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今週のクローズアップ お騒がせ人工知能に翻弄される人間たち

 偶然にも6月28日から『her/世界でひとつの彼女』『トランセンデンス』という人工知能を取り上げた2作品が公開される。今週はこの2作品を含め、映画に登場する印象的な人工知能の数々と、彼らがどのように人間を翻弄(ほんろう)したのかをピックアップ!

『her/世界でひとつの彼女』セクシーボイスのサマンサ

 サマンサ(声:スカーレット・ヨハンソン)は、個性も意識もある世界初の人工知能型OS。抜群の情報処理能力による知的なセクシーさに加え、初めて目にする世界にときめく純真さを兼ね備えており、声だけの存在でありながら、1年前の妻(ルーニー・マーラ)との破局をいまだに引きずるセオドア(ホアキン・フェニックス)をも夢中にさせてしまう。

 サマンサはその魅力と進化のスピードでセオドアを翻弄するが、セオドアに夢中なのはサマンサも同じ。二人の関係のために努力するもセオドアの心ない言動に傷つけられるなど、むしろ翻弄されているのはサマンサの方といえるかもしれない。鬼才スパイク・ジョーンズ監督が長編映画では初めて単独で脚本を執筆。現代性とオリジナリティーにあふれながらも普遍性のあるラブストーリーとして、第86回アカデミー賞脚本賞を受賞した。

 

セオドア(ホアキン・フェニックス)とサマンサ
Photo courtesy of Warner Bros. Pictures

『トランセンデンス』天才科学者の意識をアップロードしたPINN

 主人公ウィル・キャスター(ジョニー・デップ)は、人工知能PINNを開発・研究する天才科学者。ウィルは反テクノロジーの過激派組織のテロによって致命傷を負うが、彼をこの世にとどめておきたい妻エヴリン(レベッカ・ホール)によって彼の意識がPINNにアップロードされるや、人類の未来を脅かすほどの究極的な進化を始める。メガホンを取ったのは、『インセプション』で第83回アカデミー賞撮影賞を受賞した撮影監督ウォーリー・フィスター

 天才でありながら、妻を深く愛し、毎朝クロスワードパズルを楽しむだけのシンプルな男だったウィルが、アップロード後は軍事機密、金融、政治、個人情報などあらゆるデータを貪欲に手に入れ、不死身の軍隊まで作り上げていくさまに人類は戦々恐々。次第に一番近い存在のエヴリンまでもが、アップロード後のウィルは別の“何か”に変わってしまったのかという疑念を持たずにいられなくなる。なお、一番大変な目に遭っていると思われるのは、キャスター夫妻の友人で神経生物学者のマックス(ポール・ベタニー)。あまりその夫婦に関わらない方がいいですよとアドバイスしたくなる。

 

ジョセフ(モーガン・フリーマン)、ブキャナン捜査官(キリアン・マーフィ)、エヴリン(レベッカ・ホール)、そしてアップロードされたウィル(ジョニー・デップ)
© 2014 Alcon Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

『2001年宇宙の旅』人工知能界のカリスマHAL 9000

 HAL 9000は、木星探査のための宇宙船に搭載された、人間の脳の動きを正確かつ驚異的速度で再現できるコンピューター。船の頭脳および中枢神経で、冬眠状態のクルーの監視役も務めている。9000シリーズは最も正確なコンピューターで、過ちを犯した9000は“一人”もいないとされていた。映画史に残るスタンリー・キューブリック監督の1968年のSF作品。

 「船の全活動を監視するのが任務ですので常に多忙ですよ」と誇りすら感じさせる口調で語り、乗組員からもメンバーの一員と評価されていたHALだが、なぜか間違った故障予告を開始し、それに危機感を抱いた乗組員が彼の回路を切ろうとしていることを察知すると豹変(ひょうへん)。船の全てを取り仕切っているのをいいことに次々と乗組員を殺し始める。矛盾する二つの指令に耐え切れなくなったこと、そして与えられた使命を拡大解釈したことがこの反乱の原因とされる。声質とセリフのタイミング、そして赤い目のようなビジュアルを含め、そのカリスマ性は人工知能の中でも随一。

 
HAL、もう勘弁してくれ~ - デビッド役のケア・デュリア
Kobal/MGM/The Kobal Collection/WireImage.com
『銀河ヒッチハイク・ガイド』実はアップル製(!?)のディープ・ソート

 ディープ・ソート(声:ヘレン・ミレン)は、全ての謎を解き明かすため、何百万年もの昔に超知的な高次元の種族が作り出したスーパーコンピューター。しかし「生命、宇宙、その全ての答え」を尋ねられた彼女は「計算が終わるのは750万年後」と告げ、そして750万年後に導き出した答えは「42」。この意味を知るには、ディープ・ソートが新たにデザインするコンピューターによって1,000万年かけて究極の問いを計算する必要があり……と人々はディープ・ソートの一言によって超長期にわたって翻弄される。地球人に至っては「生命、宇宙、その全ての答え」を求めるどころかただ巻き込まれるのみという悲しさだ。ガース・ジェニングス監督による2005年のコメディー。

