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多部未華子&要潤
『あやしい彼女』
キス待ち顔はリハーサルなしで
『あやしい彼女』多部未華子&要潤 単独インタビュー

取材・文:浅見祥子 写真:奥山智明

『舞妓 Haaaan!!!』『謝罪の王様』などで知られる水田伸生監督がメガホンを取ったコメディー映画『あやしい彼女』は、女手一つで娘を育て上げた下町の元気なおばちゃん、カツがひょんなことで若さを取り戻し、忘れていた夢を追いかけるという“人生リセット劇”。中身は毒舌な73歳で見た目は20歳のヒロイン・節子役で見事な歌声を披露した多部未華子と、彼女を見出す音楽プロデューサーの小林を演じた要潤が、撮影の裏話や各国でリメイクされる物語の魅力について語った。

■韓国の大ヒット映画を水田伸生監督がリメイク

Q:最初にこの映画の企画を聞いたときどう思われましたか?

多部未華子(以下、多部):はじめにオリジナル版のDVDをいただいて、脚本より先に映画を観ました。それで純粋に作品を楽しんでしまいました。面白くて、いい話だなって。キャストの方たちのお芝居も素敵でクオリティーも高く、自分があのヒロインをどう演じるのかは正直イメージ出来なくて。この作品をやれるなんてラッキー! くらいの感じでした(笑)。あまりに映画を好きになったので、撮影が始まってから3回も観てしまい、台本を読んでも撮影していても「オリジナル版はこうだった」と映像が浮かんでしまうほどでした。良くも悪くも意識したというか、はじめの頃はいろいろと比較しながら演じていた気がします。だから途中で、失敗したなと思って(笑)。でも撮影が進むにつれ、比較することはなくなりました。

要潤(以下、要):他人と中身が入れ替わる話はよくあるけど、心はそのままで若いときの肉体とすり替わるという物語はありそうでなかったですよね。なおかつそこに歌があって、家族というテーマがあって。こんな“全部のせ”な企画って珍しいなと思いました。僕は撮影前にオリジナル版を観なかったんです、監督が「観なくていいですよ」とおっしゃったので。ちょうど3日ほど前に偶然テレビで放送されていたのを観たのですが、設定が微妙に違っていたりして、改めて水田監督のアレンジが効いていたなと。

Q:多部さんが、撮影が進むにつれてオリジナルを忘れた理由とは?

多部:特別なきっかけがあった訳ではないのですが、勝手なイメージで、コメディーはカット割りが細かいと思っていました。でも、水田監督は1シーンで2~3カットあるかな? というくらいで。しかもどのシーンも始めから終わりまで通してお芝居をさせてもらいました。オリジナル版は分かりやすいコメディー描写でしたが、水田監督はそういう細工をせず、普通にお芝居をするなかで微妙な間の取り方や台詞の言い方で面白さを求められることが多かったです。オリジナル版とは違うので最初は不安でしたが、ごく日常っぽいお芝居が出来ました。節子の気持ちの変化も演じやすく、自然とオリジナル版を意識しなくなりました。

要:僕は水田監督の演出を受けたいとずっと思っていたので待望の水田組でしたが、うわさ以上でした。こんな風に台本を読み解くのか! ととても勉強になりました。

Q:小林の部屋で二人がお酒を飲みながら過ごすシーンは、とてもかわいかったです。

要:あそこも長回しで、二人でソファに座ってからは1カットで撮りました。本番直前、監督が多部ちゃんに“キス待ち顔”をさせたんですよね。「目を閉じてみよっか」って(笑)。

多部:そうでしたね。あのシーンも、本番に入るまでが早くて。わたしはその方が好きなので、いい緊張感で臨めました。

■3か月の特訓を経て臨んだ歌唱シーン

Q:多部さんは歌のシーンのために3か月間特訓を受けたそうですね?

