シネマトゥデイ

シネマトゥデイ
.
アメリカン・スナイパー
(C) 2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
英題:
AMERICAN SNIPER
製作年:
2014年
製作国:
アメリカ
日本公開:
2015年2月21日
(新宿ピカデリーほか)
上映時間:
配給:
ワーナー・ブラザース映画
カラー

チェック:アメリカ軍で最も強い狙撃手と呼ばれた、クリス・カイルの自叙伝を実写化したドラマ。アメリカ海軍特殊部隊ネイビーシールズ所属のスナイパーであった彼が、イラク戦争で数々の戦果を挙げながらも心に傷を負っていくさまを見つめる。メガホンを取るのは、『ミリオンダラー・ベイビー』などのクリント・イーストウッド。『世界にひとつのプレイブック』などのブラッドリー・クーパーが主演を務め、プロデューサーとしても名を連ねている。戦争とは何かを問うテーマに加え、壮絶な戦闘描写も見もの。

ストーリー:イラク戦争に出征した、アメリカ海軍特殊部隊ネイビーシールズの隊員クリス・カイル(ブラッドリー・クーパー)。スナイパーである彼は、「誰一人残さない」というネイビーシールズのモットーに従うようにして仲間たちを徹底的に援護する。人並み外れた狙撃の精度からレジェンドと称されるが、その一方で反乱軍に賞金を懸けられてしまう。故郷に残した家族を思いながら、スコープをのぞき、引き金を引き、敵の命を奪っていくクリス。4回にわたってイラクに送られた彼は、心に深い傷を負ってしまう。

アメリカン・スナイパー
(C) 2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

映画短評

  • 中山 治美
    誰も彼の気持ちは共有出来ない
    ★★★★
    »読む«閉じる

     同様に、兵士の後遺症を描いた映画はこれまでもあった。S・ビア監督『ある愛の風景』(04)は、米映画『マイ・ブラザー』(09)としてリメイクされた。藤本幸久監督の米海兵隊のドキュメンタリー『アメリカばんざい crazy as usual』(08)帰還後、ホームレスになった元兵士の現状に迫った。彼らの心の叫びにようやく世間が関心を示したのはイーストウッド印の成せる技か。
     そして本作は、兵士が戦場で味わった緊張、恐怖、悔恨といった苦い感情は、家族ですら共有出来ないことをまざまざと見せつける。これは英雄伝ではない。160人分の魂と、孤独を抱えて生きることになってしまった男の悲劇なのである。

  • 山縣みどり
    C・イーストウッド監督のステーリーテリング術にうなる
    ★★★★★
    »読む«閉じる

    クリント・イーストウッド監督の巧みなストーリーテリング術が光る作品だ。“レジェンド”と異名を取った海兵隊の狙撃手クリス・カイルの人生はワイルドかつ濃密だが、監督はスリリングな冒頭に続くフラッシュバック場面でカイルの背景や人間性を確立することで彼に対する観客の共感性を高める。その後はカイル視線で物語を見ることになり、危険な戦場における「偉大なるアメリカを守る」意識も、銃後の妻子との平穏な生活に馴染めない苦悩も我が身に降り掛かった出来事のように感じられるという仕組みだ。まさに匠の技! しかも原作の愛国精神も生かしつつ、きちんと反戦映画に仕上げているのが素晴らしい。 

  • 轟 夕起夫
    「内なる戦争」へと転調し、そして生まれるドッペルゲンガー
    ★★★★
    »読む«閉じる

     映画監督もスナイパーも、shootingに失敗は許されない。というのは建前で、実際には的を外してしまうこともあるだろう。終盤、毎度のごとく、イーストウッド監督は強調/転調したい場面でスローモーションを用いているのだが、これには最初、違和感があった。が! そのスローモーションで描かれた時間が、“軍人クリス・カイル”の最後の絶頂で、また「内なる戦争」へと転調してゆく導入剤にもなっており、会得した。国外では自分の影のような狙撃手に襲われ、帰国しても(無数にいる)己の分身と向き合わざるを得ない兵士のもがき。羊を狼から守る番犬になろうとしてドッペルゲンガーに蝕まれていく男の、人間の、普遍的な物語。

  • ミルクマン斉藤
    アンチヒーロー映画ではない。でもヒーロー映画じゃ絶対にない!
    ★★★★★
    »読む«閉じる

    レッドネックと呼ばれれば「テキサス人だ」と意地を張る無教養な自称カウボーイが、たまたま射撃の才があったばかりに味方の命を救い英雄視されるものの、自分は一発撃つたびに心拍を異常昂進させ、母国に戻っても戦場の爆破音や拷問のドリル音に囚われ続けて次第に精神を崩していく、そんなPTSDの恐怖を観客に強制体験させる映画。『父親たちの星条旗』に露骨だった反イラク戦争の意思(殉職した隊員の厭戦的手紙!)、遡っては殺人者の背に星条旗を翻らせた『許されざる者』に繋がる「暴力こそが米国の歴史だ」的諦念がここに集約。この重苦しいムードとは逆に、宿敵の元五輪選手スナイパーとの決闘空間は別次元となるB級活劇魂に痺れる!

