シネマトゥデイ

シネマトゥデイ
中村倫也&佐々木希
『星ガ丘ワンダーランド』
りんごスープが五感を刺激するシーンは思い出の結晶
『星ガ丘ワンダーランド』中村倫也&佐々木希 単独インタビュー

取材・文:柴田メグミ 写真:高野広美

資生堂のウェブムービー「High School Girl? メーク女子高生のヒミツ」ほか数々のCMを手掛け、世界各国の広告賞に輝くCMクリエイター柳沢翔の長編監督デビュー作『星ガ丘ワンダーランド』。幼くして母を失った兄弟と、その女性を母に迎えた姉弟の、葛藤や成長を見つめたせつなくも心温まるミステリーだ。星ガ丘駅の駅員・温人役の中村倫也と、温人の母の再婚相手の娘・七海役の佐々木希。所属事務所の先輩後輩でもある二人がお互いについて、またキャラクターへの思いなどを和やかに語り合った。

■温人は苔みたいなヤツ

Q:星ガ丘駅の駅員として働く温人が「落とし物預かり所」で落とし主を想像した似顔絵を描くのは、母親を恋い慕う気持ちの表れとも思えましたが、中村さんはいかがですか?

中村倫也(以下、中村):似顔絵を描くのはささやかな趣味。日々の楽しみとしてささやかにやっていたんでしょうね。スノードームが(落とし物として)来たときに意図せずに母親の面影を描いてしまった、描こうとしてしまったんだと思います。

Q:温人を演じる上で心掛けたことは何でしょう?

中村:苔みたいなヤツだなと思っていたんです。ひっそりと自生していて、誰に干渉するわけでもなく、桜の木みたいに見上げられることもなく、静かに生きてきたんだなと。作品のテイストもそうですけど、温人は感情があまり表にわかりやすく出ないというか、のみ込むことが多い人物。だから芝居としても、提示しすぎない。そこにただ存在するものの肌触りや体温が浮いてくるような芝居をしたいなと思って、温人と向き合っていました。

Q:温人と複雑な関係にある七海についてはどのように受け止め、何を心掛けて演じましたか?

佐々木希(以下、佐々木):七海は(義理の母親と)血の繋がっていないことがずっと頭にあった女性だと思います。本当の家族になりたいのに、そうなれない自分とずっと葛藤して生きてきたんだなと。感情を表に出せなくて、自分の思っていることを何も言えずにいた。その内面を見せるお芝居ができるように(七海と)向き合っていました。表情で見せるとかではなく、本当に感じるままに。

Q:表情で見せずに内面を表現するというのは、難易度が高いですね。

佐々木:自分と共通する点が少なくて難しかったですね。演じていてもすごく心苦しいというか、無理して笑って、心で泣いているような女性。脚本を読んだときにも思いましたけど、演じていてさらに思いました。

■佐々木希はムードメーカー?

Q:監督によると、佐々木さんは現場のムードメーカーだそうですね。

佐々木:ムードメーカーですか?(笑)

中村:現場がパッと華やぎますよね。男性スタッフがいつも以上に頑張りますし。

佐々木:いえいえ、全然ムードメーカーじゃないです。倫也さんとお仕事できるのがすごくうれしくて。何度も共演させていただいていますし、事務所の先輩でもあるので素を出せたというか。現場ですごくリラックスできました。でも「締めるときは締める」お仕事のされ方はすごく尊敬するし、私もそうしていかなければいけないと思いましたね。集中力がすごいんです。「(役に)入っているな」って感じる瞬間が何度もありました。

Q:座長としての中村さんは頼りになりましたか?

佐々木:(現場の)空気作りをすごく学びました。締めるときとリラックスするときのメリハリをしっかりとされている方だなと改めて思いました。(本人を前にして褒めるのは)恥ずかしいんですけど……。

中村:俺のほうが恥ずかしいよ。

Q:共演者としての佐々木さんはどんな印象でしたか?

