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映画『許されざる者』撮影秘話 北海道の緊迫感で張りつめた撮影現場に潜入

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『許されざる者』撮影秘話

クリント・イーストウッドの名作を、李相日監督・渡辺謙主演で新たな息吹を吹き込んだ映画『許されざる者』がついに完成した。北海道・上川町に作られた巨大なセットで、極寒に耐えながら作られた本作の、スタッフ・キャストたちの熱き思いとは!? 撮影時の秘話を交えて、作品の見どころを紹介する。

『許されざる者』オフィシャルサイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/yurusarezaru/

日本版『許されざる者』が誕生

クリント・イーストウッドが監督・主演を務めたオリジナルの『許されざる者』は、1993年に公開され、その年の第65回アカデミー賞で9部門にノミネート、作品賞をはじめとする4部門を受賞した。この名作に惚れ込んだ映画『悪人』『フラガール』李相日監督が、自ら日本のワーナー・ブラザースに企画を持ち込み、実現。1880年の北海道を舞台に、江戸幕府側の剣豪だった主人公が生活苦のため、賞金を目当てに一度捨てた刀をとり再び戦いへ身を投じる姿を描く。

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『許されざる者』
これが日本の『許されざる者』! (C) 2013 Warner Entertainment Japan Inc.

オリジナルと日本版の大きな違いは、主人公たちが背負った業の深さだ。数々の悪事を働いた伝説的なアウトローという設定だった主人公は、多くの志士を斬(き)り倒した江戸幕府の残党・釜田十兵衛として、オリジナル版でハックマンが演じた凶悪な保安官は、蝦夷地で自らの居場所を見つけ出した下級武士・大石一蔵として描かれる。生きるために人を斬ってきた男たちの背負った十字架は、物語にさらなる重みを与え、李監督は映画『悪人』に続き、またしてもわたしたちに「正義とはなにか? 悪とはなにか?」を問うのである。

渡辺謙vs.佐藤浩市 名優が見せた、魂の対決!

『許されざる者』
渡辺謙と佐藤浩市が本格共演を果たしたのは、実は本作が初めて (C) 2013 Warner Entertainment Japan Inc.

日本映画界を牽引するトップスターである渡辺と佐藤浩市が本格共演を果たしたのは、実は本作が初めて。なかでも、渡辺演じる釜田十兵衛を、佐藤が演じる大石一蔵が凄惨な暴力でねじ伏せるという、思わずスクリーンから目をそらしたくなるほどの凄惨さで描かれる、二人が初めて対峙するシーンは、渡辺が「十兵衛を完膚なきまでたたきのめす一蔵と、それを受け止める十兵衛。痛みや砂をかむような思いが、そこにあるのかと追求されました」と述懐する通り、李監督の求めるリアルに二人の名優が応える形となった。

『許されざる者』
寒さと長時間の撮影により追い詰められた極限の精神状態が伝わってくる (C) 2013 Warner Entertainment Japan Inc.

一方的に暴力の応酬を受ける渡辺と、ビンタを張り、蹴り倒し、殴り続ける佐藤の鬼気迫る表情からは、寒さと長時間の撮影により追い詰められた極限の精神状態が伝わってくる。沈黙の中で、渡辺の頬を張る乾いた音だけが響き渡る撮影中には、本気のぶつかり合いにスタッフが止めに入る一幕もあったという。ごまかしの一切ない役者同士のぶつかり合いは、息を呑む迫力で観客に迫ってくることだろう。

■ 小池栄子と忽那汐里が女優人生を懸けて臨んだ女郎の悲哀!

『許されざる者』
女郎たちを演じるのは、若手女優として活躍を続ける忽那汐里と、演技力に高い評価を受けている小池栄子 (C) 2013 Warner Entertainment Japan Inc.

