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今週のクローズアップ F1映画ベスト3!迫力のレースとその裏側

 題材となることが珍しいF1の映画で名作と呼べるのは『グラン・プリ』『アイルトン・セナ ~音速の彼方へ』『ラッシュ/プライドと友情』の3本だろう。それぞれの作品で映し出された迫力のレースとその裏側にあるヒューマンドラマに注目し、この3本が名作であるゆえんに迫る。

再現ではなく実際のレース映像!『グラン・プリ』

 ジョン・フランケンハイマー監督が手掛けた本作が異質なのは、1966年のF1グランプリに同行し、実際のレースが行われる中で映画を撮るという画期的な方法を採用した点だ。地上から、ヘリコプターから、1961年のワールドチャンピオンであるフィル・ヒルが運転するマシンに搭載したカメラから……と16台の特別仕様のカメラで撮影された本物のレースは、「観客にレースを体感させたかった」というフランケンハイマー監督の言葉にたがわない迫力。これらの映像を1966年当時に実現したという事実に加え、今やハリウッドのクルーが商業的に巨大化したF1グランプリに付いて回って映画を撮ることなど不可能に近いことからも奇跡的な作品だといえる。

 また、オープニングを飾るモナコGPでは劇伴音楽を使用しておらず、まさにF1のエンジンそのものが音楽といったところ。音響効果スタッフはテープレコーダーをヨーロッパに持参し全てのマシンに搭載、あらゆるマシンのエンジン音と全てのギアチェンジの音をそのまま録音し、足りない音はフィル・ヒルらに協力してもらいアメリカで撮り直したという。ギアチェンジの多さで知られるモナコGPのモンテカルロ市街地コースにおいて、エンジン音もギアチェンジもドライバーの動きに完全に合わせるという離れ業を成し遂げ、第39回アカデミー賞では音響効果賞、音響賞、編集賞の3部門で受賞した。

 そんなF1グランプリの裏側にある人間ドラマを演じたのは、アメリカのジェームズ・ガーナー、フランスのイヴ・モンタン、イギリスのブライアン・ベッドフォード、イタリアのアントニオ・サバト、そして日本の三船敏郎と国際色豊かな俳優陣。それぞれに思いを抱えて命を懸けたレースに挑む男たちの内面描写は前述の音響効果によってさらに掘り下げられており、ラストシーンのエンジン音には魂を揺さぶられる。また、当時の「ホンダ」を思わせる、三船演じる矢村がオーナーを務める「ヤムラ」チームの活躍にも思わず胸が熱くなるはず。

 

ブルーレイ『グラン・プリ』発売中
価格:2,500円(税抜き)
スタジオ:Warner Home Video
(c) 1966 A Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

イギリスのサーキット、ブランズ・ハッチで撮影中のジェームズ・ガーナーと三船敏郎
Victor Blackman / Getty Images
“音速の貴公子”が抱えた深い孤独『アイルトン・セナ ~音速の彼方へ』

 『アイルトン・セナ ~音速の彼方へ』は、アイルトン・セナが1994年にレース中の事故により他界してから16年を経て、初めて作られたドキュメンタリー映画。各国メディアから提供された大迫力のレース映像やインタビュー、家族の証言や貴重なプライベート映像を織り交ぜ、34歳の若さでこの世を去った天才ドライバーの実像に迫った意欲作だ。

 脚本と製作総指揮を務めたマニシュ・パンディは「アイルトンが何を考えていたのか、また、サーキット上だけでなく、彼自身とF1の世界に対してどんな葛藤(かっとう)を抱えていたのか」を示したかったと語っている。それだけに本作が映し出すのは、天性のドライビングテクニックと甘いマスクでファンを魅了し“音速の貴公子”の愛称で親しまれたセナの、人懐っこい笑顔の裏に隠された苦悩の日々。チームメートだったアラン・プロストとの確執に始まり、プロストに肩入れするFISA(国際自動車スポーツ連盟)会長からの圧力などF1の政治性の前に孤独な戦いを強いられるも、「誰よりも速く走りたい」という純粋な思いを諦めなかったセナの姿を浮き彫りにした点で、優れたドキュメンタリーといえるだろう。これ以上はないというほどにセナと仲が悪かったプロストが、本作を肯定しているという点も興味深い。

 

ブルーレイ『アイルトン・セナ ~音速の彼方へ』発売中
価格:1,886円(税抜き)
発売元:ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント
(C) 2010 Universal Studios. All Rights Reserved.

正反対の2人の熱いライバル関係『ラッシュ/プライドと友情』

 ジェームス・ハントニキ・ラウダという性格もドライビングスタイルも正反対の2人の天才レーサーがトップを争った1976年F1グランプリを映画化した本作。ロン・ハワード監督は、実際のサーキットで本物のマシンをレーサーに運転させて撮影した映像に当時の記録映像とCGをまぜ込み、F1史に残る迫力のレースの数々を再現した。撮影を担当したのは映画『スラムドッグ$ミリオネア』でアカデミー賞に輝いたアンソニー・ドッド・マントル。マシンの上、下、排気管の上、屋根の上など1シーンのために30台以上のカメラを設置してあらゆる断片を撮影したほか、観客をドライバーの視点に立たせるべく、ドライバーのヘルメットにもカメラを取り付けたという。そのため、完成したレースシーンは、1976年のレースを細部まで忠実に表現しているのはもちろんのこと、観客を作品に没入させる力を持った大迫力の映像となった。

 また、本作で特筆すべきは、F1ファンでなくとも魅了されるであろう、クリス・ヘムズワース演じるハントとダニエル・ブリュール演じるラウダのドラマチックなライバル関係だ。ドライビングテクニックも私生活も情熱型のハントとレース運びも人生も頭脳派のラウダという一見相容れない二人が、レースに命を懸ける者しか理解できない部分で通じ合う。2人の男の心理ドラマを一級のエンターテインメント作品に昇華させた『フロスト×ニクソン』でもハワード監督とタッグを組んだピーター・モーガンが脚本を手掛けているとあって(そもそもモーガンがハワード監督に話を持ち掛けた)、本作はレースシーンというエンタメ要素を備えた真の人間ドラマになっている。

映画『ラッシュ/プライドと友情』は公開中

 
シリーズ最終決戦の舞台は雨に煙る富士スピードウェイ
撮影のアンソニー・ドッド・マントル
クリス・ヘムズワースふんするジェームス・ハントとダニエル・ブリュールふんするニキ・ラウダ、画像下は本人 (C) 2013 RUSH FILMS LIMITED / EGOLITOSSELL FILM AND ACTION IMAGE.ALL RIGHTS RESERVED.

文・構成:シネマトゥデイ編集部 市川遥


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