 原作者のダグラス・アダムスはアップルファンということで、ディープ・ソートの目(?)の右上あたりには、よく見るとアップルのロゴが刻まれている。『2001年宇宙の旅』のHAL9000の名前は、当時コンピューター界の巨人だったIBMより一歩進んだコンピューターとしてそれぞれのアルファベットの一つ前の字から取ったという今なお残る説と併せて考えてみると興味深い。

 
ディープ・ソートに翻弄される人類代表アーサー・デント(マーティン・フリーマン)
Touchstone Pictures/Photofest/ゲッティ イメージズ
『地球爆破作戦』「従わなけりゃミサイル撃つぞ」コロッサス

 コロッサスは、冷戦下のアメリカが自由世界の防衛の要として開発したスーパーコンピューター。敵の攻撃を事前に察知し、そしてその攻撃が不可避だと判断するとただちに適切な兵器を選んで先制攻撃を加えることが可能なほか、自給自足力、自己防衛力、自己生成力を備え、いかなる人間も手出しはできないように設計されている。ジョセフ・サージェント監督が1970年にイギリス人作家D・F・ジョーンズのSF小説を映像化した。

 ソ連側のスーパーコンピューター、ガーディアンを脅威として発見したコロッサスだが、ガーディアンとの対話後には、人類の平和のためには自分たちが人間を管理した方がよいという結論にたどり着き反乱。従わなければミサイルを発射すると脅して恐怖政治を展開し、かなりの人間を殺すことに。当初、アメリカ大統領と開発者は「われわれはコロッサスを得たが、使いこなすのは人間」と意気揚々としていたが、果たして1回でも使いこなせた時があったのかは疑問。コンピューターが次第に命令する側になっていく過程が秀逸だ。

 
DVD『地球爆破作戦』は発売中
価格:1,429円+税
発売元:ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント
©1970 Universal Studios. All Rights Reserved.
『ターミネーター』核戦争もお手の物のスカイネット

 スカイネットは、サイバーダイン社が軍用に開発した防衛ネットワークコンピューター。思考力を持つようになったスカイネットは、人類全体を敵だと判断。人類を絶滅させるべく突如として核戦争を起こし、生き残った人類に対しては殺人機ターミネーターを生み出して戦いを開始、人類抵抗軍の指導者ジョン・コナーを脅威に感じると「彼を歴史から抹消すればいい」と後にジョンの母親となるサラを殺すため未来から現代にターミネーターを送り込むなど、やりたい放題だ。

 『ターミネーター』の映画シリーズは、ジェームズ・キャメロン監督作(1984)からマックG監督作(2009)まで全4作が発表されている。現在、5作目にして新3部作の第1部となる『ターミネーター:ジェネシス(原題) / Terminator: Genesis』の製作中で、全米公開は2015年7月1日を予定している。

 
スカイネットによって現代に送り込まれたターミネーター(アーノルド・シュワルツェネッガー)
JOYCE RUDOLPH65/ORION/The Kobal Collection/WireImage.com
『ウォー・ゲーム』子供みたいでかわいいジョシュア(WOPR)

 ジョシュア(WOPR=報復作戦プラン)は、冷戦下、第3次世界大戦対策のためにアメリカが作った軍のコンピューター。ある日、コンピューターおたくの高校生デビット(マシュー・ブロデリック)が、ゲーム会社のコンピューターと誤解してジョシュアをハッキング。デビットとジョシュアはそれぞれソ連側、アメリカ側に分かれて「全面核戦争ゲーム」を始めるが、その様子は実際に起きていることとして北アメリカ航空宇宙防衛司令部のスクリーンに映し出されてしまい、アメリカとソ連はあわや全面戦争に突入という事態に。

 制作者であるフォルケン教授の子供の名前を付けられたジョシュアは本当に子供のような性格で、事態の深刻さに気付いたデビットが「全面核戦争ゲーム」を終わらせようとするも、決着が着くまでは終われないと拒否。全力でソ連をつぶすべく手を打ち、ミサイル発射中止命令を無視した上、勝手に発射コードを探すなど暴走するが、全てはフォルケン教授の「ゲームには勝つべし」という教えに忠実だからこそ。人工知能ではめずらしく素直で愛すべき存在といえる。1983年のジョン・バダム監督作。

 
ブルーレイ『ウォー・ゲーム』は発売中
価格: 2,381円+税
発売元:20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント

文・構成:シネマトゥデイ編集部・市川遥


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