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予習しておきたい!『ラ・ラ・ランド』に影響を与えた名作ミュージカル一挙

ミュージカル

 すでに公開されているアメリカでは大ヒットを記録し、映画賞レースを席巻、アカデミー賞でも最有力といわれているミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』。鬼音楽教師と生徒の狂気のレッスンを活写して映画ファンを驚かせた『セッション』デイミアン・チャゼル監督が手掛けた本作には、そこかしこに往年のミュージカル映画への愛があふれている。そこで今週のクローズアップでは、『ラ・ラ・ランド』をもっと楽しむために観ておきたいミュージカル映画を一挙ご紹介!(編集部・市川遥)

ジャック・ドゥミ監督のカラフルな仏ミュージカル

『シェルブールの雨傘』(1963)

『シェルブールの雨傘』
Zeitgeist Films / Photofest / ゲッティ イメージズ

冷たい雨が降るフランス北西部の港町シェルブールを舞台に、運命の恋人(カトリーヌ・ドヌーヴニーノ・カステルヌオーヴォ)が戦争に引き裂かれ、別々の道を歩んで再会するまでを、全編セリフにメロディーをつけて描いたミュージカル。オープニング、中盤、ラストと要所で流れるミシェル・ルグランの主題曲はあまりにも切なく悲しい。第17回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作。

『ロシュフォールの恋人たち』(1966)

『ロシュフォールの恋人たち』
HELENE JEANBRAU / PARC FILMS / MADELEINE FILMS / The Kobal Collection / WireImage.com

フランス西南部の陽光輝く海辺の町ロシュフォールを舞台に、ダンサー志望の妹(カトリーヌ・ドヌーヴ)と作曲家の卵の姉(ドヌーヴの実の姉フランソワーズ・ドルレアック)という双子姉妹の夢と恋を、ジャジーなルグランの名曲と共につづったとびきりキュートな一作。『ウエスト・サイド物語』ジョージ・チャキリス『雨に唄えば』ジーン・ケリーらアメリカのミュージカルスターが登場するのも楽しいところ。

★チャゼル監督はジャック・ドゥミ監督のこの二作からの影響を受けたと公言しているだけあって、『ラ・ラ・ランド』は『シェルブールの雨傘』の胸を引き裂く切なさと『ロシュフォールの恋人たち』の心弾む陽気さを色濃く感じさせる。劇中の季節ごとに小タイトルを出して区切りを付けていく点、2回目の鑑賞ではオープニングから泣ける点などは『シェルブールの雨傘』を思わせるし、本格的なジャズを演奏できる自分の店を持ちたいと願うセバスチャン(ライアン・ゴズリング)と女優志望のミア(エマ・ストーン)が夢に恋にひた走るきらめきの美しさは『ロシュフォールの恋人たち』的。衣装や美術がカラフル&オシャレで、クラシックなのにモダンなところも三作に共通している。

スカート振って!女子だけで歌って踊る!

『ウエスト・サイド物語』(1961)

『ウエスト・サイド物語』
United Artists / Photofest / Zeta Image

ウィリアム・シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」を下敷きに、シャーク団とジェット団が敵対するニューヨークのスラム街で許されぬ恋に落ちた二人の若者(リチャード・ベイマーナタリー・ウッド)に訪れる悲劇をつづった同名舞台の映画版。監督は『サウンド・オブ・ミュージック』ロバート・ワイズらで、第34回アカデミー賞では10部門受賞。

『スイート・チャリティー』(1968)

『スイート・チャリティー』
Universal / Photofest / ゲッティ イメージズ

フェデリコ・フェリーニ監督の『カビリアの夜』をベースにした同名舞台を、ボブ・フォッシー監督(『キャバレー』)が映画的な映像表現を追求して描いたミュージカル。悲惨な状況にあっても純粋で楽天的な心を失くさない、愛すべき(なのに男には愛されない)女の子チャリティーをチャーミングに体現したシャーリー・マクレーンの好演が光る。

★振付師いわく『ラ・ラ・ランド』のミア(エマ・ストーン)が同じく女優志望の3人のルームメイトたちと部屋を出て、仕事のチャンスを探しにパーティーへと向かう「Someone In The Crowd」のシーンの振付は、『ウエスト・サイド物語』の恋に落ちたヒロインが同郷の女友達の前でスカートを振って歌い踊る「I Feel Pretty」のイメージで作り上げたとのこと。『スイート・チャリティー』のチャリティーがダンスホールの2人の仲間と“こんなところ辞めて出て行こう”と歌い踊る「There's Gotta Be Something Better Than This」的ともいえる。