多部:声の出し方から始めたのですが、音程が微妙にズレてしまったり、テンポがだんだん速くなってしまったり、初歩的なところから注意を受けていて、これはちょっとまずいなと。しかもお芝居と同じで歌には答えがありません。本格的に習ったこともなく、感情を歌詞にのせるのは本当に難しかったです。それでいまだに何が正解か、答えは出ていません(笑)。ただ楽しむことが大事かなと思ったのですが、大丈夫かな? という不安な状態でレコーディングを迎えてしまいました。

Q:要さんは「初めて多部さんの歌声を聴いたときに、まばたきを忘れた」とおっしゃっていましたね。

要:基本的にお芝居のときにまばたきをしたくないタイプなので、その意識もあるのですが、シーンの半分くらいを過ぎるといつの間にかぼーっと見てしまっていたんです。音楽番組で好きな歌手が歌っていると、ぼーっと見てしまうじゃないですか。あのシーンで、僕はそういう境地になっていました。カメラが回っているのを超えて、純粋に歌に聞き入る感覚に。

Q:マイクを向けてSay! などと客席とのやりとりがすごく楽しそうでした。

多部:あのライブシーンは、まさに疑似体験で楽しかったです。舞台でもお客さんを前に演じますが、それとは全く違っていました。アーティストさんって、見られるのが仕事じゃないですか。お芝居もずっと見られているけど……わたしはとても、自分自身としてあの場所には立てないなと。節子としてなら立てるけど、わたし自身ではでくのぼう状態だと思います。

要:でくのぼうって(笑)。

多部:何も出来ません。そもそも……お芝居なんて“恥ずかしい”の塊ですよ(笑)。ラブストーリーなら、なぜ人前でこんなことを? みたいなお芝居を平気でしなきゃいけないし。

Q:でも多部さんって、いつも堂々とされていますよね?

要:いやスゴイですよ。

多部:恥ずかしさは……初めて映画に出たのは16歳でしたが、なぜこんなにたくさんの大人の前で覚えたセリフを言わなきゃいけないの? という反発心と恥ずかしさでいっぱいでした。でも、この人たちはいろいろな作品でスタッフとしてたくさんの俳優さんを見てきたんだなと。それならわたしが初心者なだけで、恥ずかしがることもないなとふと思って。そのときから、そういう気持ちになったことは一切ありません。なぜこんなことをしてるんだろう? と思うことはいっぱいありますけど。

要:僕も、なにやってんだろう……今日は人殺しをしたな、とか思いながら帰ったりします(笑)。恥ずかしさに関しては慣れでしょうね。僕も最初は自分がなにをやってるのか分からないような、宙に浮いているような感覚でした。

■家族というテーマと歌は国境を超える

Q:中国やベトナムでもリメイクされていますが、この物語の何が、国や文化を超えて支持されると思いますか?

要:どの年代の方が観ても楽しめる作品ですよね。歴史や文化に関係なく、フラットに誰もが受け入れやすい物語だと思います。

多部:人それぞれいろいろな事情があったり環境に違いはあっても、誰にでも家族という存在はあるものですよね。あと歌が大きいと思います。一つの歌に対して、思い出や聴いたときに浮かぶ情景はみんな違うけど、それぞれのはまり方がありますよね。家族と歌を中心に据えたことが大きいのではないでしょうか。

節子は心が73歳ゆえ人生を悟っているように見える超毒舌な女の子で、ハンサムで性格もまともな音楽プロデューサーの小林と出会って恋に落ちる。キャラクターにギャップのある二人のシーンは、コミカルなのになぜか切ない。そんなヒロインをナチュラルに体現し歌声で観る者を惹きつける多部の素顔は、愛くるしい印象ながらときに強い芯を感じさせ、発言は飾りなくストレート。そんな多部をあたたかく見守り、ときにユーモアを交えて場を盛り上げる要。この二人だからこそ、特殊な設定の恋もごく自然に見せることが出来たのだろう。

(C) 2016「あやカノ」製作委員会 (C) 2014 CJ E&M CORPORATION

映画『あやしい彼女』は4月1日より全国公開

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