草間彌生、特別巡回展がニューヨークで開催中
世界的な人気を誇る前衛アートの先駆者、草間彌生の特別巡回展「YAYOI KUSAMA: FESTIVAL OF LIFE」が、ニューヨークのデヴィッド・ズワーナー・ギャラリーで、12月22日まで開催されている。同巡回展は平日でも2、3時間待ちとのことで、週末は雪が降っている中、外で4時間も待っている人がいたほどの盛況ぶりだ。
まず、デヴィッド・ズワーナー・ギャラリー525の入り口からまっすぐ進んだ最初の部屋で「Infinity Mirrored Room-Let’s Survive Forever」が出迎えてくれる。カーペットの上に多くの鏡が反響し合うことで身体が無限(インフィニティー)の状態に陥った感覚になる中、銀色のステンレスボールがあることで、不思議な空間が作り上げられている。この作品は、カップルや家族など、ひと組ずつこの空間に入ることができ、じっくり鑑賞できるため、インスタ映えする写真もしっかり撮れるようになっている。
「LONGING FOR ETERNITY」では、用意されているビニールシューズを履いて入った空間に、ミラーボックスが真ん中に鎮座し、眩しいほどのLEDライトが反射。それらは、さまざまな色に変化し、まるで万華鏡の中にいるような幻想的な世界を作り上げており、文字通り“永遠のつながり”を感じさせる作品となっている。さらにそのミラーボックスからは、自身の顔を覗くことができ、幻想的な世界にたたずむ自分を写真に収めることもできる。
続く「WITH ALL MY LOVE FOR THE TULIPS, I PRAY FOREVER」では、これまで草間が手掛けてきた水玉模様を施した作品をほうふつさせる、水玉模様の3つの巨大なチューリップの彫刻が配置されている。草間自身が幻聴や幻覚に悩まされていた時期に、そんな状態から逃れるために作り上げた世界観が、おそらくこんな感じではなかったのかと想像を膨らませてくれる作品であり、水玉模様を見つめていると方向感覚も徐々に失っていく気になる。
ギャラリー533では、中央に花の形をしたステンレスの作品「FLOWERS THAT BLOOM NOW」があり、周りの壁には絵画が展示されている。草間の2013年の作品「MY SOUL IS WANDERING」や「WOMEN IN THE MEMORIES」から、2017年の作品「WHEN I SAW THE LARGEST DREAM IN LIFE」や「I FOUND DEATH IN THIS GLORIOUS LIFE」まで、色とりどりの作品に圧倒されながら、作品ごとに異なる彼女の心境と変化を垣間見ることができる。まさに、70年間、アーティストとして独自の道を切り開いてきた草間彌生の人生が集約された貴重な空間になっている。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)