  • なかざわひでゆき
    英雄と呼ばれた男の光と影を通じて戦争の真実を探る
    ★★★★★
    »読む«閉じる

     9.11の衝撃に怒りを燃やし、自ら特殊部隊に志願したスナイパーが、やがてイラク戦争の英雄として祭り上げられていく。
     アメリカは愛国者の国であり、日常生活と愛国心は切っても切り離せない、とは筆者がかつて取材したハリウッド俳優の言葉だが、その意味で主人公クリスは平均的な米国市民だ。しかし、そんな彼の直面する深い苦悩と皮肉な運命が、愛国者の正義をも打ち砕く戦争の理不尽を浮き彫りにする。
     アクション映画としての娯楽性を兼ね備えつつ、あくまでも客観性を重視したイーストウッドの演出は、それゆえに幅広い解釈を生むことだろう。観客の思想や信条に問いかける、そういう面でも見応えのある作品だ。

  • 清水 節
    戦場にヒーローなどいない。「守る」大義の末路に戦慄が走った
    ★★★★★
    »読む«閉じる

     一人の男を通し、戦争の昂揚と不条理と無惨が冷静に描き出される。仲間を守ることに無上の価値を置き、イラク戦争を志した実在の兵士。報復に燃え精確無比に大勢を射殺した狙撃手は“伝説”と称えられたが、イーストウッドの視点は極めて客観的だ。敵の狙撃手との一騎打ちという娯楽アクション要素を用意しながらも、演出はまんまと欺く。『ダーティハリー』の正義の在りように落とし前を付けたのが『グラン・トリノ』なら、本作は第2次大戦の英雄神話を暴いた『父親たちの星条旗』の延長線上に位置する。戦場にヒーローなどいない。「愛する者を守るため」という大義名分の末路に戦慄が走る。エンドロールで聴く“音”は、自分自身の叫びだ。

  • 相馬 学
    ドラマもテーマも歯応え満点
    ★★★★★
    »読む«閉じる

     イーストウッドが映画人に尊敬されている理由がよくわかる力作。まず、反戦の意図を明確に打ち出したテーマ性。戦争ジャンキーと化す主人公像は『ハート・ロッカー』と被るものの、本作では妻との葛藤にドラマの重力が宿り、ヘビーな歯応えを残す。敵側のスナイパーにも家族がいることを伝えている点も巧い。

     何より、エンタメとしてよくできている。スナイパー同士の攻防はきわめてスリリングで、見ている側を緊張の渦に引き込むに十分。このような娯楽味と、アート性を両立させる点で、イーストウッドの凄みが存分に伝わってくる。

     ブラッドリー・クーパーの肉体改造や熱演も見応えアリ。イーストウッドの剛腕に応えたと言えよう。

  • 平沢 薫
    エンディングの音楽は、観客が選択しなくてはならない
    ★★★★
    »読む«閉じる

    交戦中に砂嵐がやってきて、視界は茶色い土埃だけになり、敵も味方も見えなくなる。そこに人間がいるのかすらも分からなくなるが、銃弾が飛んでくるので、銃を撃ちまくるしかない。今、戦争というものを、イーストウッド監督はこのような光景に描く。

    主人公は、幼少時に父から教えられた価値観と射撃の技術で、優れた兵士になる。彼にとっての戦争は仲間を守ることであり、悩むのは人を殺したことではなく仲間を救えなかったこと。戦争の原因に意識は向かわない。それをこの映画は批判も賞賛もしない。ただ、エンドクレジットに音楽をつけないことで、この物語がどのような音楽と共に語られるべきなのかを、観客に考えさせるのだ。

  • くれい響
    『ハートロッカー』と見比べるのも一興
    ★★★★
    »読む«閉じる

    自国からは「伝説」、敵国からは「悪魔」と呼ばれる狙撃主であり、不器用すぎるテキサス男ゆえ、『ハートロッカー』同様「戦争は麻薬」状態になった男の半生。あくまでも人間ドラマ中心なので、かなりエッジの効いたものを期待すると、モノ足りなさを感じるかもしれない。とはいえ、そこはイーストウッド監督作。プライドを懸けた敵国の狙撃主とのバトルなど、アクション映画ファンも惹きつけるエンタメ要素も盛り込んでいるところが、全米メガヒットの要因だろう。もし、主人公の死因を知らなければ、そのまま劇場に向かった方がいい。その方が、あまりにドラマティックな彼の終幕が胸を貫き、エンドクレジットの無音がより心に響くはず。

