批評家も絶賛!話題のNetflixアニメ「アーケイン」は何がスゴいのか
大人気PCオンラインゲーム「リーグ・オブ・レジェンド」初のNetflixオリジナルアニメシリーズ「Arcane(アーケイン)」が、世界中の映像ファンを虜にしている。米大手映画批評サイト Rotten Tomatoes では批評家100%・観客98%という異例の高得点を記録。アカデミー賞長編アニメ映画賞を受賞したアニメーション映画『スパイダーマン:スパイダーバース』が批評家97%・観客93%、マーベル・スタジオ制作のアニメシリーズ「ホワット・イフ...?」が批評家93%・観客93%と、この得点のすごさは他作品との比較ではっきりとわかる。シーズン2も決定した話題のNetflixアニメがここまで評価されるワケとは。(スコアは11月22日時点)
「Arcane(アーケイン)」が高得点を獲得した理由は、予告編だけでは伝わりにくいが、本編を見れば納得がいく。映像とキャラクター設定の両方が、他のアニメーションとは違う独自の魅力を持っているのだ。特に、映像の魅力は一目瞭然。人物や背景に輪郭線がなく、画面全体がまるで絵画のような絵筆を感じさせるタッチ。さらに微妙な陰影のある色調が、フランスの人気バンド・デシネ作家エンキ・ビラルの作風を連想させ、このアニメ制作プロダクション「Fortiche Production」がパリの会社であることを思い出させる。本作の映像は、日本製アニメや米製アニメとは別の発想、別の美意識から生まれたものなのではないかと感じさせるのだ。
夜の霧に煙る吊橋、老朽化して傾いた建物が密集する街といった様々な情景は、まるで絵画のような美しさ。それに加えて、登場人物が錯乱状態に陥る時など、人物の心理をアニメのタッチを変えて描写するという演出も印象的。同時に目を奪うのが、人物たちの表情だ。彼らの顔は実写とも普通の3Dアニメとも違う法則によって変化し、その表情に浮かぶ豊かで細やかな情感から目が離せなくなる。
そうした表情の表現に相応しく、キャラクター設定も大人向き。ストーリーはざっくり要約すれば、豊かで文化的な地上都市と貧しく暴力が支配する地下都市、2つの世界の抗争を描くドラマなのだが、物語も人物像も単純ではない。主要キャラクターたちがどのような過去を持つのかが少しずつ描かれ、貧民窟の子供も、支配者階級の大人も、誰もが傷と葛藤を持っていることがわかる。生活環境も世代も信条も多種多様だが、単純な善人や悪人はひとりもいないのだ。
魅力的なキャラクターを描くため、英語版ボイスキャストには人気俳優が続々。ドラマの中心となる姉妹役には、映画ファンお馴染みの二人が起用された。しっかり者の姉ヴァイ役は、映画『バンブルビー』やマーベルドラマ「ホークアイ」でケイト・ビショップを演じるヘイリー・スタンフェルド。情緒不安定な妹ジンクス役は、ザック・スナイダー監督のゾンビ映画『アーミー・オブ・ザ・デッド』で主人公の娘ケイトを演じたエラ・パーネルが務める。また、次第に権力を手にしていく発明家ジェイス役は、人気ドラマ「LUCIFER/ルシファー」でヒロインの元夫ダンに扮したケヴィン・アレハンドロ、彼に協力する歩行杖の科学者ビクター役は、「ゲーム・オブ・スローンズ」でドラゴンの女王の兄ヴィセーリスを演じたハリー・ロイドが担当している。
そんな登場人物たちによる群像劇なので、ストーリーも大人向き。原作ゲーム「リーグ・オブ・レジェンド」の登場人物たちの前日譚でもあるのだが、ゲームの知識が全くなくても問題ない。ドラマの基本となる2つの世界がどのような環境なのか、どんな歴史によって生まれたのかは、作中で少しずつ描かれていく。そして、そこで暮らすさまざまな人間たちのドラマから目が離せなくなってしまうのだ。(文・平沢薫)
Netflixオリジナルアニメシリーズ「Arcane(アーケイン)」シーズン1は配信中(全9話)