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長谷川博己&竹野内豊&石原さとみ
『シン・ゴジラ』
凡人には理解不能!最大限の努力を引き出す庵野演出
『シン・ゴジラ』長谷川博己&竹野内豊&石原さとみ 単独インタビュー

取材・文:斉藤由紀子 写真:高野広美

『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズの庵野秀明が総監督・脚本、『進撃の巨人』の樋口真嗣が監督・特技監督を務めたゴジラシリーズ最新作『シン・ゴジラ』。現代の日本に突如現れた謎の巨大生物ゴジラの脅威と、その非常事態に奔走する政治家たちの人間ドラマが克明に描かれる。物語の中心となる内閣官房副長官・矢口蘭堂を演じた長谷川博己、内閣総理大臣補佐官・赤坂秀樹にふんした竹野内豊、アメリカから来日するカヨコ・アン・パタースン米大統領特使を演じた石原さとみの3人が、作品について語った。

■早口で即決していく政治家のリアリティー

Q:ゴジラを巡る怒涛の政治劇が繰り広げられる本作。政治家たちの終始まくしたてるような早口のやりとりが強く印象に残りました。

長谷川博己(以下、長谷川):庵野監督が僕におっしゃったんです。「官僚や政治家の人たちは、一般よりも会話が速いし、そうやって即決・即断していかなければいけない職業なので、このくらい速くしゃべっているのが普通だよ」と。実際に映像を見せていただいたら、本当にあのくらいのスピードでやりとりをされていたので、自分たちもそうしたほうが、リアリティーが出るのだろうなと思っていました。

竹野内豊(以下、竹野内):自分が演じた赤坂は、そんなに速くはなかったんです。皆さんは本当にタイヘンだったと思いますけど。

石原さとみ(以下、石原):赤坂さんには独特の“赤坂テンポ”がありますよね。緊急対策本部の会議と、わたしが中に入ってからのやりとりと、赤坂さんのシーンは、それぞれテンポの色がバラバラでした。

竹野内:いやあ、皆さんのテンポを乱しているような気がして(笑)。自分ももう少し意識して速くセリフを言えばよかったかなと思いました。僕以外はみんなモーレツに速いから。

長谷川:たぶん、赤坂さんに関しては、ほかの政治家の人たちとは違う雰囲気を出してほしかったんじゃないのかなと、僕は思ったんです。

竹野内:確かに、庵野さんや樋口さんもそんなことをおっしゃっていましたね。

長谷川:僕が演じた矢口には、わりと熱い部分があるんですけど、赤坂さんは現実主義者で常に冷静で、人よりも先のことを考えている。僕は庵野さんに、「実際の僕は、どっちかというと赤坂派です」って言ったことがあるんです。そしたら庵野さんも、「そうだよ。矢口の考え方は未熟だし、理想でしかない。赤坂の言っていることは恐ろしくもあるけど、あの考え方は僕自身にも近い」っておっしゃって。物事をどこか俯瞰で見ているところが、庵野さんと近いのかもしれないなと思いました。

竹野内:それは自分も感じた瞬間がありました。赤坂は庵野さんを投影させたキャラクターなのかもしれないですね。

■胃が痛むほど追い込まれた

Q:長谷川さんご自身が赤坂派だとしたら、竹野内さんご自身は?

竹野内:僕は……どちらかというと、後先のことを考えないで熱く言ってしまう、矢口タイプかもしれないです。

石原:わたしも、矢口の方が賛同できます。

長谷川・竹野内:ハハハ!

石原:それが庵野さんが投影されているのかもしれないというのも、長谷川さんが赤坂さん寄りだっていうのもわかるけど、ああいうネガティブな勢いを持つ情熱って、わたしは好きじゃないんです。もっと希望をもとうよ(笑)。やっぱり、あたたかさや誠実さって大事だし、コツコツやることって大事じゃない? って思ってしまう。赤坂さんの考え方は冷たいですよ。

長谷川:物語の中では赤坂は官僚体質で、僕の矢口は政治家気質。で、赤坂は「官僚が日本を動かしている」と思っているのかな、という感じだったんですよね。

石原:……やっぱり好きになれない(笑)。

Q:石原さん演じるカヨコの、英語交じりのセリフ回しも強烈なインパクトがありました。撮影現場ではご苦労もあったそうですね?