恋になんて絶対落ちない!アステア&ロジャースの名コンビ

『有頂天時代』(1936)

『有頂天時代』
John Springer Collection / Getty Images

フレッド・アステアジンジャー・ロジャースという1930年代のミュージカル映画といったらこの二人、という名コンビのタッグ作。最悪の出会いをしたダンサーとダンス教師がダンスパートナーとなり、次第に恋するさまをタップダンスと共につづる。

『踊らん哉』(1937)

『踊らん哉』
RKO Radio Pictures Inc / Photofest / ゲッティ イメージズ

有名タップダンサー(ロジャース)の写真を一目見て恋に落ちたバレエダンサー(アステア)が、彼女を追ってパリからニューヨークへ渡る豪華客船に一緒に乗り込んだことで、二人が極秘結婚しているというゴシップが流れることに。バレエとタップを融合させて二人で踊るシーンには心も躍る。

★最悪の出会いをした『ラ・ラ・ランド』のセバスチャン(ライアン・ゴズリング)とミア(エマ・ストーン)が美しいロサンゼルスの夜景をバックに“この相手のことは絶対に好きにならない。すてきな夜なのにもったいない”と歌いタップダンスする「A Lovely Night」は、『有頂天時代』の「A Fine Romance」や『踊らん哉』の「Let’s Call the Whole Thing Off」といったアステア&ロジャース映画のナンバーを思わせる。実際には惹かれ合っている二人が強がってつんけんしながら歌うさまはほほ笑ましい。ゴズリングはダンス以外にも、アステアのちょっとした歩き方などをセバスチャン役に取り入れたそう。

音楽とダンスで魅せる!映画史に残るラストシーン!

『巴里のアメリカ人』(1951)

『巴里のアメリカ人』
MGM / Photofest / ゲッティイメージズ

パリで暮らすしがない絵描きのアメリカ人(ジーン・ケリー)がフランス娘(レスリー・キャロン)に恋するが、彼女には婚約者がいて……。ジョージ・ガーシュウィンの曲を映画化するという企画で、映画で使われる音楽は「I Got Rhythm」をはじめ、全てジョージ作曲、その兄アイラ作詞のものだ。登場人物の関係性が軽妙でおかしく、パリへの憧れに満ちたセットもいとおしい。第24回アカデミー賞の6部門で受賞した、ヴィンセント・ミネリ監督作。

『雨に唄えば』(1952)

『巴里のアメリカ人』
MGM / Photofest / ゲッティ イメージズ

無声映画からトーキーへの移行期のハリウッドを舞台に、無声映画のスター(ジーン・ケリー)と駆け出しの舞台女優(デビー・レイノルズ)の恋を描く。土砂降りの中、恋にときめくジーン・ケリーが歌い踊る「雨に唄えば」はあまりにも有名。トーキーの出現に慌てふためくハリウッドの舞台裏も面白い。主演のケリーはスタンリー・ドーネンと共に監督も務めた。

★『セッション』のラストの圧巻の演奏シーンを凌駕したといっても過言ではない『ラ・ラ・ランド』の心に直接訴えかけてくるラストシーンは、『巴里のアメリカ人』と『雨に唄えば』のラスト&終盤に通じるものがある。中でも『巴里のアメリカ人』の主人公(ジーン・ケリー)が彼が描いた絵の中に入っていき、18分弱のガーシュインの表題曲まるまる1曲とダンスと舞台装置、そしてカメラの演出とで“彼の理想”を表現するラストにより近い。『ラ・ラ・ランド』のラストにはケリーほどのダンスはないものの、記憶と深くリンクしているという音楽の特性を最大限効果的に用いると同時にビジュアルでも見せていく、いまだかつてないシーンとなった。

『ラ・ラ・ランド』
往年のミュージカルへの愛が詰まった『ラ・ラ・ランド』 - (c) 2016 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. Photo credit: EW0001: Sebastian (Ryan Gosling) and Mia (Emma Stone) in LA LA LAND.Photo courtesy of Lionsgate.

 また、『ラ・ラ・ランド』にはゴズリングが『雨に唄えば』のケリーのごとく街灯を使ってくるりと回るシーンがあれば、エマが『パリの恋人』(1957)のオードリー・ヘプバーンのように色とりどりの風船と共に凱旋門の前に立つ場面も。チャゼル監督が数々の名作ミュージカルを自分の内に吸収し、深く理解して新たな形に発展させていることが本作を観ればわかるはずだ。

映画『ラ・ラ・ランド』は2月24日よりTOHOシネマズみゆき座ほか全国公開

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