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宮藤官九郎監督&神木隆之介
『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』
地獄のセットはすてきだけど、撮影が1か月続くとまさに地獄
『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』宮藤官九郎監督&神木隆之介 単独インタビュー

取材・文:天本伸一郎 写真:平岩亨

公開延期となった『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』が、約半年を経て公開される。事故で地獄へ落ちてしまった高校生の大助が、憧れの同級生とキスする夢を叶えるべく、地獄でロックバンドを率いる赤鬼・キラーKの特訓を受け現世への転生を目指す。自らのオリジナル脚本で現代的にアップデートされた地獄の世界を作り上げた監督の宮藤官九郎、キラーK役の長瀬智也と共に主演を務めた大助役の神木隆之介が、地獄の撮影や作品への確かな手応えを語った。

■ラストシーンはこれしかない!

Q:神木さんが長瀬智也さんと共演するのは、2001年のテレビドラマ以来だそうですが、運命的なものを感じたそうですね。

神木隆之介(以下、神木):撮影の途中で長瀬さんが、「僕が(初共演したテレビドラマの)『ムコ殿』をやっていたとき、今の隆(之介)の歳ぐらいだったんだよなあ」と言っていて、お互いに「なんか運命的だねー」「不思議だよねー」「すごいねー」と話したんです。その場では結構サラッとした感じでしたが、出会った頃の長瀬さんと同じ歳に自分がなったときに、また現場で会えるというのは本当にすごいことだし、面白いなと思いました。

Q:本作は、物語が目まぐるしく展開していく、地獄と現世の二つの世界が舞台の奇想天外なロックコメディーですが、完成した作品をご覧になった感想は?

神木:僕の演じた大助は、物語が始まってすぐに地獄に落ちるので、その現世から地獄に落ちる展開のスピードが速すぎて、自分が出演していることに最初はついていけませんでした(笑)。でも、台本を読んだときの印象と変わらず、はちゃめちゃだけどすごく人間味があって、心が温かくなる映画でした。

宮藤官九郎監督(以下、監督):ご覧になった方からは、いろいろ要素が多いけど最後はすがすがしい気持ちになるという感想が多くて、それは半分意外だけど、狙い通りでもあるんです。台本は何回も直しましたけど、ラストシーンだけはこれしかないと思って一度も手を加えなかった。また、エンドロールで大助(神木)とキラーK(長瀬)のロックバンド「地獄図」(ヘルズ)のライブシーンが入るのもすごく高揚感があるんですけど、それがこれほどうまく合うとは想像していませんでした。

■「役を演じ切る」俳優・神木隆之介

Q:宮藤さんは、今作と脚本を書いた2011年のテレビドラマ「11人もいる!」で、チャラ男キャラなどの新たな顔を神木さんから引き出していますが、神木さんの役者としての魅力とは?

監督:役者としての基本ですけど、役を演じ切れるということですね。ちゃんと自分の演じる役を生きられるので、その役から逸脱しないし、こちらもその役の中でもっとやってもいいよと言える。だから、どれだけ大助をチャラくしても、「そこまでやらなくていいや」と言えば、スッと戻れるんですよね。他のキャストの皆さんもそうですが、現場でいくら変更があってもすぐに対応できる臨機応変な感じが良かったし、やりやすかったです。

神木:何が起こるかわからない現場でしたので、セリフだけ覚えていった感じでした(笑)。ト書きに書いてあることでさえ、演じられるかどうかわからなかったりしたので。

監督:こういう映画だから、決め込んで臨まなくて正解だったと思います。台本に書いてあっても、撮影の段階になって「これはなしでいきます」とか、平気で言っちゃうので。

神木:誰かが台本と違うことをやると、違った方向に流れていくこともあるので、撮影現場で共演者の皆さんがどう演じられるかで、そのときに大助がしたいことをした方がいいなと思い、結構自由に演じさせてもらいました。基本的に僕は事前に動きとかは考えていなくて、現場で動いてみないとわからないし、何とかなるでしょうみたいに思っているところがあるのは、大助と似ているかもしれません。

■柔軟ながらも丸くならない長瀬の魅力

Q:神木さんが長瀬さんと共演してみて感じたことや、その魅力とは?

