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池松壮亮&菅田将暉
『セトウツミ』
関西弁に方程式はない、結果78点
『セトウツミ』池松壮亮&菅田将暉 単独インタビュー

取材・文:高山亜紀 写真:杉映貴子

ほとんど「会話」だけのコミックを映画化した全編、しゃべるだけの異色作『セトウツミ』。クールな頭脳派、内海と天然でおバカな瀬戸役でダブル主演を果たしたのは池松壮亮と菅田将暉。いま最も評価され、出演作も目白押しの二人は、意外にも本作で出会うまで、話したこともなかったとか。たった1週間の撮影期間でいまや互いに仲がいいと認めるまでに急接近した理由はどこにあったのか。仲良しならではの忌憚(きたん)ないトークが繰り広げられた。

■条件反射のように自然なボケとツッコミ

Q:全編しゃべりまくりですが、企画を聞いた時の気持ちを教えてください。

池松壮亮(以下、池松):漫画を読む前は、どうやって成立させるのかなと思っていました。で、読んでみたらすごく面白くて……。でもちょっと完成度が高過ぎて、どうしたものかなとも思いました。あんまり遊びようがないし、すぐには正解が見つからなかったです。

菅田将暉(以下、菅田):僕はもともと原作を知っていたんです。大阪人からしたら、この二人のシニカルなセンスのあるやり取りが本当にうれしいんです。「でんがな、まんがな」「なんでやねん」じゃない、リアルトーンの関西弁。二人の言葉のチョイスで成立している面白さ。ただ、そのやり取りを実際にどうやるのかな? とは思っていましたし、そこが楽しみでもありました。

Q:好きで読んでいる時は、「映画にしたらいいのに」と思っていました?

菅田:そこは考えてなかったです。漫画は自分の好きなスピード、間合いで次のコマにいけるからいいんですよね。自分にとって一番面白い状態で読んでいるじゃないですか。

池松:僕もそこ、思った。漫画を先に読んで映画を観るとしんどいんですよね。先に映画を観てほしいです。いや~、漫画は強敵です(笑)。

Q:二人の会話が心地良くて、私は逆に原作を読むときも影響されるくらいでしたが、どんな風にあのリズム感を体得していったんですか?

池松:監督という指揮者はいますが、「用意スタート!」って言われて、調整するわけにはいきませんから、後は二人の持っているリズムみたいなものでしかないと思っています。

菅田:リハーサルもしてないですしね。

池松:してないね。でも人間なので、大阪に連れて来られて、階段に座らされて、「これから1週間、撮影します」と言われると、嫌でも暇つぶしを始めるんですよ。で、隣には菅田君がいて、いつの間にか近くなっている。

菅田:漫画原作をなぜ実写化するのかって考えた時、「アニメでいいじゃん」とはならないし、なりたくない。そこには、実写でやる良さがある。もちろん、「セトウツミ」はアニメでやっても面白いんでしょうけど、たぶん、瀬戸と内海の何ともいえない二人の時間や空気が流れていると思うんです。池松君がボケたら、もう条件反射的にツッコミたくなる。この感覚が答えなのかもしれないって気がします。

■池松の関西弁は菅田判定では78点?

Q:菅田さんは関西弁ネイティブですけど、セリフとなると違いますか。

菅田:逆に難しい時もありますけど、今回はたぶんプラスだったと思います。関西弁は関西弁でも時代や場所によっても違ったりします。今回は僕の育ってきた環境に近い関西弁の会話に似ていたので、何かわかるというか。バラエティー番組などの印象だと、「関西人=明るい、うるさい」みたいなイメージがどこかにあるじゃないですか。でも僕もそうですけど、関西人だっていろいろですから。

Q:池松さんはどうでしょう? 大阪弁、大変でしたか。

池松:難しいです。関西人、結構な人口がいますから、敵は多いです(笑)。方言は割と挑戦したことがあるんですけど、関西弁は方程式がなかった。ほかの方言ってだいたい、何個かつかめば応用できるんですが、全くそうじゃない。しかも、「2パターン、あります」とか言われたりするし、「適当やな、この人たち」と思いながら……。

菅田:でも、仕方ないんです。2パターンあるんで(笑)。

池松:しまいには「どっちでもいい」って言われて、「ふざけんなよ」と思いながら(笑)。ほんと、関西弁は難しい。

Q:菅田さんに相談しましたか?