暴力に支配された町で虐げられ、正義を乞うこととなる女郎たちを演じるのは、若手女優として活躍を続ける忽那汐里と、演技力に高い評価を受けている小池栄子。ときに氷点下にもなる北海道の厳しい寒さの中、薄い着物一枚で震えながら演じ続けた彼女たちの表情は、貧しさゆえに体を売る女性たちの切なさを見事に体現。物語に、さらなる深みを与えている。。

『許されざる者』
なつめ役の忽那は、実際に夜の世界に生きる女性から話を聞いて役づくりに励んだ (C) 2013 Warner Entertainment Japan Inc.

初の女郎役となった小池と忽那は、クランクイン前から何度も読み合わせを重ねて、女郎たちの心を探っていったそう。北海道入りした後は、女郎部屋の女を演じた、地元劇団の女優たちと話し合いながら、女郎の切ない心情を掘り下げたという。物語のきっかけとなる、顔を切り刻まれる女郎・なつめ役の忽那は、実際に夜の世界に生きる女性から話を聞いて役づくりに励んだ。これまでにない難役を見事に演じてみせている。

厳しい環境に耐えた、若手俳優たちの成長!

『許されざる者』
アイヌの血を引く青年という難役に、撮影中はもがき続けていた柳楽優弥 (C) 2013 Warner Entertainment Japan Inc.

渡辺演じる十兵衛、柄本明演じる馬場金吾とともに、賞金稼ぎのために人殺しを決意する若者・吾郎を演じている柳楽優弥は、本作で大きな成長を遂げた。アイヌの血を引く青年という難役に、撮影中はもがき続けていたといい、現場で渡辺から「柳楽のセリフからは何も伝わってこない」という厳しい言葉を投げつけられたという。だが、それは渡辺の本作にかける情熱がゆえ。李監督や渡辺から、叱咤されながら、柳楽は人を殺めることへの恐ろしさを痛切に感じ、苦しむ青年の心情を見事に演じてみせた。

『許されざる者』
人を殺すという罪の重みが、観る者の心にのしかかる (C) 2013 Warner Entertainment Japan Inc.

また女郎・なつめの顔を切り刻んでしまった与之助を兄に持つ、気弱な卯之助を演じた三浦貴大にも注目だ。賞金を狙ってやってきた十兵衛たちに最初に殺されることとなる卯之助の絶命シーンで、李監督からは「一番罪のない男だからこそ、悲壮感を出したい」という思いを告げられたという三浦。血を吐きながら地を這い、もだえ苦しみながら死んでいくその姿からは、人を殺すという罪の重みが、観る者の心にのしかかることだろう。

■ 李相日がみせる、妥協なき演出

『許されざる者』
李監督と渡辺謙 (C) 2013 Warner Entertainment Japan Inc.

本作を観て、まず目に飛び込んでくるのは北海道の荘厳な雪景色。李監督は、ロケハンを進めていく中で、北海道の奥地にあるこの場所を即座に撮影場所として決定したのだという。だが、移ろいやすい山の天気は、スタッフたちの想像をはるかに超えるほどだったそう。本作のクライマックスである、一軒の家屋が雪の中で業火に包まれるシーンの撮影では、「吹雪が欲しい」と、スタッフ、役者と共にひたすら吹雪を待ち続けた。李監督の執念によって作り出された映像は、CGでは決して表現できない、美しい映像美でスクリーンに映し出される。

『許されざる者』
演技だけではないところからにじみ出る役者たちのリアルに目を向けてみてもらいたいと李監督 (C) 2013 Warner Entertainment Japan Inc.

また、妥協なき演出は役者にも向けられた。柄本演じる金吾が、一蔵から拷問を受けるシーンでは、実際につま先が地面から浮いてしまうほど柄本を吊し上げた。李監督は「リアルが全ていいというわけではない。僕が表現したいのは、役者の身の内からでる表情や目に出るリアルなんです」と語った。演技だけではないところからにじみ出る、役者たちのリアルに目を向けてみてもらいたい。(取材:シネマトゥデイ編集部 森田真帆)

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