動画

映画『アメリカン・スナイパー』予告編
映画『アメリカン・スナイパー』予告編
映画『アメリカン・スナイパー』特別映像
映画『アメリカン・スナイパー』特別動画
映画『アメリカン・スナイパー』本編映像

写真ギャラリー

Warner Bros. / Photofest / ゲッティ イメージズ

ポスター/チラシ

  • 映画『アメリカン・スナイパー』ポスター
    ポスター
  • 映画『アメリカン・スナイパー』ポスター
    ポスター

スタッフ

脚本・製作総指揮: ジェイソン・ホール

キャスト

ブログン投稿ブログに投稿
  • FC2ブログに投稿!
  • ココログに投稿!
  • gooブログに投稿!
  • so-netブログに投稿!
  • exciteブログに投稿!
  • Bloggerに投稿!

『アメリカン・スナイパー』の映画ニュース

  • 映画『アメリカン・スナイパー』などの俳優ブラッドリー・クーパーが、第2次世界大戦中の連合軍によるノルマンディー上陸前夜を描く映画『アトランティック・ウォール(原題...
  • “100%監督主義!”と題して外国映画監督の現在を徹底特集した「キネマ旬報 11 月下旬号」(発売中)にて、「評論家 100 人が選ぶ、期待の外国映画監督ベスト・テン」が発表さ...れた。見事1位に輝いたのは、『アメリカン・スナイパー』『ハドソン川の奇跡』などのクリント・イ...
  • マーベルコミックスの破天荒ヒーローを実写映画化したアクション『デッドプール』の続編で、前作に引き続きメガホンを取る予定だったティム・ミラー監督が降板したことが明...メアリー・エリザベス・ウィンステッド、『アメリカン・スナイパー』のシエナ・ミラー、『キングスマン』のソ...

楽天市場

ブログなどをご利用の方は以下のURLをトラックバックURLとして指定してください。

  • 無職のおっさんの独り言:今年、映画館にて鑑賞した映画で面白かった作品 from 四十郎おっさんが綴る映画やアニメの感想まがい (2015年12月31日 9時0分)
    今日は12月31日。これから奥さんの故郷である愛媛県へバスで帰省致します。周囲に一族が住んでいるので、引きこもり気質の私にはプレッシャーが半端ない。9月下旬から、この ... ...[外部サイトの続きを読む]
  • アメリカン・スナイパー from 映画のメモ帳+α (2015年10月13日 0時12分)
    アメリカン・スナイパー(2014 アメリカ) 原題   AMERICAN SNIPER 監督   クリント・イーストウッド 原作   クリス・カイル 『ネイビー・シールズ 最強の狙撃手』(原書房刊)       スコット・マキューアンジム・デフェリス 脚本   ジェイソン・ホール 撮影   トム・スターン 編集   ジョエル・コックス ゲイリー・D・ローチ 出演   ブラッドリー・クーパー シエナ・ミラー  ジェイク・マクドーマン       ケヴィン・レイス コリー・ハードリクト ナ ...[外部サイトの続きを読む]
  • 映画「アメリカン・スナイパー」  リアルな戦争映像とその後遺症 from 珍竹鱗  映画とネットとモバイル機器の日々 (2015年6月30日 23時51分)
    映画「アメリカン・スナイパー」を観ました。 ええ、超映画批評のアメリカン・スナイパーの記事の影響もあってです。 やや乾いた映像、そして銃声。 戦争から体が解放されても、心は解放されない。 そして、兵役から解放されても、軍の指導員を務める。 アメリカという… ...[外部サイトの続きを読む]
  • アメリカン・スナイパー from 映画三昧、活字中毒 (2015年5月9日 22時24分)
    ■ ユナイテッド・シネマとしまえんにて鑑賞アメリカン・スナイパー/AMERICAN SNIPER 2014年/アメリカ/132分 監督: クリント・イーストウッド 出演: ブラッドリー・クーパー/シエナ・ミラー/ルーク・グライムス/ジェイク・マクドーマン/ケヴィン・レイス 公式サイト 公開: 2015年02月21日 父親から「悪い人間から人々を守る者になれ」と育てられてきたクリス... ...[外部サイトの続きを読む]
  • 「アメリカン・スナイパー」 from 元・副会長のCinema Days (2015年3月21日 7時10分)
    (原題:American Sniper )いかにもクリント・イーストウッド監督らしい、生ぬるい映画である。体裁を整えてはいるが、中身は薄い。何より、同じようなネタを扱ったキャスリン・ビグロー監督の「ハート・ロッカー」(2008年)がオスカー受賞などの結果を残した後に... ...[外部サイトの続きを読む]
[PR]
おすすめ特集
映画アクセスランキング
  • Loading...
»もっとランキングを見る«
楽天市場
スポンサード リンク
  1. 映画
  2. 2015年2月16日の週の公開作品
  3. 『アメリカン・スナイパー』