池松:ちょっと聞いてもらったりしました。でも、現場では乗せてくれるから、「イケてんのかな」って思っていたんですよ。方言指導の子も年下で、「池松さん、今日、イケてました!」「おお、そうか」って、その気にさせてくれていたんです。で、久々に菅田君に会った時に、「関西弁、何点だった?」って聞いたら、「78点」って言われて落ち込みました。

菅田:全然、覚えてない(爆笑)。

Q:何がマイナス22点?

菅田:いや、そこはそんなに詳しく採点してないです。適当です(笑)。

Q:実際、池松さんの関西弁はどうだったんでしょうか。

菅田:対峙している僕が楽しかったんで、良かったと思います。関西弁の会話として、ちゃんと成立していました。合わせようとか、自分が大阪人だから助けなきゃとかは一切していないし、僕は自然と最後までやれました。

池松:ありがとうございます(笑)。

菅田:もう7、8年東京にいるので、僕も関西弁に関しては自信がなくて。それに、僕の育った地域も大阪といっても、また京都寄りの山の方だから、いわゆる関西弁とも違う。さっき話したように2パターンとか、それ以上あったりするので判断があまりつかないんです。でも、空気感みたいなものですから。特に瀬戸はその空気感を出しやすい。だけど、内海はバラエティー好きのお茶の間の人からしたら、一番真逆にいる関西人のイメージだから、そりゃあ難しいですよ。現場で聞いていた感じでは、イントネーションは完璧でした。でも、会話だとそれだけじゃない。また、方言指導のCDって感情が入ってないから、会話するとまったく別物なので、現場でやるしかないんです。

池松:僕にとっては、方言も英語も一緒で、どうせ、しゃべれないんだから、もう音で覚えるしかないんですよね。一曲覚えるみたいな感覚でやっていました。

菅田:関西弁をしゃべっている人に関西人が引っ掛かるのは、イントネーション以上に空気感だと思います。しゃべろうとしている感じ。それで、「わて、関西弁、言ってますで~」みたいな顔をされても(笑)。そういうところに違和感を覚えると思う。

池松:なるほどね。すごい、わかる。

菅田:わかりますよね? たぶん、同じ西の出身だから、その辺はまったく問題ないと思う。だから、どこか同じ町に暮らしている二人だなっていうのが伝わればいいと思いました。

■出会いがこの作品でなかったら……

Q:今までにない撮影でしたか?

池松:撮影期間は1週間ですし、本当にしゃべるだけで映画になるってすごいことですから、新しかったです。あっという間でしたけど。

菅田:やっぱり、早かったですね。でも、ほぼほぼ「初めまして」で、話したこともなかったのに、回を増すごとに仲良くなっていった。たぶん、そのピークが夜の撮影なんです。二人とも変なテンションになっていました(笑)。

池松:ポーリン(マドンナ・樫村役の中条あやみ)が俺らを見る目がうらやましそうだった。俺、あっち側でなくて良かったなぁ。出会いがこの作品というのはでかいですね。違う作品だったら、また全然違うと思う。いい距離感です。お互い俳優といういいフィルターを持った上で、それでもたまに会うとふわっと素に戻ったり、セトウツミに戻ったりする。その感覚がいいな。

間があいても、気を遣って言葉を繋がなくていい、気心の知れた間柄がある。池松壮亮と菅田将暉の間に流れているのはまさにそんな空気だった。仲良しというより、気が合う、うまが合う仲。瀬戸と内海もそんな間柄の男の子たちだ。大切なことを言うでもなく、いやむしろくだらないことしか話していないのに、互いのことをわかっている。男子の友情っていいなぁ。『セトウツミ』を観てそう思い、池松と菅田を見て、再びそう思った。

映画『セトウツミ』は7月2日より新宿ピカデリーほか全国公開

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