃないか、と。それで、やっと言えた一言が「何があってもおまえの味方だ」なんです。まあ(仲村演じる)お父さんの場合は、裸踊りしている息子に対して言ったわけですけど(笑)。裸踊りをしている息子に対して「果物を食べろ」とは言えても、「裸踊りをやめろ」とは言えなかったんです。自分の想像の範囲を超えちゃっているから。それぐらい、はみ出さない人、殻を破らない人を演じてほしいなと思いました。

仲村:父である克之が、克也に「何があってもおまえの味方だ」と言うしかない感覚は、よくわかりましたからね。

坂井:わたしも、テレビでずっと見て憧れていた人が目の前に現れてどうにかしようと思う、そのファン心理は共感しました。だって、なんとかしたいと思いますよね(笑)。

■「その妄想、大丈夫だよ」と言ってあげたい

Q:いろいろなことが感じられる映画だと思いますが、特にご覧になる方に伝えたいことはありますか?

監督:もう何年もしていなかった話を、この映画を機にみんなでし合ったらいいなと思います。「そういえば、ああだったわ」とかね。最初は「そんなことしていないよ」と言っていても、話しているうちに思い出してくるじゃないですか。その感覚を持ち帰ってほしいなと思いますね。

仲村:今のよりいいコメントか……(笑)。僕が言いたいのは、無力なんだけどやりたいことはいっぱいあるというときに、想像の翼を広げてとんでもないところまで行ってしまってもいいんだよ、ということですかね(笑)。自分を振り返ってみても、現役中学生に「その妄想、大丈夫だよ」と言ってあげたいです。

坂井:妄想シーンがすごく面白いし、それがたくさん詰まっているのがこの映画の見どころだと思うんですけど、妄想って夢に近いもので、かなえたいことを心の中でうずうず考えている状態だと思うんですよね。そういう「想い」がたくさん詰まっている映画だと思うので、観て下さった方々が自分の「想い」と向き合って、それがどんなにくだらないことでも、自分の夢に近づいてくれたらうれしいです。

作品のことを語れば語るほど、爆笑が巻き起こったインタビュー。年齢を重ねてもいつまでもかわいらしさを失わない坂井と、どんな状況でも常にブレない印象のある仲村、そんな二人をキャスティングした理由には、思わず納得。そして、克也のお父さんが、宮藤監督の実の父親をなぞったものだったということにビックリさせられた。監督自ら、「団地に住んでいること以外、主人公の克也は自分そのもの」と語っていただけに、本作はこれまでで最も宮藤官九郎らしい一本だと断言できるだろう。

衣装協力:08サーカス/Mインク 坂井真紀スタイリスト:市井まゆ

映画『中学生円山』は5月18日より公開

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