思春期の女子トークは下ネタが重要!『ブックスマート』オリヴィア・ワイルド監督、高校時代を振り返る
『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』(上映中)で長編監督デビューを果たし、各国の映画祭で25部門受賞、65ノミネートの快進撃を見せる女優のオリヴィア・ワイルド。優等生の女子高生2人が卒業前夜に繰り広げる一夜の冒険……というと、ありふれたストーリーに聞こえるかもしれないが、本作はとにかくぶっ飛んでいる。人形アニメあり、過激な下ネタあり、だけど切実な青春劇に仕上がっている本作に込めた思いを、自身の高校時代を振り返りながら語った。
【動画】『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』予告編
本作の主人公は、高校生活のすべてを勉学に捧げ、輝かしい未来をつかんだエイミー(ケイトリン・デヴァー)とモリー(ビーニー・フェルドスタイン)。遊んでいた同級生たちを見返すはずが、なんと彼らも実は成績優秀でちゃっかり希望の進路へ。ショックを受けたエイミー&モリーは、呼ばれてもいない卒業パーティーに乗り込み、失われた青春を取り戻す決意をする。
海外ドラマ「Dr.HOUSE」シリーズや映画『トロン:レガシー』(2010)『リチャード・ジュエル』(2019)などで女優として活躍してきたオリヴィアだが、「元々、監督というプロセスをもっと理解したいと思っていた」という。「歳を重ねてたくさんの映画に出演しているうちに映画作りのプロセスの意味を知りたくなって、仕事をした映画監督たちに質問をしたりして、さらに興味が大きくなっていったわ。そうして10年くらい役者として仕事をして、やっと勇気を出して短編やMVを作ることができたの。わたしは、いろんなテクニック、ツールを使ってストーリーをつづるような作品にインスピレーションを感じる。だから今回もアニメ、ダンス、音楽を使って伝えたいことを表現した。野心的な作品にしたかったの」
エイミーとモリーは劇中、目当てのパーティー会場にたどり着くまでにかなり紆余曲折することになるが、その過程で浮き彫りになってくる2人の関係が見ものだ。一見、物事に対して積極的に見えるのはモリーで、エイミーはどちらかというと引っ込み思案。これまではうまくいっていたのが、思いがけない出来事の連続でそれぞれ蓄積していた感情を互いに噴出していくこととなる。
「わたしの場合は勉強にフォーカスした保守的な寄宿学校だったし、東海岸にあって冬は寒くて薄暗い。青春映画を観ると、カリフォルニアで太陽が燦々と差し込む中、ティーンが車に乗っていて……羨ましいなあなんて思っていたわ(笑)。だから、こうだったらよかったのにな、というファンタジーを形にしたのかもしれない。わたしにとっては、その時に体験したどんなロマンスより、女友達との思い出が深い。その関係性を通して本質的に大事なことを学べるし、人生において最初の親密な人間関係なんじゃないかしら。恋人から学ぶみたいな映画が多いけど、実際は友達から学ぶことの方が多いはず」
そんな2人の友情が生々しく感じられるのは、ふんだんにちりばめられた下ネタも理由の一つ。例えば、処女である2人が初体験を迎えるときのために、タクシーの中でスマホでポルノを視聴していたときのこと。運転手は偶然にも、校長先生。先生が気を利かせてスピーカーにしたことから車内にあえぎ声が響き渡り……という間の悪さはかなりおかしい。
「思春期ってぐちゃぐちゃよね。居心地の悪い発見の連続だし。そういう思春期の綺麗じゃない部分も見せたかったの。そうすることで女性同士のコミュニケーションをより正直に表現できたと思うし、それは楽しい作業だったわ。思春期を描いた映画って、男性キャラの場合はそういったところもバッチリ見せるのに、女性キャラになると綺麗に見せてしまっていることが多くて、それって観客のためによくないと思う。今はいろんなコメディー、ドラマ、ドキュメンタリーに女性がたくさん関わっていて、女性としての体験を深く掘り下げているわよね。最近ではミカエラ・コール監督・主演のドラマ『アイ・メイ・デストロイ・ユー(原題)/I May Destroy You』がお気に入り。本当に正直な作品なの」
「ぶっ飛んだ作風」はエンディングまで続き、あるモノをキャストの顔面に当てる演出がユニークだ。これは、オリヴィア監督の「結果をあまり考えず行動できるような、若い時の自由なエネルギーを表現したい」という意図によるもの。「わたしはこの映画をシリアスに捉えてほしいわけではなくて、自分のことも笑い飛ばせるんだ! と思ってもらえるように表現したつもり。自由だった頃の自分を思い出すような作品になっていると思う。各キャストそれぞれ1秒2000フレームで撮影したんだけど、カメラを複数台使って超スローで撮影するのは楽しかった」
そう目を輝かせるオリヴィアは、次回作も続々待機中。米ソニー・ピクチャーズが企画開発を進めるタイトル未定の新マーベル映画で監督を務めることが先ごろ報じられた。そのほか、アトランタ五輪女子体操選手の実話に基づく『パーフェクト(原題)/Perfect』、シャイア・ラブーフ、フローレンス・ピュー、ダコタ・ジョンソン、クリス・パインら豪華な顔ぶれが集結した『ドント・ウォリー・ダーリン(原題)/Don't Worry, Darling』など。同作では女優を兼任する。(編集部・石井百合子)