中村:佐々木のことは昔から知っていて、妹みたいに思っています。やっぱり愛されるんですよね、いい子ですから。佐々木が持つ魅力を引き出しつつ、自分もよりいい仕事をしようという気にさせる。

佐々木:いやいやいや(照)。

中村:(今回は)座長として、作品をおもしろくするためというのが大前提ですけど、より何かを引き出し合って、作用し合って。いろんな魅力を内包するシーンになればいいなと思いながら、佐々木とやっていましたね。

■りんごスープは母の味

Q:七海が温人にりんごスープを作るシーンがありますが、秋田ご出身の佐々木さんにとってりんごスープは身近でしたか?

佐々木:飲んでいましたね。幼い頃から身近にありました。

中村:風邪をひいたときに飲むの?

佐々木:風邪のときに飲みます。母が作ってくれました。やっぱり作ってもらいたいですよね。自分で作るのは面倒くさい……。

中村:(爆笑)。

Q:お味はいかがでしたか?

中村:めちゃくちゃおいしかったですよ。あのシーンでは、本番まで一口も飲まないようにしていたんです。飲んだ瞬間に広がる味と、香りから引き出される思い出を瞬間として捉えられるのは1回きりだなと思って。香りとか味覚の、五感(の印象)というのは本当に強いなと思いましたね。

佐々木:本当にそうですね。

中村:僕自身はりんごスープを飲む習慣はなかったですし、初めて飲んだんですけど。

佐々木:初めてですか?

中村:うん。あれを一口飲んで口のなかにフワッと(味が)広がっただけで、温人としてなんともいえないメランコリックな気持ちになって。いろんな欠片を繊細に拾い集めて、あのとき感じたことを出せたので、あのシーンは好きですね。

■毎回、新しい風が吹く

Q:脇を固める共演陣もとても豪華ですね。

中村:撮影期間がだいたい1か月弱で。日替わりじゃないですけど、2~3日ずつまとめてイッチー(市原隼人)との撮影、杏ちゃんや嶋田久作さんとの撮影、菅田(将暉)との撮影というようにポンポン続いていくんです。皆さんそれぞれに違う魅力と個性があって、それを現場に持ち込んできたとき毎回、新しい風が吹くというか。温人は受動的な人間なので、皆さんとの撮影のたびに得るものがある。撮影を重ねるごとに、温人自身にいろんなものが注入されていくのがわかるんですね。だから今回ステキな共演者の方々と撮影していくことが楽しかったですし、温人への影響を実感しながらクランクアップまでいけました。非常に刺激的で贅沢な時間でした。

Q:七海からはどんな影響を受けましたか?

中村:温人が目を背けてきた、自分の嫌いなところに向き合うのは七海の存在があったから。七海と関わっていくことで人間として輪郭がくっきりしてくるというか、小さいけれど大きな、偉大な一歩を(人類で初めて月面に降り立った)アームストロングのように(笑)踏み出す。温人が自ら進み出すきっかけとなるのが七海。温人を前へ進ませてくれてありがとう、という気持ちです。

Q:映像もとても印象的ですが、完成作をご覧になった感想は?

佐々木:本当に映像がきれいです。監督とお仕事をご一緒する前に、監督の作品を拝見したのですが、今までに観たことがないような映像なんですね。この作品を作った方が、映画を撮るとどういう映像になるんだろうとワクワクがどんどん膨らんでいきました。しかも完成作を観たら、「こんな撮り方をしたんだ」と期待をすごく超えていたんです。こんなにも新しさがある作品に携わることができてよかったなと、改めて思いました。

中村:ファンタジックな風景や、光、映像のなかに、なんともいえずに葛藤している生身の人間たちがいる。その対比がとてもおもしろいですし、新しいジャンルとまでは言わないですけど、映画好きな方が観ても、新鮮に感じられる魅力的な映画になっていると思います。

劇中で複雑でぎこちない関係を細やかに表現した中村と佐々木。けれど目の前の二人は、中村の言葉通り本当の兄妹のようだ。お互いについて照れながら語る際にはまさに“自慢の妹”と“自慢の兄”なる思いが言葉の端々から伝わってきて微笑ましい限り。今作ではそんな二人の2ショットシーンに加え、温人と新井浩文演じる兄、そして七海と菅田将暉演じる弟の兄弟&姉弟シーンもまた、やさしい余韻を残す。

映画『星ガ丘ワンダーランド』は3月5日より全国公開

[PR]

この記事を共有する

映画アクセスランキング
  • Loading...
»もっとランキングを見る«
スポンサード リンク
スポンサード リンク