石原:常に襲って来るプレッシャーと、役どころ的にもすごく孤独感があって、正直、辛いことも多かったです。胃が痛かった。台本を読んだとき、自分が観客としてこのカヨコというキャラクターを見たら、違和感があるだろうなと思ったんです。この作品に出させてもらえることが“大きいからこそ怖い”という気持ちと、“挑戦できることがありがたい”という思いとの葛藤がありました。

長谷川:でも、あのカヨコの芝居はすごいよ。

竹野内:日本語を話していても雰囲気が英語だもんね。

Q:どのように日系アメリカ人ならではの話し方を作っていったんですか?

石原:ずっと外務省で働いていた友だちや、アメリカで育って大学のときに日本に来た女の子にいろいろと教えてもらいました。撮影中は普段の友だちよりも、彼女たちと一緒に過ごすことのほうが多かったです。

■混乱も楽しんだ長谷川

Q:庵野監督の演出について何か感じたことはありましたか?

長谷川:庵野さんは“沈黙の指示”が多かったような気がします。

石原:あー、わかります。

長谷川:何も言わないし答えは出してくれないんだけど、黙っていることでの威圧のようなものを何度か感じました。「キミは役者でしょ? 僕は監督だからそれを撮るだけです」というような雰囲気というか。でも、それは僕らを信頼してくれていなければできないことですから、僕らも最大限の努力をするしかないと思いましたね。

竹野内:庵野さんは、本当に身を削って、ぶっ壊れそうになるくらいいろんなことを深く考えていらっしゃる方なので、凡人のわたしには監督が何を考えているかなんて理解できないです。

Q:庵野監督と樋口監督の撮影現場での役割分担は、はっきり分かれていたのでしょうか?

長谷川:常にお二人が現場にいました。どちらかがモニター室にいて、どちらかが現場にいる。その逆もあったし、それがどんな判断基準で行われていたのかはわからないんですけど、お二人がお互いのバランスを取っていらっしゃるような感じでした。

竹野内:監督がひとりの場合とは違う雰囲気の現場でしたね。庵野さんと樋口さんはお付き合いが長いですから、絶大なる信頼感があるのだと思います。

長谷川:とはいっても、こっちが混乱することもありましたけどね。一方に「そんな感じでやって」って言われたのに、もう一方には「そんな感じでやるなよ」って言われたりして、本番前にどうしたらいいのかわからなくなったりすることもあって(苦笑)……でも、すごく楽しい現場でしたよ。心地よい緊張感もありましたし。

石原:わたしは自分の役で精いっぱいだったので、長谷川さん余裕あるなぁって(笑)。長谷川さんは本当に楽しんでいましたよね。庵野さんともよく話をされていてすごいなぁと思っていました。

■日本映画の歴史に残る一本

Q:いよいよ全貌が明らかになるわけですが、仕上がりはいかがですか?

竹野内:日本の映画の歴史に残るだろうと思える、これぞ日本映画といった感じでした。

長谷川:本当にすごい映画になりそうですよね。公開されたらどうなるんだろう? おそらく観客の皆さんが沸くんじゃないですかね。

石原:もっと人間ドラマが濃くなるのかなと思っていて、台本の段階では少し難しいと感じたところもあったんですけど、出てきたゴジラが巨大すぎてインパクトが強いし、ゴジラシリーズを知っている方にはワクワク感も強いと思う。逆に知らない若い世代には怖さがあるでしょうし、ちゃんと世代を問わず楽しめるエンターテインメント作品になっていると思います。若い子がご両親と一緒に観たら感想が違うような気がします。

自分の意見をはっきりと言い合う長谷川と石原、それを穏やかな目で見ている竹野内。その構図はまさに、劇中で丁々発止を繰り返す矢口&カヨコと、物事を俯瞰で眺めている赤坂そのもので、本作で培った役柄のカラーが、今もなおそれぞれの中に息づいているかのようだった。おそらく、それほどまでに3人が神経を注ぎ、全身全霊で臨んだであろう映画『シン・ゴジラ』。ネタバレは厳禁だが、庵野作品らしく何度も見直して解釈を誰かと語りたくなる内容であることは間違いない。

映画『シン・ゴジラ』は7月29日より全国公開

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