神木:前回の共演当時の僕はまだ子供で何も考えていなかったので、しっかりと役作りをして芝居でぶつかるというのは、お互いに少し恥ずかしかったです。長瀬さんは、今回の外見は鬼だし、背も大きくて強そうだけど、本当にすごく優しくて、かわいらしい人間性を持っている方なんです。それが、キラーKが憎めなかったり、どれだけ横暴で怖いことを言ってもどこかいとおしく感じられるところにも通じるのではないかなと思います。

監督:やっぱり、(長瀬本人の人間性が)にじみ出るものがあるんですよね。

神木:それと、僕は役者なので音楽は全く別のお仕事だと思っていて何も知らないから、ライブシーンの撮影は音楽の世界にお邪魔する感じで長瀬さんに頼りっぱなしでした。長瀬さんは、どういうパフォーマンスをしたら楽しく見えるかを教えてくれて、「ちゃんと弾くことよりもとりあえず楽しもう」とほぐしてくださったので、みんなイキイキと演奏できていました。

Q:宮藤監督が今回改めて感じた長瀬さんの魅力とは?

監督:芝居の面白さなど、いいところは変わりませんが、すごく柔軟になったなあと感じましたね。以前は、こちらが長瀬君の考えと違うアプローチの芝居を要求すると、自分の中で一本筋が通るまで時間を要したこともあって。だけど今回は、撮影現場での質問はほぼ無く、場を盛り上げて動いてくれるし、急な要求にも柔軟に応えてくれて。若いころから体で覚えていろいろやってきているからこそできるんでしょうね。だからといって丸くなったわけではなくて。それもいいんですよね。

■「地獄地獄した」セットでの撮影は1か月続くとまさに地獄

Q:お二人から今回の作品への確かな自信がうかがえますが、中でも特に手応えを感じていたり、やってみて良かったことは?

監督:やっぱり地獄のセットを組んで撮影できたことでしょうか。現世と地獄の美術をそれぞれ別の方に頼んだんですけど、それは特にうまくいったと思います。地獄の真っ赤なギラギラ(とした色味)がきついなと思ったころに、箸休めじゃないですけど、現世の映像が入るとバーッと視界が開けて、その後にまた地獄のギラっとした世界に戻ってくるみたいな感じは、考えていた以上に効果的だなと思っています。撮影はまあ地獄なんで(笑)、つらかったんですけどね。

神木:すごくすてきなセットだったのですが、セリフにもある通り「地獄地獄した地獄」なので、1か月撮影が続くと、まさに地獄でした(笑)。でも、その1か月間は同じ撮影現場だったからこそ、チームの結束力、そして自分自身のモチベーションが持続できたところもあります。地獄にいるのかなと思えてすんなり受け入れられたというか、大助が違和感なくいろいろ立ち回るのを手伝ってくださったので、とてもありがたかったです。

監督:居心地がいいわけじゃないけど、段々と地獄のセットが部室のような感じになっていったところもありましたね。今回は、やっぱり地獄を完全にワンセットにしたのが、自分にとってのチャレンジでした。それは舞台の演出の方法論を映画に持ち込んでみたことでもありますし、こういう作品を撮れるのは自分ぐらいしかいないんじゃないかということを、改めてやることができた作品にもなっています。

前作「中学生円山」(2013)で大好きな作品を作り上げることのできた宮藤監督は、今作でこれまで以上にさまざまな新しいことに挑戦した。スタッフの約半分が入れ替わり、初めて全シーンの絵コンテを描き、周囲のアイデアも柔軟に取り入れたそうだが、4本の監督作に統一感も感じたという。さらに役の幅を広げた神木をはじめ、俳優陣がノリに乗って楽しんで演じたことが画面からも伝わる本作は、宮藤監督の集大成的な要素を持ちながらも新鮮で痛快な娯楽作品となっている。

映画『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』は6月25日より全国公開

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