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「あまちゃん」演出家が語るフィクションで描く被災地 二つの震災をつないで

「あまちゃん」演出家が語るフィクションで描く被災地 二つの震災をつないで
ドキュメンタリーとは別のアプローチで震災を描く - (C)2015 NHK

 3月10日にNHKで放送された阪神・淡路大震災と東日本大震災を結ぶ青春ドラマ「LIVE!LOVE!SING! 生きて愛して歌うこと」の劇場版が、2016年1月に劇場公開されることが決まった。同作は、今月に開催された「山形国際ドキュメンタリー映画祭2015」でも上映され、映画祭を賑わす存在となった。監督は、阪神・淡路大震災をテーマにし、映画界でも高い評価を受けた『その街のこども 劇場版』の井上剛。

 映画は、福島第一原発事故の影響で離れ離れになった同級生たちが再会し、立ち入り禁止区域になっている母校へタイムカプセルを掘り出しに行くロードムービー。ヒロインの朝海は神戸で避難生活を送っている設定で、二つの震災を絡ませながら、癒えることのない心の傷と、真の復興の意味を問いかけている。

 劇場版は、74分の全国放送版に26分追加編集したもので、兵庫県と福島県で限定的に放送された。制作総括の京田光広氏は「100分という放送枠がなかなか取れない中、まずは74分版を観ていただくのが第一と考えた。でも劇場公開は、ドラマ制作時点から視野に入れていました」と明かし、井上監督も「劇場版は他の人物にも光を当て、より多重な構造になったと思う。劇場で、主人公たちと一緒に体感していただきたいと思って作りました」と語った。

 撮影は2014年4月から5月にかけて福島県の浪江町などで行われた。出演は、E-girlsの石井杏奈、ロックバンド・黒猫チェルシーの渡辺大知、NMB48の木下百花など期待の新鋭が並ぶ。2013年のオーディションの時点で演技経験があまりなく、かつ被災地を訪れたことがないという点が抜てきの決め手となったという。

 井上監督は「ロケバスを降りた瞬間、(被災地を見て)本当に彼らがドギマギしていて、役の感情と混乱しているのが分かった。そういう感情を、そのまますくい上げたという感じです。彼らとはロケバスの中で、いろんな話をしました。わたしを含めたスタッフも彼らと同じように『体験』し、その時間を大切に共有しながら撮影しました」と制作を振り返った。

 震災は繊細なテーマゆえ、ドキュメンタリーは多いがフィクションの企画は成立しづらいと言われている。その中でNHKは、井上監督が演出を務めた朝の連続テレビ小説「あまちゃん」を筆頭に被災地を取り上げ、彼らの声を代弁するかのようなドラマを精力的に製作。岩手県の田野畑村を舞台にした「それからの海」、3月11日に立ち上げられた臨時災害ラジオ放送局「女川さいがいFM」の実話を基にした「ラジオ」などの力作が生まれている。

 作り手として震災の記憶を如何に伝え、未曾有の経験をした人たちの感情とどのように向き合って作品に仕上げるのかというテーマに対する井上監督らの取り組みは、今後の映画界にとっても大きな刺激となるだろう。(取材・文:中山治美)


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