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反日映画と呼ばれている『アンブロークン』の日本公開を期待する

コラム

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映画『アンブロークン(原題) / Unbroken』撮影中のアンジェリーナ・ジョリー監督
映画『アンブロークン(原題) / Unbroken』撮影中のアンジェリーナ・ジョリー監督 - Brad Hunter / Newspix / Getty Images

 アンジェリーナ・ジョリー監督の映画『アンブロークン(原題) / Unbroken』は、アカデミー賞にも3部門でノミネートされ、IMDbのユーザー投票では平均7点以上になるなどなかなか評判のいい映画だ。だが「この映画は歴史捏造の反日プロパガンダ映画なので日本で公開すべきではない」と主張する人たちがいるらしい。(服部弘一郎)

 僕自身はまだ映画を観ていないので、現時点で内容についてどうこう言うつもりはない。しかしその上で、僕はこの映画をぜひとも日本で公開すべきだと考えている。以下、その理由を述べたい。

反日映画か否かは公開中止の理由にならない

 「反日プロパガンダ映画だから公開すべきでない」という意見に対して、映画を観た上で「反日プロパガンダ映画ではないのだから公開しても構わない」と反論する人がいるかもしれない。だが僕自身はこれを、あまり良くない反論だと考えている。「公開すべきでない」「公開しても構わない」と正反対のことを言っているようだが、これはどちらも「映画の内容によっては公開中止も当然だ」という前提に立っているからだ。

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 だが考えてみてほしい。ある映画作品が「反日プロパガンダ」であるか否かを、一体誰がどのような方法で判断するのだろうか? そんなものは映画を観た上で観客が個別に判断すべきことで、映画を観る前から誰かに判断を丸投げすべきものではない。

 もちろん日本では思想信条の自由も言論の自由も保障されているから、映画を観る前からそれを反日プロパガンダだと決めつけるのはその人の自由だ。その人が自分自身の確信にもとづいて映画を観に行かないのも自由だし、その人が他人に「映画を観るな」と言うこともまた、言論や表現の自由の範囲内で認められるべきだとは思う。

 しかし「映画についての文句は映画を観てから言うべきである」と考える多くの映画ファンにとって、「こんな映画など観るな」という助言は余計なお世話でしかない。ましてや「日本で公開するな」などと言うのは、余計なお世話を通り越して迷惑なのだ。

反日映画こそ日本で公開すべきである

 『Unbroken』が反日映画か否かを、今この時点で論じるつもりはない。しかし仮にこの映画の中に歴史をねじ曲げて日本を中傷するような描写があるのだとすれば、むしろそうした映画こそ日本できちんと公開すべきなのではないだろうか。映画の中に事実誤認や歴史の歪曲があるのなら、それについては「ここがこう間違っている。次からは気をつけてください」と批判の声を上げるべきなのだ。そうした声があることを知れば、映画製作者たちは次の作品からそれを踏まえた作品作りをするだろう。

 「この映画は歴史を捏造した反日プロパガンダ映画だ。だから日本で公開すべきではない」という主張は、結局「他国でどれだけ日本の歴史についていい加減なウソがまかり通っていたとしても、日本人はそれについて知る必要はないし抗議の声を上げる必要もない」と言っているのに等しい。「映画は観ないで抗議だけしろ」という意味なのかもしれないが、「映画は観てないが、映画が間違いだらけだということはわかる」などという抗議を相手が真面目に取り合うとは思えない。「まずは映画をご覧下さい」と言われたら、それ以上なんの反論もできないだろう。

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 『Unbroken』が日本で公開されるかどうかは未定だが、この映画はアメリカで公開され、ヨーロッパで公開され、アジア諸国でも公開されている。中国や韓国で作っている抗日映画やドラマとは、まったく波及力が違うのだ。この映画の内容に日本に対する偏見を助長するような内容が仮に含まれているのだとすれば、その具体的な内容を日本人だけが知らず、日本に対する誤解や偏見が諸外国で広まっていくのをただ黙って見ていろと言うのは間抜けな話だろう。

 「反日映画だから公開中止にすべきだ」と言う人たちは、この映画が公開されることで日本にどんな不利益があり、映画が公開中止になることで日本にどんな利益がもたらされると思っているのだろうか? 僕自身は映画が公開中止になっても、日本には何も得るものがないように思うのだが……。

映画を観るも観ないも自由

 「わたしは牛乳を飲みたくないので牛乳の販売を中止しろ」と言う人がいたら、周囲の人はどう思うだろうか? 牛乳を飲みたくなければ飲まなければいい。他人に飲まない方がいいと勧めるのも自由だ。だがそれを一律に禁止して、自分の周囲から完全に排除しようとするのは我がままで乱暴だ。

 映画についても同じことが言える。「わたしはこんな映画を観たくない!」と言う人は、その映画を観なくても構わない。「家族や友人にも観てほしくない」と言うのであれば、それは個人的に周囲の人たちを説得して回ればいい。しかし「わたしは観たくないから映画の公開そのものをやめろ」と言うのは乱暴すぎる。

 『アンブロークン(原題) / Unbroken』は日本でも公開すべきである。これほど話題になっている映画を、実際に観てみたいではないか。それが優れた映画なら言うことはないし、ダメな映画ならダメでも構わない。ダメな映画をコテンパンに批判しこき下ろすのも、映画ファンの楽しみなのだから。「映画を公開するな」と主張する人たちには、映画ファンのそんなささやかな楽しみを奪っていただきたくないものだ。

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