監督も文句なしのキャスティング!柄本佑主演『痛くない死に方』湯布院映画祭で絶賛の嵐
俳優の柄本佑が在宅医を演じる映画『痛くない死に方』が14日、大分県由布市湯布院公民館で開催中の第45回湯布院映画祭の特別試写作品として上映され、辛口で知られる映画祭の観客から絶賛の嵐を受けた。上映後のシンポジウムには主演の柄本のほか、奥田瑛二、原作者の長尾和宏、メガホンを取った高橋伴明監督が出席した。
例年は8月下旬に開催されている湯布院映画祭だが、今年は新型コロナウイルスの影響で、期間短縮、座席の人数制限、パーティーの中止、検温・マスク着用などの対策を徹底したうえで11月に実施。映画祭の常連客が多数集まった会場に、高橋監督は「この時期の湯布院がこんなに寒いことを知らなくて。どうなることかと思いましたが、久しぶりに湯布院に来られて良かった。ここに来られたということは映画を作れたということ。できる限りこれからも作り続けて、また湯布院に来たい」とあいさつ。柄本が「お久しぶりですの方も、初めましての方もいらっしゃいますが。高橋伴明監督の作品にまさか主役で出させてもらえると思っていなかったので、出られてうれしかったです」と続けると、その様子を見た奥田が「今、うちの婿がしゃべっていましたが」と目を細めつつ、「コロナの状況ですが、この映画のチケットが即完売ということでとてもうれしく思っています」と感謝を述べた。
在宅医療のスペシャリストである長尾医師のベストセラー「痛くない死に方」「痛い在宅医」を原作とした本作は、在宅医としてがん患者やその家族たちに向き合い、現実の壁などにぶつかりながらも、医師として成長していく河田仁(柄本)の姿を描いたドラマ。原作者の長尾医師は、完成した作品を観たそうで、「自分の本が映画になるのは信じられないというか。改めて観て、泣いてしまいました」と切り出すと、劇中後半では柄本演じる河田ら登場人物たちが、在宅医療をモチーフとしたユーモラスな川柳を所々で披露することを踏まえ、「高橋監督が映画のために作った川柳も、わたしたちの日常そのものでした。美談ばかりじゃない、僕たちの日常そのものを本当にリアルなところを描いていただいた」と感無量の様子だった。
キャストには柄本や奥田のほか、坂井真紀、余貴美子、大谷直子、宇崎竜童ら実力派が勢ぞろい。キャスティングについて、高橋監督は「ほぼプロデューサーからの提案で、僕としても全然異存がなかった。ただその中でちょっとだけこだわりたかったのが、最初の患者である下元史朗。彼は40年来の付き合いがある盟友と言ってもいい存在で。三回くらいケンカ別れはしていますけど。でも彼にやってほしい役だったんで、こだわりましたね。キャスティングは文句ないです」とコメント。その言葉通り、下元ふんするがん患者が登場する映画前半のハイライトともいうべきシーンは、映画祭の観客に強烈な印象を残したようで、そのシーンを踏まえた感想が観客からも寄せられた。そして後半に登場する、もうひとりの患者を演じた宇崎にも観客から称賛の声が続々。末期がんを患いながらも、ユーモアを忘れずにひょうひょうと過ごす役柄が観客の心を打ったようで、「最初はつらかったが、後半に彼が出てくることによって救われた気分になった」「今度の映画賞の助演男優賞は間違いない!」という声まで飛び出した。
観客から称賛の声が続々と飛び出すなど、大盛り上がりのシンポジウムとなったが、観客からは「この映画に携わって、在宅医療にしたいと思いましたか?」という質問も。柄本は「ちょっとまだ想像できないですね。一応、まだ33歳で。子どもが3歳なんでね」と返答しつつ、「でも具体的にはまだわからないですけど、最後に良かった、いい人生だったなと思えたらいいなと思っています」と笑顔で付け加えた。(取材・文:壬生智裕)
映画『痛くない死に方』は2021年2月公開予定