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『トレスポ』ブームが呼んだ奇跡 渋谷シネマライズ代表が熱狂を振り返る

当時のブームを振り返る頼光裕さん 手には『トレインスポッティング』のパンフレット
当時のブームを振り返る頼光裕さん 手には『トレインスポッティング』のパンフレット

 1996年に公開され、若者を中心に一大ムーブメントを巻き起こした青春映画『トレインスポッティング』。かつてヘロインに溺れる日常を送った若者たちが20年ぶりに再結集を果たす続編『T2 トレインスポッティング』の公開を受けて、渋谷のカルチャーに多大な影響を与えたミニシアターにして、当時の『トレスポ』人気を牽引した「シネマライズ」代表の頼光裕さんが、熱狂的な時代の空気と共にブームを振り返った。

【写真】あの若者たちも中年に

 『トレインスポッティング』が公開されたのは1996年11月30日。仕事も金も、社会に反抗する気もなくヘロインに溺れるスコットランド・エディンバラの若者たちの「悲惨で陽気」な日常を、スタイリッシュな映像とブリットポップに彩られたサウンドトラックで彩った作風は、映画を形作る全ての要素が当時の若者たちを魅了し、大ヒットを記録した。

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世界的なブームとなった『トレインスポッティング』。俳優たちは現在も映画界で活躍している。Polygram Filmed Entertainment / Photofest / ゲッティ イメージズ

 1990年代といえば、渋谷が、若者文化の発信地として注目を浴びていた時期。頼さんも「多分、音楽・ファッション・映画そういうものをひっくるめて、新しいものに触れられるっていう場がそこにあったんですよね」と振り返る。

 当時から渋谷のミニシアター文化の中心にあったシネマライズでかけられた『トレインスポッティング』は、公開から33週のロングランを達成。興行収入2億3,000万円を突破する大ヒットとなった。「その後に『アメリ』(2001)が抜きましたけど、業界的にみんな騒然となった数字でした」。ブームの担い手は社会人や大学生だけではなく、高校生でもあったという。

 「人と違うっていうところに価値観を見出して、頑張って背伸びして来てくれた皆さんですよね。そうした、人が知らないものを知りたい、観たいという意識の集合体があれだけの数字になった。その後も渋谷はすごく熱くて。シネセゾン渋谷で『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』をやって、うちで『π』や『ラン・ローラ・ラン』、パルコ(シネクイント)が『バッファロー'66』をやった奇跡のような夏もあった。それも全部『トレスポ』がきっかけだったかな。“あそこは来ている人がみんなオシャレしてて気に入らない“なんて言われたこともありましたけど、そんなつもりはなかった。みんなちょっと自分が周りと違うと思っていて、気合を入れてきてくれることで、独特な空気感が造られていったんです」。

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ノスタルジーだけじゃない続編の魅力

 掲示すれば「全部盗まれた」というポスターや、印刷代の高さから「全くもうからなかった」という豪華パンフレットなど関連グッズも「羽がついたように」売れたという『トレスポ』。光裕さんは「初めて観た時からいろいろな出来事が起こって、そんな映画久々だったなって。あらためて文句ないよって思いましたね」と語る。

 シネマライズは昨年1月に惜しまれつつ閉館。現在はスペースシャワーネットワークの運営するライブスペース「WWW」となった。続編もライズで観たかった……というファンも多いはずだが、頼さんに再開の意思はない。「『T2』がすごいのは、ノスタルジー映画じゃなくて、今のみんなを描いた作品だっていうところ。業界が変化して皆さんに見せたい作品を思うように手にいれることができなくなって。ずるずるとノスタルジーにひたって続けたくなかったからやめた。後は皆さんの記憶の中にいられればと」。

 ただ、『トレスポ』だけは少し事情は違うようだ。最後に頼さんは「当時うちで観て人生が変わってしまった人たちや、20年経ってスーツ着て会社勤めの人も、きっとどこかに『トレスポ』かっこいい! って思った自分がまだいるはず。そういうみんなが久々に映画館に行って、その後は『トレスポ』を肴に一杯なんてなればいいですよね」。(編集部・入倉功一)

映画『T2 トレインスポッティング』は全国公開中

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